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一般人になりたい隠し事令嬢と、暴きたい旦那様 〜チャラ男な最強当主の執着から逃げられない〜  作者: 天野 はるか
第1章:美味しいご飯ともふもふ隠蔽工作

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第12話:からかい上手な大人

この作品を読んでいただき、ありがとうございます!


第一部の作成が終わりましたので、投稿を毎週月曜日・金曜日・土曜日の週3回に変更いたします!


30話まではこの頻度で投稿していきますので、是非読んでいただけると嬉しいです!!

 翌日、私は昨日の座布団事件のことがあったため、常に周囲へ気を張って過ごしていた。


 すると、廊下の向こうから微かにトントンと足音が聞こえてきた。


(……やっぱり来たわね、あのチャラ男当主! 昨日に引き続き連日やって来るなんて、どんだけ暇なのよ!? ……律さん~! ここで貴方の主が派手にサボってますよ~!!) 


 私はチャラ男当主への愚痴を、まだ見ぬ律さんに向けて必死に念じながら、内心で激しく苛立っていた。


 するとその時、部屋の襖の向こうから旦那様の声が響いた。


「紗夜ちゃん~! 元気してる~?」


「……だ、旦那様! ……お陰様で、とても快適に過ごせています……っ」


 こんなこともあろうかと、今日は最初から琥珀こはくには押し入れに入ってもらっている。


 私はいつもの大人しい令嬢のフリをして、万全の体制で旦那様を部屋に迎え入れた。


「実はね、今日はすごく美味しいお菓子を持ってきたんだ~」


 そう言って煉十郎が取り出したのは、京から取り寄せたという、見た目も香りも最高級の和菓子だった。


「これ、今流行っているお菓子なんだけどさ。紗夜ちゃんが僕の隣に来てくれたら、全部あげちゃうんだけどな~?」


 煉十郎がニヤニヤと笑いながら、私の方へと魅惑のお菓子を向けてくる。


(……な、なんて性悪で汚い手口なの!? まあ、もの凄く美味しそうだけど……ってお菓子に釣られちゃダメよ、私!!)


「……そ、そんな、恐れ多いです……。私はここで大丈夫ですから……っ」


 私は内心の警戒レベルを最大に引き上げながらも、表面上はおどおどとした態度を崩さず、少し距離を置いて座り直した。


「え~、そんなに遠慮しなくてもいいのに~」


 しかし旦那様は、お菓子の乗った皿を手に、ニヤニヤと楽しそうに笑いながら私の方へじりじりと、にじり寄ってくる。


 その瞬間、旦那様から漂う洗練された大人の男性の香りと、普段のだらしなさからは想像もつかない、どこか圧倒されるような不思議なプレッシャーを感じてしまい、私は色んな意味で心臓をドキドキと高鳴らせていた。


 完全に距離が縮まり、旦那様が私の顔を、鋭くも優しい眼差しでじっと見つめてくる。いつものチャラチャラした軽い雰囲気が嘘のように、彼は低く真面目な声で囁いた。


「……紗夜ちゃんさ。いつもは身を縮めて、その固い殻で必死に自分を守っているんだろうけど。本当は、もっと誰かに甘えたいんじゃないかい?」


 私はその言葉に、一瞬だけ不意を突かれてドキッとしてしまった。


(……っ。確かにかがり家では常に気を張って生きていたけれど……私、本当は誰かに甘えたかったのかしら……?)


 旦那様から向けられた真っ直ぐな言葉が胸に染みて、ほんの少しだけ、この人に甘えてみたいという感情が芽生えかける。


――だが、私はすぐに正気を取り戻した。

(……って、違うわよ危ない危ない! そうやって優しく全てを包み込むような雰囲気を出して、私の本音を暴こうとしてるのね!? ……私は絶対に騙されたりしないんだから!!)


 私は瞬時に、鉄壁の大人しい令嬢の演技を発動させた。


「……旦那様、そのような温かいお言葉……私には、もったいないです……っ」


 うつむき、今にも泣き出しそうなほど頑なに心を閉ざしてみせる。


 一瞬の戸惑いを見せた直後、さらに強固にガードを固めた私の様子を見て、旦那様は一瞬だけ驚いたように目を見張った。


「……そっか。ごめんね~、おじさんの勝手な勘違いだったみたいだね~」


 旦那様はそう言うと、どこか少し寂しげに優しく笑いながら、お菓子の皿をそっと畳の上に置き、そのまま部屋を出て行った。


 彼の気配が完全に消え、今度こそ一人になった瞬間、私は畳の上へと盛大に倒れ込んだ。


(……あーーー、疲れた! あのチャラ男当主、私に極上の美味しいものを差し出して本性を暴こうとしても、そうはいかないんだからね!!)


 私が息を吐き出していると、お菓子の美味しそうな匂いにつられて、押し入れから琥珀がパタパタと飛び出してきた。


 私は、最高級の和菓子を琥珀と一緒にモグモグと頬張りながら、絶対に本性は見せないぞと、改めて胸の中で固く決意した。

読んでいただき、ありがとうございます!

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