第10話:押し入れの中の秘密
この作品は毎週月曜日の20時10分に投稿しています!
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私は律さんが去った後、さっそく部屋の大きな押し入れを開けて、中を綺麗に掃除し始めた。
そして、蒼月家から支給された余分な座布団や、柔らかい掛け布団などを贅沢に敷き詰め、ふかふかの特製ベッドを押し入れの中に作り上げる。
「……出来たわ! 我ながら良い出来ね!広くて清潔で、最高に快適だわ!!」
私が満足げに胸を張っていると、琥珀も「きゅ~~!!」と嬉しそうな声を上げ、特製ベッドの上で気持ちよさそうにゴロゴロと転がっていた。
やがて夜になり、私は食堂で豪華な夕食をいただいていた。
そこに旦那様の姿がなかったため、さりげなく周りの使用人に尋ねてみると、どうやら今日は仕事が全く終わらず、書斎で律さんに猛烈にしごかれているらしい。
(……やったわ! これなら誰の目も気にせず、琥珀のご飯をこっそり持って帰れそうね! ……律さん、本当に感謝だわ!)
私はそう思いながら、使用人たちの隙を盗み、自分の食事から琥珀が食べられそうな最高級の焼き魚の身や、小さく切られたお肉を懐紙へと手際よく包み込んだ。
食事が終わり、自室へと戻った私は、すぐに押し入れの襖を開けて、琥珀に温かいご飯のお裾分けを差し出す。
「琥珀~、ご飯よ!食べる?」
すると琥珀はパッと目を輝かせて「きゅう~!」と短く鳴くと、小さな前足で器用にご飯を掴み、ハムハムと美味しそうに食べ始めた。
(……ご飯を一生懸命食べてる琥珀、格別に可愛いわ……っ! これぞまさに最大級の癒やしね!!)
あまりの愛らしさに頬を緩ませ、その光景を堪能していた、まさにその時。廊下の向こうから、気だるげな、しかしどっしりとした足音が近づいてきた。
私は一瞬にして「大人しい令嬢」に切り替え、琥珀のいる押し入れの襖を音もなく静かに閉めた。
その直後、部屋の前に現れたのは、やっと律さんのしごきから解放されたのだろう、少し疲れ気味の笑みを浮かべた旦那様だった。
「紗夜ちゃん、寒くないかい? 今日の夜は少し冷え込むみたいだから、体調には気をつけるんだよ~」
いつもののんびりとした口調で気遣ってくれる旦那様に対し、私はわざとおどおどとした態度を取り、完璧に猫を被ってやり過ごす。
「……そうなのですね……。お気遣いいただき、ありがとうございます……っ」
その後、旦那様が満足そうに去っていき、再び部屋に静寂が戻った。
私は再び押し入れの襖を開けると、琥珀は外に声が漏れないよう、ちゃんとお利口に布団の中で丸くなっていた。
「もう大丈夫よ、琥珀! 我慢してくれてありがとう!!」
私が優しく声をかけて抱き上げると、琥珀は嬉しそうに私の腕の中で「きゅう~!」と喉を鳴らした。
(……よし! このまま誰にも邪魔されずに、この可愛いもふもふを絶対に隠し通して、自由なスローライフを勝ち取ってみせるんだから!)
私は腕の中の琥珀をそっと抱き締め直しながら、心の中で力強く拳を握りしめた。
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