第五話 宝物の正体
回 想
シンジの的確な判断とたけしの舵取りが功を奏して、荒波を掻い潜って三人は洞窟への進入に成功した。洞窟の中に舟を進めると、外とは一転して波が穏やかだったが、太陽の光は遮られていた。たけしはシンジの懐中電灯が照らす明かりを頼りに、舟を洞窟の奥へと進めて行った。やがて、たけしたちは洞窟の奥の暗闇の中から発光する青い光に遭遇するのだった。
「宝物だぁ」
トシが大声で叫んだ。
「ここからじゃわからないなぁ」
シンジは手に持っていた懐中電灯で青い光の方向を照らしたが、肉眼ではそこに何があるのか識別することができなかった。確かに青い何かが見える。懐中電灯の明かりでははっきり見えない。何か青いものが山のように積み上がっているようにも見える。
「もう少し近づいてみよう」
たけしは舟を洞窟の奥へと進めた。やがてその光に手が届きそうなところまで舟は近付いてきた。シンジはもう一度その方向にあるものを懐中電灯で照らし出した。
「えっー、何だよっ、これはっ!」
舟の先端にいたトシが、驚いたように言った。
「トシ、何があるんだ」
舟の最後方で舵を取るたけしが、トシに聞き返した。
「何でこんなものが、こんな所にあるんだ」
シンジが独り言のように言った。
「何があるんだ。教えてくれよ」
たけしが唖然とする二人に何度も聞き返した。
シンジが懐中電灯で照らし出したものは、パンパンに膨れ上がり、山のように積み上げられた無数の青いポリ袋だった。
「何だよ、せっかく苦労してここまで来たのに・・・。海賊の宝物じゃなかったのかよ」
トシのがっかりした声が洞窟の中にこだました。
「一体何が入っているんだ?」
残念がるトシに、たけしが怪訝そうに言った。
「何がはいっているんだろう」
トシがポリ袋の一つを魯で突いて破り、その中を見てみた。
「ギャー!!!」
トシの叫び声が、洞窟の中で何重にもこだました。
「何だ、何があるんだ」
たけしが叫び返した。
「ゴミだ、袋の中はゴミでいっぱいだ、それに臭い、臭いよー」
トシの悲痛な声がさらにこだました。ポロ袋の中には、腐った生ゴミが詰め込まれていて、トシがビニール破る同時に、とんでもない悪臭が洞窟の中に立ち込めた。
「うわっー、引き返せー!」
シンジが悪臭に耐え切れず叫んだ。たけしは慌てて舟を反転させて、洞窟の外へと舟を漕ぎ出した。舟は猛スピードで洞窟から飛び出して行くと、再び荒波が寄せてきた。たけしは押し寄せる波たちに逆らって、無我夢中で沖へと漕いで行った。
船着き場へと舟を戻した三人は、砂浜まで無言のまま歩いて来ると、疲れたように仰向けになって寝転んだ。
「宝物がゴミの山だったじゃないか。あんなきれいな海に・・・。何でなんだよ」
トシが嘆くように言った。
「何だか、すごくがっかりだな。もう宝物なんていらないよ」
シンジも嘆くように言った。
「おれはあんな所、二度と行かない」
舟を漕ぎ続けたたけしは、そのまま眠ってしまいたい気分だった。
三人は黙ったまま、すでに高く上った太陽をしばらく眺めていた。




