最終話 ぼくたちは知ってしまった
回 想
たけしたちの希望は儚く打ち砕かれてしまった。青い光は海賊が残した秘宝ではなく、ただのゴミを詰め込んだポリ袋の山だった。たけしたちが受けたショックは、宝物に遭遇できなかったことよりも、愛すべき清らかな海にとてつもない量のゴミが捨てられていたことだった。まだ幼い心の中に暗い影を残して、少年たちの短い夏は終わりを告げた。
あの冒険から十二年後、たけしは大学生になっていた。大学では社会環境に関する勉強をしていた。
-なぜあんなきれいな場所に、ゴミの山が放棄されていたんだ。
たけしの心の中で、あの夏に洞窟の中で見た光景がずっと燻っていた。
たけしは大学四年生になり、卒業研究のテーマを決めなければならなくなった。
-そうだ、あの洞窟のことを調べてみよう。
たけしはそう心に誓った。
夏の日差しが強い時期に太陽光が洞窟の奥まで差し込んで、青いポリ袋が太陽光を反射していたことはよくわかる。しかし、なぜあんな場所にゴミの山が堆積していたのだとうか。それが大きな疑問だった。しかし、何をどう調べたらいいのか、たけしには見当もつかなった。
「シンジ、卒業研究であの洞窟のことを調べたいんだけど、どうしたらいいかなぁ」
困ったときは、いつものシンジだった。たけしは久しぶりにシンジに連絡を取った。
「それは面白そうだ。おれもそろそろ卒業研究を始めようと思っていたところだ。おれもよくわからないが、いっしょに調べよう」
シンジは、また二つ返事で協力してくれることになった。その頃、シンジも大学に通い、海洋学を学んでいた。シンジはゴミが洞窟の中に漂着した原因を、研究テーマにすることにした。
二人は専門分野の教授に相談してみることにした。最初は教授も首をひねっていたが、ある提案をしてくれた。それは洞窟の近海の海流を調べることだった。海流が洞窟へとゴミを運んで来たのではないか、教授はそのことに疑念を持った。
その日からたけしとシンジは、休日を惜しんで調査を続けた。そして、いろいろな調査結果から、日本中の海に捨てられたゴミが海流に乗って運ばれ、潮の満ち引きの加減で洞窟の中に引き込まれたことがわかってきた。そこで二人は、もう一度あの洞窟の中を見に行く決意をした。
その頃、トシは漁師になっていた。たけしとシンジはトシの漁船に乗せてもらい、十二年ぶりにあの洞窟へと向かった。
「また、あの臭いゴミを見に行くのか。おまえたちも物好きだなぁ」
そう言いながら、トシは能天気に漁船を操縦していた。
トシの漁船は、たけしが必死で漕いだ小舟と違って強力なエンジンが搭載されたいたので、難なく洞窟の中へと入って行った。そこで三人が見た物は、あの時から軽く二倍以上に増えたゴミの山だった。たけしとシンジは悪臭に耐えながら、ゴミの状況を隈なく調べて回った。
浜に戻った三人は、あの時と同じように砂浜に寝転んでいた。
「日本のあちこちでこんなことが起きてるんだな」
シンジがしみじみと言った
「そうなのか」
トシが驚いたように言った。
「そうかもしれない。でもこの海に限ってはあの洞窟がゴミをかき集めて、きれいな海を守ってくれていたのかもな。そうでなかったらゴミが海の中に蔓延して、生物の生態系が崩されていたかもしれない。おれたちはあの洞窟のことを知ってしまった。きっと運命なんだ。おれたち、導かれたんだよ。海が守ってくれって言ってるんだ。もう知らん顔はできない。おれはこれこら日本中の海からゴミを無くしていくよ」
たけしが力強く言った
「ところでさぁ、日本に海賊っていたのか?」
「トシ、それはおまえが言ったんじゃないか」
三人はあの日と何も変わらない太陽を見上げながら、げらげらと笑っていた。




