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海蝕洞の幻宝  作者: 昭真
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第三話 荒波を超えて

回 想

 洞窟の中に入るには歩いては行けない。泳いでいけば宝物を持って帰ることができない。どうしても舟が必要だ。たけしは父親の小舟を黙って使う提案をしたが、ばれたら怒鳴られるくらいでは済まない。三人は知恵を出し合って計画を練り上げていった。そして、日曜日の朝、たけしは二人の友達を乗せて、小舟を沖へと漕ぎ出して行った。いよいよ三人の冒険が始まる。

 それまで穏やかだった波が、急に大きくなってきた。すでに三人から浜辺を目視することができなくなっていた。言い換えれば、何かのトラブルがあっても、誰も助けに来ないということになる。さっきまで浮き浮きしていたたけしとトシに、急に恐怖心が襲ってきた。

「砂浜から離れて崖に近づくと、波が大きくなるのは予定通りだ」

 それしきのことでシンジは動じない。シンジの冷静さが、たけしとトシの不安を和らげていた。


 たけしはシンジの指示を信じて、巧みに舟を操った。トシは舟のへりにしがみついていた。一旦、沖の方へと崖から舟を離し、海蝕洞が見えたら舟を崖と直角方向に走らせ、一直線に海蝕洞の中へと突入する、シンジのプランにはそつがない。

「おれを信じろっ、絶対にたどり着く!」

 シンジが叫んだ。

「わかった。崖からどれくらい離れたらいいんだっ」

 たけしは沖へ舟を進めながら、シンジに確認した。

「波が小さくなるまでだ。デカい波に飲まれたら、あっという間に崖まで運ばれてしまう。ただし、あまり離れすぎるなよ。洞窟の位置がわからなくなる」

 シンジはそう答えると、舟の先から崖までの距離を確認した。


「見えた、洞窟だぁ!」

 シンジはたけしに向かって大声で伝えた。成す術なく怯えているトシのことは、すでにシンジの眼中にない。たけしは魯を左右に動かしながら、崖の方に目をやった。遠くに崖に、ぽっかりと口を開けた洞窟が見えた。三人ともその洞窟を見るのは初めてだった。

 海蝕洞は波が崖を削り取られて形成される。崖に打ち寄せる波は、岩をも削り取るパワーを持っていると言うことだ。波は必ずしも穏やかではない。

「たけしっ、崖に向かって真っ直ぐ進めっ、舟を波に対して横向けにするなっ。岩にぶつかったら舟が粉々になるぞ!」

「わかった」

 たけしはシンジに言われた通りに舟を操った。


 小舟は波に大きく揺られながら、洞窟に近付いていった。

「トシ、崖に近付いてくるとあちこちに大きな岩が、海面の上に飛び出している。舟がその岩にぶつかったらぶっ壊れる。だから、舟が岩にぶつかりそうになったら、もう一本の魯で岩を突けっ!」

 シンジは予備の魯を持って、トシに待機するように指示を出した。

「そんなのできないよぉ」

 トシが泣き言を言い出した。

「ばか、舟が沈んだら、おれたち溺れちゃうぞ。おまえが頼りなんだ」

 たけしはトシを叱咤激励した。仕方なくトシは泣きそうな顔で魯を持って、舟の先端で待ち構えた。

「トシっ、舟が右に流されていくぞ。その岩を突けっ!」

 シンジは的確に指示を出した。

「やぁぁぁー」

 トシは必死で岩を魯で突いた。

「トシッ、次は左だぁ、今度は右だぁ」

 シンジは何度も叫んだ。

「やぁぁぁー、やぁぁぁぁぁー」

 トシは何度も岩を魯で突いていった。

 三人が乗る小舟はいくつもの岩の間をすり抜け、洞窟の方向へと軌道を戻して行った。そして、洞窟の入り口がすぐ目の前に迫っていた。


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