第二話 冒険の始まり
回 想
たけしは父親から聞いた不思議な現象を、砂浜に寝転んだまま親友のトシに話していた。それはだれも近付いたことのない、海の洞窟の中から放たれる青い光のことだった。誰も知らない洞窟の中には、何が隠されているのだろうか。そこにはトシが言うように、海賊が隠した秘宝が眠っているのだろうか。少年たちはお宝を探す冒険に出ることを決意するのだった。それは少年たちにとって忘れられないひと夏の・・・
三人の作戦会議が始まった。
「まずはどうやってそこに近付くかだな」
シンジは理論派だ。
「えっ、泳いで行くんじゃないのか?」
トシは楽観的だ。
「そんな距離を泳いで往復したら、溺れちゃうよ。それにトシは帰ってくることを考えてないだろ。宝物をどうやって持って帰るんだよ。舟だ。舟がいる」
シンジにそう言われて、トシは閉口してしまった。
「そしたらおれの父ちゃんの小舟を使おう」
たけしは父親の手漕ぎボートを無断で借りる提案をした。
「おまえっ家の父ちゃん、めちゃめちゃ怖いだろ。無断で使ったことがばれたら、たいへんなことになるぞ」
トシが言うことは無理もない。二人はいたずらをして、何度もきよしのげんこつを食らっていた。
「でも、どうしても舟がいる。おまえの父ちゃんがいない時とか、寝いている時とか、そんな時間帯はないのか」
シンジはたけしの案を諦めない。
「日曜日の朝はどうだ。日曜日なら父ちゃんは漁に出ずに、朝はずっと寝ている」
たけしは閃いたように言った。
「それならばれずに済むなぁ。いつやる?」
トシが安心したように言った。
「学校が休みの日の朝がいい。あまり遅くなると、母ちゃんに見つかって怒られる」
たけしが提案した。
「それがいい。次の日曜日が晴れだったら、朝六時に浜に集合だ」
シンジの一言で決定した。
決行の朝が来た。天候は快晴、波も穏やかだ。たけし、トシ、シンジの三人は、砂浜に集まると、所持品の確認をした。所持品と言っても、全てシンジが家から持ち出してきた物ばかりだ。懐中電灯、三人分の軍手、怪我をしたときに絆創膏、それに遭難した時に備えて方位磁石、浮き輪、笛まで持ってきていた。シンジはいつ、どんなときも用意周到だ。たけしとトシは、リュックサックに詰められたシンジの荷物を見て、ただ驚くばかりだった。
三人は誰にも見つからないように、きよしの小舟に乗り込んだ。小舟にはエンジンなど積んでいない。魯を一本だけ使って、手で漕がなければならない。しかし、たけしは父から舟の漕ぎ方を何度も教わっていたから、慣れた手つきで舟をあっという間に桟橋から遠ざけて行った。
三人を載せた小舟は、快調に沖へと突き進んでいった。たけしの舟を漕ぐスピードも、小学生とは思えないくらいに速い。この時、三人は何の支障もなくミッションをクリアできると思っていた。
「どんな宝物があるのかなあ。黄金の冠とかあるんだろうか」
トシはすでに浮き浮きしている。
「舟に積みきれるかなぁ」
トシにつられて、舟を漕ぐたけしも浮き浮き感が止まらない。
「たけし、そろそろ崖に近付くぞ。波が荒れ出すからな。波に押されて崖に舟が衝突しないように少し離れて漕げ」
冷静なシンジは、的確に指示を出した。
「わかったぁ」
波が高いと舟の操作の勝手が違う。たけしは魯を握り直して、荒波の中を進んで行った。
「え-、波が荒れるのか。そんなの先に言っといてくれよ」
トシが情けない声を上げた。




