↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
甘い死をあなたに  作者: れさ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/8

7話 超常現象研究会1

 超常現象研究会。略して、超研。


 オカルトマニアの常盤凪紗が立ち上げたサークルである。


 活動場所は、科学準備室の一角。


 決して広いとは言えないその部屋には、凪紗がどこからともなく集めてきたオカルトグッズや書籍、新聞の切り抜き、出所不明の怪しげな資料などが所狭しと詰め込まれていた。


 これまでは凪紗がたった一人で活動していたため、この程度の広さでも何の問題もなかった。


 ――それが昨日、いきなり四人に増えた。


 もっとも、記念すべき活動初日から清志はバイトで欠席。


 というわけで、この日の参加者は暁人、凪紗、千景の三人だった。


 暁人はこれから始まるであろう面倒事を想像し、重い気持ちのまま科学準備室の扉を開ける。


 しかし――。


 その先に広がっていた光景は、暁人の予想を大きく裏切るものだった。


「ねえねえ、千景ちゃん! これ見て!」


 凪紗が机の上に一枚の資料を広げている。


「三か月前にアメリカのジョージア州で発見されてニュースになった、この隕石跡! これ、自然にできたにしては不自然だと思わない?」


「そうね」


 千景は写真を覗き込み、少し考えるように顎に指を添えた。


「これはきっとインテクラル効果によるものね」


インテクラル効果?


「つまり、ここで誰かが呪術か魔術を使ったのよ。その影響でワーインフィールドが発生して、局所的なパラドキシスが起きたんだと思う」


 何を言っているんだ、こいつは。


 暁人にはさっぱり分からない。


「そうそう! やっぱり千景ちゃんもそう思うよね!」


 ――分かるのかよ。


「ってことは、この辺りには超能力者か魔法使いがいるのかなぁ。会ってみたいなー!」


「あんた、会ってどうするのよ。いい人とは限らないでしょ」


「でも見てみたいんだよー。それに、そんな力が私にもあったらなーって妄想するだけでも楽しいじゃん!」


「あなたのことだから、空を飛んで夜景を見てみたいとか考えてるんでしょ」


「すごーい! なんで分かるの!?」


「顔に書いてあるから」


「うそっ!?」


「うそ」


「もう!」


 凪紗が頬を膨らませる。


 千景が小さく笑った。


「…………」


 暁人は入り口に立ったまま、二人を眺めていた。


 正直、何を話しているのかはまったく理解できない。


 だが、それ以上に理解できないことがある。


 ――なんでこいつら、こんなに仲良くなってるんだ?


 昨日の千景の態度を考えれば、もっと険悪な空気になっているものだとばかり思っていた。


 凪紗を睨みつけ、同じ空間にいることすら拒絶する。


 そんな態度だったはずだ。


 それが今はどうだ。


 まるで以前から何度もこんなやり取りをしてきたかのように、自然に会話をしている。


「あ! 暁人くん!」


 凪紗が暁人に気づき、嬉しそうに手を振る。


「先生。来たのね」


 千景は腕を組んだまま、こちらを見る。


「久遠さん、だったか。お前、昨日あんな態度だったのに、なんで――」


「千景よ」


「……は?」


 言葉を遮られた。


「先生に、私を『千景』と呼ぶ以外の選択肢は用意されてないの」


「は、はあ……」


 相変わらず意味が分からない。


「じゃあ……千景」


「うん」


 満足そうに頷く。


「お前、凪紗のこと嫌ってたんじゃないのか?」


 暁人は一切言葉を包まず、そのまま聞いた。


 二日目にして分かった。


 こいつに気を遣って遠回しな聞き方をしても、たぶん意味がない。


「嫌ってないわ」


 千景もまた、一切言葉を包まなかった。


「私は凪紗のことを嫌いだなんて、一度も言ってないもの」


「じゃあ昨日の態度はなんだったんだよ」


「先生が凪紗と仲いいのが嫌なの」


「お前……」


 また、とんでもないことを真顔で言ってきた。


 言葉だけを拾えば、嫉妬。


 あるいは独占欲。


 だが――違う。


 まだ二度しか会っていない。


 それでも暁人には、なぜか確信があった。


 千景が自分に向けている感情は、そんな分かりやすいものではない。


「ええー? 私と暁人くん、仲良くしちゃ駄目なの? 千景ちゃん」


 凪紗が不満そうな声を上げながら、千景の二の腕をむにっと掴んだ。


 ――そこ、普通は服を掴むんじゃないのか。


 こいつもこいつで距離感がおかしい。


「そうよ。私は凪紗と先生が仲いいのが嫌なの。あと、肉つままないで。気にしてるんだから」


「えー」


「えー、じゃない」


 ぺしっ、と千景が凪紗の手を軽く叩き落とす。


 そして――。


「……こっちならいいから」


 自分の制服の袖を摘まんで、凪紗の方へ差し出した。


「うん。じゃあ、こっち掴んでるね」


「そうして」


 凪紗は素直に千景の袖を掴む。


「…………」


 なんなんだ、こいつら。


 昨日まで初対面だったはずだろ。


 いや、それよりも――。


「なあ、千景」


「なに?」


「なんで俺と凪紗が仲良くしたら駄目なんだ?」


 千景の表情から、わずかに笑みが消えた。


「嫉妬って言われた方が、まだ納得できる。でも違うんだろ?」


「…………」


「お前、俺と凪紗を引き離そうとしてるくせに、凪紗本人とは普通に仲良くしてる。昨日はあれだけ睨んでたのに、今日は一緒に笑ってる」


 暁人は千景を見る。


「なのに、俺が凪紗と一緒にいることだけは嫌がる」


「…………」


「意味分かんねえよ」


 答えはない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。