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甘い死をあなたに  作者: れさ


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2話 出会1

「君は先生だよね!?」


 少女は少年――夜久暁人やくあきとを指さし、教室中に響き渡る声でそう叫んだ。


「…………は?」


 高校の授業が終わり、これからバイトへ向かおうとしていた暁人は、その場で固まった。


 勢いよく開け放たれた教室の扉。


 そこに立っていたのは、一人の少女だった。


 クラス中の視線が、一斉に彼女へと集まる。


 それも無理はない。


 ――誰だ、あれ?


 おそらく、この教室にいる全員が同じことを考えていた。


 見たことがない。


 制服は自分たちと同じ。胸元のリボンも、二年生を示す青色だ。ならば同じ高校の同級生であるはずなのだが、暁人にはまったく見覚えがなかった。


 何より、目立つ。


 腰まで伸びた銀色の髪に、鮮やかな赤い瞳。


 外国人なのだろうか。


 整った顔立ちもさることながら、その表情には妙な自信が満ち溢れている。


 こんな少女が同学年にいたのなら、知らない方がおかしい。


「お、おい暁人」


 隣から小声で話しかけてきたのは、山本清志やまもときよしだった。


 中学時代からの親友で、バイト先まで同じ腐れ縁だ。


「あの子、お前の知り合いなの? てか、どこの誰?」


「……清志」


「あ?」


「お前があの子のこと知らないのか?」


「知らねーよ!」


 清志は即答した。


「お前が?」


「あーんな美人がいるなら、俺が知らないはずがない! それだけは断言できる!」


「……それは知ってる。だから俺も驚いてるんだよ」


 清志は、頼んでもいないのに学校中の女子の情報を集めては暁人に報告してくる男だ。


 普段なら鬱陶しいだけのその習性も、今日ばかりは役に立った。


 つまり――本当に誰も知らないのだ。


「先生!」


「うおっ!?」


 二人で話しているうちに痺れを切らしたのか、少女がずかずかと教室へ入ってきた。


 他クラスの教室というものには、普通なら多少なりとも入りづらさがある。


 だが、そんな空気など彼女には存在しないらしい。


 一直線に暁人のところまでやってくる。


 そして――


 細く白い人差し指を、びしっと暁人の鼻先へ突きつけた。


「先生は、先生!?」


「…………」


 何を言っているんだこの人は。


 暁人は少女を見つめた。


 銀色の髪。


 赤い瞳。


 やはり知らない。


 こんな少女、一度会ったら忘れるはずがない。


「……俺と君は、どこかで会ったことがあるのか?」


 その瞬間。


 少女の顔から、笑みが消えた。


「…………そっか」


 ほんの一瞬だった。


 何かを諦めたような――ひどく疲れた顔。


 だが暁人がその意味を考えるより早く、少女は再び笑った。


「そっか! そんな感じね!」


「……ん?」


「ああ、いや。なんでもない!」


 先ほどまでと同じ、はつらつとした笑顔。


 けれど。


 なぜだろう。


 暁人にはその笑顔が、さっきまでとは少しだけ違って見えた。


 まるで――


 笑わなければならないから、笑っているような。


「それなら改めて自己紹介だね!」


 少女は一歩後ろへ下がると、スカートの裾を軽く払った。


 そして、初めて会った人間にするには妙に慣れた仕草で、暁人へ手を差し出した。

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