75話 追跡者の最期
何とか感染者と追手をふり抜き、廃墟から安全に出られそうなガレージに来た時、人影が二人の前に立ち塞がる。
「未だに信じられないな……此処まで君達に追い詰められるだなんて……正直に痺れたよ」
ケビン・コーフィンはボロボロになった身体を引き吊りながらも二人を睨む。
「……くッ」
アリアは背後に気を付けつつ ケビン・コーフィンへと視線を向けた。
「死ぬ覚悟も無い者にはいかなる革命も起こす事は不可能だ。幻想だけを語るのならだれでも出来る。奴が跋扈するこの世界は余りにも酷過ぎる」
ケビン・コーフィンが弱々しく嘆く。
アリアが首を横に振り、目の前の男を睨みつける。
「幻想なんかじゃない。今、此処から私は――ロギ……これからも、貴方の事……頼りたい、傍に居て欲しい……だから――っ!」
ロギアを支える手に力が入る。
「……ああ、その為に此処から抜けるぞ!」
ロギアはアリアを優しく手で自身の後方へと下げた。
「ロギ……?」
「フ……フフッ…… 君達はやはり化物だ」
ケビン・コーフィンは二人を見比べ薄ら笑いを浮かべる。
これまでに負った傷が相当痛いのか顔を歪める。
「あの運転手……あれが虫の息だからと数分放置したのが悪かったなぁ……完敗だ――――だが、最後の悪あがきくらいはさせて貰う!」
ケビン・コーフィンは拳銃を二人に向け――ロギアもアリアを片手で押しながら力を振り絞り銃を向けた。
二人の発砲音。
その後続けざまに数発。
「――――ぐぅ!」
両者の銃口からは煙が立ち、ロギアは被弾した肩を抑える。
「あ……がふっ……っ!」
ケビン・コーフィンは口から血を吐き出し、被弾した自らの身体を見下ろす。複数の銃弾が身体を貫き、出血がより酷くなっていた。
「ま、まだ……っだ……」
声を漏れ、ロギアは自身の痛みに怯む事無く正面の敵へと対峙する。
途中兵士から奪った短刀を構え刃が傾き天井のライトに微かに反射する。
「ぬぐ……っ」
ケビン・コーフィンの目が細くなると同時ロギアは地面を蹴る。
そのまま距離を一気に詰め横へと短刀を振るう。
ケビン・コーフィンは雄たけびを上げ自身が持つ短刀で何とか受け流す。
数度打ち合い互いに譲らずケビン・コーフィンも防ぐだけではなく反撃を行うも、その攻撃は後方に下がり避けられ逆にその隙を突きロギアの振るう刃によって身体に傷を増やしていく。
「んぐぅぅぅうぉぉぉッ!!」
ケビン・コーフィンはロギアの猛攻から何とか攻撃の隙を突こうとするものの素早い動きは止まらない。
下がるのと同時に発煙弾を取り出し投げ、煙がロギアの間に立ち二人の姿が見えなくなるがロギアは怯まない。
煙に突進し――――
「――ッ!?」
突如煙から現れ接近するロギアにケビン・コーフィンは瞠目する。
「――――終わりだ!」
振るわれた短刀が真っすぐケビン・コーフィンの腹部目掛け吸い込まれる様に動く。
「ああああああ!」
ケビン・コーフィンは相打ちの覚悟で自身も短刀を振り下ろす。
瞬時にその攻撃に対応しようとするロギアだったが、腹の傷口が突っ張りワンテンポ感覚がズレる。
ロギアの短刀は深くまで突き刺さらず、一方ケビン・コーフィンの振るう短刀はロギアの顔をバッサリと切り付けていた。
「ロギっ!!」
アリアがたまらず声を上げた。
思いもよらない結果にケビン・コーフィンの口角が吊り上がるが、自身の腹部に刺さった短刀がそのまま内臓を切り裂き上昇する感覚に陥る。
「――――あ……」
ケビン・コーフィンが次の動作に移るより早くその短刀が切り上がり、腹部から肩にかけ大きく刃が振り切れた。
「がっ……ああ――――――」
多量の血液が飛び散り、その身体が後ろへと倒れ身体中の力が一気に抜け落ちていく。
「あ、ああ……」
「ふっ――ふっう……」
ロギアは肩で大きく呼吸をし、倒れているケビン・コーフィンへと視線を落とす。
「ああ――――流……石にこれでは止まらぬ……か――」
弱々しく紡がれるその言葉にロギアは一息つき、その様子を見ていたアリアが駆け寄ろうとする。
「っ……ぅう――――――」
ケビン・コーフィンの口から弱々しく声が漏れ、胸元から手榴弾と思わしき形の物体を取り出した。
ロギアはその行動に目を見開き、傍に来るアリアそして後方の扉へと目をやる。
「ハハ……こ、れは……自らの責務すら……まっとうに、出来なかった男の代償行為、と受け取って欲しい……先、生――――貴方の為ならば、俺は――――――」
ケビン・コーフィンは手榴弾のピンを抜いた。
「糞ッ――――!!」
ロギアは間髪入れず再び短刀を振りぬいた。
――――瞬間その手は既にケビン・コーフィンの支配下には無く、唖然とするケビン・コーフィンの視界で血の線を描きながら地面へと落ち――――
ロギアは自分の傷口が悪化するのを無視し踵を返しアリアへと突っ込む。
「アリアッ!!」
身体中が痛みで身体が悲鳴の様な軋みを立てる中、アリアを庇う様に引っ張り扉を開け――飛び込むと同時に直ぐ後ろで大きな光が放たれ、音が無くなり爆風は二人を巻き込み周囲に破壊をもたらした。
ケビン・コーフィンは身体中がボロボロで地面に倒れ伏し絶命しており、ロギアも爆風と飛んできた破片でかなりの深手を受け息も絶え絶えだ。
「うぐぅ……っ!」
音を聞きつけたのかロギア達の背後にある扉から感染者の呻き声が一段と大きくなる。
「ろ、ロギ、掴まって――」
アリアは必死にロギアを支えるとなりふり構わず引き摺っていく。
「……っ――――スマン――」
ロギアが痛みで表情を歪め苦しそうに呟いた。
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