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Ninfea  作者: 蠍ノ丘
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7話 家

「八体目……十一体目、十二体目……十五体目……」


 そう呟く少女の声は完全に恐怖と不安で震えていた。それにもう既に付いてきた事に後悔しているかもしれない表情になっている。


 数メートル先を歩くロギアはさり気無く後ろを確認すると想像通りの反応だった。


 少女の安全を確実に確保するつもりならまずは人が集まるコロニーよりも自らが拠点にする【家】の方がいい。コロニーに集まる連中は部外者に対して冷たく、昨日今日出会ったばかりの人間が入り込むのは最低でもコロニー内の誰かが安全を保証してからで無ければならない。


 そんな理由でまずは少女の安全を自らが保証する為にも、今はロギアが拠点にしている【家】に向かっているのだが、その【家】迄の道のりが原因だった。


 【家】は一カ月も前に森の奥で見付けた空き家なのだが、前に使っていた人間が精神異常者だったらしく、人除けの為なのか進めば進む程文字通り死体の数が増えているからだ。それも縄で太い木の幹に縛り付けられた状態のままで。


 自分が【家】に来た当初からこの有様だった、それを話した所で信じてくれるとも限らない。何故なら少女はその光景に絶句し、手で口と鼻を押さえたまに嗚咽とも呼べる様な声を漏らし、こちらにあからさまな敵意を向けて来ているからだ。


「――ねぇ」


 落ち葉や枝を踏みしめる音だけがする中、そんな声が聞こえロギアは脚を止める。案の定少女との距離はかなり開いている。


「元々ここにあった人除けだ。心配なのは分かるが俺がやった訳でもないし、お前に何かするつもりも無いよ……」 


 少女からしてみたら間違い無く信憑性はゼロだろう。今はそれしか選択肢が無いのが素直に連いて来ている理由だ。


「前は【ハンター】共が寝床に使っていたらしくてな、恐らくその面影だろうな……」


 幹に縛り付けられている死体を見て、うへぇと嫌な顔をしつつ、少女が自分の速度に連いて来る様歩く速度を緩める。


「……【ハンター】って?」


「気狂いな事ばかりする連中の事だ」


「……」


 少し時間を空けながら少女が何か言うのを待ったが返事がこないと分かるとロギアが再び口を開いた。


「手に入る食い物なら人肉でも何でも口にし、生きる為になら……いや気分次第で殺人なんて平気で行う、そんな連中だ」


「……」

 出会ったばかりの相手と話が続く訳でも無く、それからは両者口を開かずただ無言で森の中を歩き続ける。


 会話が出来た。内容はさておき、人間の言葉が通じる、少なくともそれが出来ている以上、気の狂った人間、感染者ではない事がハッキリした。今の所は。



 二人は森の中を歩き続け数十分程経過した時に目的地である【家】へと到着した。


「着いたぞ」


 到着したのは小さな洋館だった。かなり古い建物でお世辞にも立派と言うには程遠い建物だが、外敵から身を守る為にそれなりの対策はしてある。


 窓は板で隙間なく塞ぎ、洋館の周囲には罠を設置してあり、気狂い達が設置した人除けが通じなくても簡単に侵入されるといった心配はない。


 幸いにも道中に奴等に襲われなかったのはかなりの幸運だった。いくら対策をしてあるといっても連いてこられたりしたら、修繕等の手間がかかったりたまったもんじゃない。


「こ……こが、貴方が言っていた、【家】?」


「ああ――ちょっと待ってろ」


 そう言うとロギアは鍵を開け洋館に入り、何をするよりも始めに隅々まで部屋を調べて回った。自分が留守中の間に何も変わってない事を確認する為だ。


「いいぞ」

 閉まる扉を手で押さえつつそう言うと少女は恐る恐る洋館へと脚を踏み入れた。


 リビングに入ると少女は部屋を見渡した。誰が見ても一言で汚い、そんな印象を持つだろう。


 部屋の殆どの部分が作業場と化している様で物が散らかり部屋の殆どが作業台で塞がれていた。壁には道具が並ぶいびつな棚が取り付けられており、家具は元々この家にあった物らしく全て狭い空間に押しやっている。


「アンタは二階で休んでくれ、そこでなら何しようが構いはしないし、自由に物を使って貰って構わない」


「う、うん。ありがと……」

 元々一軒家だったのか部屋数は多く、廊下の奥には階段らしき物が見える。


「だが、先ずは――」

 ロギアは一つの棚を開け、中からそこまで汚れていないバスタオル四~五枚と部屋着を掴むと少女に向けて投げつけていく。


「わッ?」


 少女は慌てた様子で何とか落とさずにキャッチは出来たもののどうしたら良いのか戸惑っている様だった。


「血だらけで歩き回って部屋中を血塗れにされたら気分が悪くて溜まらんからな、浴槽で身体でも拭け」そう言うと、少女を浴室へと案内し、水が入った桶と、二リットルのペットボトルを床に置いた。


「水だ。ペットボトルの方は飲んで貰っても構わない、身体は冷えると思うがそっちの方は後で何とかしてやるから我慢しろ」


「あ……う、うん……」


 ロギアは浴室のドアを閉め、リビングに戻ると、棚から大きめな布を取り出し、少女の寝室となる部屋の掃除の為二階へと脚を動かした。

この度は第7話を読んで下さりありがとうございました。


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