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Ninfea  作者: 蠍ノ丘
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53話 マザーの管轄地域

「では――お二人にはこれを受け取って頂きます」


 青年はそう言うと二人の前に二枚のカードキーらしき物と見覚えのある平たい機械を置き、ロギアとアリアはそれを受け取ると不思議そうに眺める。


「これは?」


 カードの裏面を確認し、機械に視線を落しながらロギアが言う。


「此処で使用出来る連絡用端末と、此処で生活する際に生活用品との交換に必要となるカードです。このカードには既に十分な量の生活用品や配給品との交換が出来る様になっています」


「配給品?」「交換……」


 二人の口から同時につい言葉が漏れる。

 

「はい、流石に今の世界では物資や食料事情も限度があります。通貨も今ではたいして意味の無い紙きれの様な物ですので此処ではそう言った物を上層部がキチンと管理し、此処に居る者達が餓死せずに、なるべくいざこざが起きない様に暮らせる為の物です。本来ならば皆割り振られた仕事をこなして受け取る様な物ですが、貴方がたに関しては半ば此方側が無理強いさせてしまっている状態なのでこの様な対処を取らせて頂きました。ただかつての様にそこまで裕福に物は揃えませんが、それでも今よりかはずっと生活に関しては楽になる筈です。これからの生活に関しましても貴方がたとマザーを含め色々と見当していきたいと思っております」


「……かなりの好待遇だな」


「はい、マザーも貴方がたの事を第一に考えておりますので」


 青年がアリアを見てにっこりと微笑む。


「それと端末の使い方は見ての通りサイズは少々小さいですが従来通りの作りになっているので使用に関しては直ぐに慣れると思います。それに僕のは勿論ですが、他にもマザーの管轄にある地域での各代表的な立場の方々の連絡先も入っています。その方々には事前に貴方がたの情報は詳細に伝えてあるので、いきなり連絡をかけたとしても何にも問題はありません。もし気が向けば、ここに記載されている面々には一度お顔を見せに行った方がこれからの生活を送る上でかなり助かると思います。ご近所挨拶みたいな物です、皆さん親切ですから安心して下さい」


 青年の言う通りにアリアが端末を操作してみると連絡先の一覧の中には既に複数の名前が登録されており、橘や水琶、ユズルと言った既に見知った名前も確認出来た。


「……多い」


 登録されている人物の多さに少し戸惑うアリアに対し、ロギアはアリアの操作を一度見た後で青年に目を向ける。


「カードの件も含めてもそうだが……俺達だけ余りに優遇し過ぎてその理由が無理強いってだけじゃあ問題があるんじゃないか?」


「いいえ、マザーの管轄下に居る者達の中ではそう言った問題はありません」


「――って事は他の場所ではあるんだな」


「ええ、そこはこちらもどうする事も出来ませんでした。マザー以外の地区を担当している方々からは勿論多くの批判はありました。しかしマザーが是までに残して来た貢献が生きたのでしょう。此の都市を統括する方からの許しを直接頂きその意向は他の地区でもしっかりと伝えられています。」


「そんなリスク、よく受ける気になったな」


「はい、ご察知の通り他の地区の方々からはあらゆる妬み恨みは発生します。それを含めてもマザーが貴方がたを受け入れると判断したのです。あの方がそう決断した事に関して僕も異議を唱えるつもりはありません」


 “アリアの特殊事情を考えるとそのリスクを背負う理由は何と無く判るが――相当マザーに崇敬の念を抱いてる様だな……”


 青年の言動やその一つ一つの態度から、マザーの事を青年に問い質してみても自分の想像通りの返答しかないだろう事は想像出来た。


 “やはり詳細はマザー自身に直接訊くしかないか……”


「俺達はそのマザーと言うのには会っていないが?」


 ロギアが言うとアリアもどうやらそれが気掛かりだったらしく青年の発する言葉に注視する。


「はい、その事ですが、マザーは現在他地区との重要な交渉事等、どうしても席を外せない事情が立て込んでいまして二日程は面会する事が出来ません」


「じゃあこれから私達どうなるの?」「……」


「はい、なので貴方がたにはマザーと会う迄の間に此処を見物して欲しいのです。此処がどんな所か、住んでいる住人の暮らしぶりも含めて事前に知識として持っていた方が貴方がたも安心出来るでしょうしマザーに対しても意見が言えると思うので」


「何故そこまでする?」


 余りの好待遇に流石のロギアも青年を問い質す。


「申し訳ないのですが僕にはそこまでマザーが考えている事は把握する事が出来ません。二日後、直接マザーと会った際にお聞きになって下さい。それと住むべき家やその間の安全性につきましては僕自らが貴方がたのサポート兼護衛を任させて頂きますのでそこは安心して下さい」


「いわゆる監視という事か」


「悪く捉えればそうなります」


 青年はニッコリと微笑んだ後ゆっくりと席を立つ。


「それではまず此処の街を案内します。肩の力を抜いて観光気分で構いませんよ」


「――観光気分、ね……」


 ロギアとアリアは立ち上がると、先導する青年の後に続く様部屋を後にした。


この度は第53話を読んで下さりありがとうございました。


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