54話 グリーンエリア
街はロギアの想像以上に発展していた。
自分達が先日通って来たレッドエリア、イエローエリアよりも発展していると迄は聞いていたが余りにもその差があり過ぎた。
高い建物が多いだけではなく道もしっかりと整備され緑も多い。
通行する人々の服装もレッドエリアの人とは別次元の様に違い表情も明るく、以前の世界よりも発展しているんじゃないかとさえ思える程だ。
「……す、凄い」
それはアリアも同じだったらしく瞼を擦りその光景を認識するまでは時間がかかっていた。
「想像以上だが――――」
ロギアは周辺を見回し愕然とするが、塀の外よりも安全で人口が多いとされているレッドエリアと此のグリーンエリアとの余りのギャップに、都市全体に見える闇をハッキリと認識し曖昧な言葉が漏れる。
「確かに貴方の思っている事は僕にも理解出来ます。しかしレッドエリアに住む方々もずっとそこで留まる訳ではありませんよ。日に日に一番外側の塀も頑丈になっていますし、レッドエリアの――都市自体の地域面積も調査、開発などによって徐々に大きく広げています。僕は今レッドエリアに住む皆さんもいずれその不安すら消えると考えています」
「そう、か……」
それでも不安を拭い切れないロギアは絞り出す様にそう呟くと傍に居るアリアの表情を見る。
周囲をぐるっと見回し通行人へと視線を送り、その間に気になった物には動きを止め注視する。
そんな傍から見れば奇怪な行動をとっていた。
ロギアにとっては前に一度足らず数回目撃した事だったが、改めて考えると今迄拘束されていたせいでロクに外の景色を見ていなかったのだ。
アリアの瞳に飛び込んで来るこの光景は余りにも目新しさがあり過ぎても不思議じゃない。
アリアから視線を戻し青年の後について再び歩を進めていく。
「――――それにしても……随分と賑やかだな」
青年が道行く光景を説明している中ロギアは周りの景色を見て呟いた。
街中を歩くだけでも様々な肌の色の人が目に入り、更に遠くの方では人々が行き交い露店等を開き商売をしている光景さえ見える。
「商売……別世界に来た気持ちだ」
そう皮肉気にロギアの口から零れた。
「んぅ? ……ロギ」
微かに聞き取れたアリアがロギアの言葉の意味を理解するよりも早く二人が歩を進めてしまったのでその後を送れない様に慌てて追いかけた。
この直ぐ外では卑劣で残酷な世界が広がっている中、活気に満ち溢れている中心街。
行く所々で青年は住人に声を掛けられ、そして何故か二人にも青年と同じ様に声を掛けて来る。
「……あっ、え、えーと……」
アリアは唐突の事でどう反応したらいいのか判らずロギアの袖を摘まむ。
「大丈夫だろう……此処の連中には俺達の事は伝わっている様だし、何よりも俺達がどんな奴かだなんてとっくの前に調べなんかついているだろうからな」
「はい、ご明察通りでございます」
青年はそう応じるとにこりと微笑んだ。
ロギアは声を掛けて来た人物だけでなく普通に通行している者にも目を向ける。
幾ら守られているとはいえ幾つかの壁の向こうには此処と真逆の世界がある、その外の連中との警戒心の落差に愕然としつつもロギアとアリアは黙って青年の説明を聞きながら青年が最初に言った様に今ばかりは街中を観光する形になった。
「では――細かい箇所の案内は後程と言う事でここからは此処で生活する上でよくお世話になるだろう施設を幾つかご紹介します。その後に貴方がたがゆっくりと寛げる住居へとご案内致します。」
「あ?」
ロギアは言っている意味が理解に追いつけず「……住居?」アリアはその単語を繰り返し頭の中に再度読み込む。
「はい、マザーからの指示で貴方がたお二人が安全に休息出来る住居は既に用意してあります。こちらも簡単にお二人の信用を得る事は出来ないと思っていますのでお二人が離れる事が無いよう一緒に、こちらとしても何かがあった場合に備えてその様に準備させて頂きました。」
二人は顔を見合わせてロギアが溜息を吐く。
「今までの対応からして大体そんな事だろうと予感はしたが……相当にご執心みたいだな」
「それはもう。さて行きましょうか」
周囲の人がロギア達に向け挨拶をして来る事が最初こそ戸惑っていた物の次第に慣れアリアは会釈からだんだんと変化し今では少しばかり声を出して挨拶する様になっていく。
ロギアはというと挨拶は少し顔を下げるだけで、その後に人々の中に上等な装備を身に纏った兵士らしき人物を見据える。
どう見ても警備兵で、それ以外にも高い建物の上の方から監視されていると見て間違いなさそうだった。
「――どうも落ち着かないな……」
ロギアのその発言に流石の青年も苦笑いを浮かべていた。
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