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勇者はメイドを金の代わりに売った――五人の商人に差し出された彼女たちの運命

これがこの物語の最新エピソードです。皆さんに楽しんでいただけたら嬉しいです。

ラテングォク・オモネグロ王国。


そこは、富と腐敗が同じ匂いを放つ場所だった。


勇者アティエルが到着したとき、すでにすべては整えられていた。


巨大な宮殿。

磨き上げられた床。

そして――並ぶ女たち。


五十人。


すべてが“選ばれた美貌”だった。


「勇者様、お帰りなさいませ」


一斉に頭を下げる。


声は揃っていたが、感情は揃っていない。


震えている者。

無表情の者。

そして――笑っている者。


アティエルはそれを一瞥し、興味なさそうに歩き出す。


(……数だけは多いな)


価値は、まだ分からない。


広間に通されると、すぐに酒が運ばれた。


だが、それとは別に――


「勇者様、こちらは本日ご注文いただいた品でございます」


五人の商人が、深く頭を下げる。


その背後には、大量の樽。


中身はすべて、上質な麦酒だった。


アティエルは椅子に腰掛け、面倒くさそうに顎を支える。


「……ああ、そういえば頼んでたな」


商人の一人が、慎重に口を開く。


「お代の方を……」


沈黙。


アティエルは、しばらく何も言わなかった。


そして、ゆっくりと視線を横に流す。


そこには、並ぶメイドたち。


五十人の“資産”。


「金、面倒なんだよな」


軽く、そう呟く。


商人たちは顔を見合わせる。


嫌な予感だけが、共有される。


「好きなの、持ってけよ」


一瞬、誰も理解できなかった。


「……は?」


「そいつら」


アティエルは、メイドたちを顎で示す。


「代金代わりにやる。好きなの選べ」


空気が、凍った。


「お、お待ちください……!」


一人のメイドが、思わず声を上げる。


だが、隣のメイドに腕を掴まれ、止められる。


誰も動けない。


誰も、何も言えない。


ただ一つ、確かなことがあった。


――守られていると思っていた。


その前提が、今、崩れた。


商人たちは戸惑っていた。


だが、次第にその表情が変わる。


理解したのだ。


これは冗談ではない。


そして――拒否する理由もない。


「……では、遠慮なく」


一人が言う。


ゆっくりと、メイドたちの列へ歩いていく。


視線が、値踏みするように動く。


商品を見る目だった。


「や、やめて……」


小さな声。


だが、それは誰にも届かない。


選ばれる。


一人。

また一人。


そして五人。


「……これでよろしいか?」


「ああ」


アティエルは、すでに興味を失っていた。


樽を開け、酒を注ぐ。


「好きにしろ」


連れて行かれる足音。


振り返る者。

泣く者。

何もできないまま、消えていく者。


扉が閉まる。


それで終わりだった。


残された四十五人。


沈黙。


誰も顔を上げない。


誰も、何も言わない。


理解してしまったからだ。


ここにあるのは――保護ではない。


ただの“所有”だと。


「風呂、用意しとけ」


アティエルは酒を飲みながら言う。


「ぬるいのは嫌いだ」


それだけ。


まるで、先ほどの出来事など存在しなかったかのように。


「……かしこまりました」


一人のメイドが答える。


声は、震えていなかった。


だが、その目はもう――先ほどとは違っていた。


勇者は、人を救わない。


勇者は、人を守らない。


勇者は――


人を、貨幣として扱う。

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