第8話 【激白】バレエの「常識」、半分以上ウソだった。
「先生、これって正しいんですか?」
若い奴が、バレエの「常識」について聞いてきた。
「みんなそう言ってるし、ずっとそう教わってきたんですけど…」
俺、その時思わずため息が出た。
「みんなが言ってることと、正しいことは、別だ。」
この業界、変な「常識」がはびこりすぎてる。
今日はな、そのウソをバッサリ切ってやる。
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ある日、聞いた「衝撃の常識」
今からもうずいぶん前になる。
とあるスタジオで、先生が生徒に言ってた言葉。
「お腹を凹ませて!」
「お尻を締めて!」
「肩を下げて!」
どこのスタジオでも聞く言葉だ。
当時は俺も「ふーん」って聞いてた。
でもな、ある時、キーロフの医者にその話をしたら、
医者がこう言ったんだ。
「それ、身体を壊す方法ですね。」
耳を疑ったよ。
医者は続けた。
「お腹を凹ませると、呼吸が浅くなる」
「お尻を締めると、股関節が動かなくなる」
「肩を下げようとすると、逆に首が固まる」
つまり、よく聞く「常識」の多くは、
解剖学的に間違ってるってことだった。
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バレエ界「5大誤解」、ぶった切る
よし、じゃあ具体的に教える。
世の中に蔓延する「5大誤解」を、一つずつぶった切ってやる。
誤解1:「お腹を凹ませるのが正しい」
お前、これやったことあるだろ?
「お腹引っ込めて!」って言われて、思いっきり凹ませた。
でもな、それ、呼吸ができなくなるだけなんだ。
正しいのは「凹ます」じゃない。
「軽く引き上げる」だ。
どう違うか?
凹ます=息を全部吐いて、そのままキープ。
引き上げる=息を吸った状態で、お腹の下の方に軽く力を入れる。
凹ますと、横隔膜が動かなくなる。
引き上げるなら、横隔膜は自由に動ける。
試してみろ。
お腹を凹ませた状態で、深呼吸してみろ。
できねえだろ?
誤解2:「お尻を締めるとアンドゥオールが深くなる」
これ、最悪の誤解の一つだ。
「アンドゥオール=お尻をギュッと締める」と思ってる奴、後を絶たない。
でもな、お尻を締めると、逆にアンドゥオールは浅くなる。
なぜか?
お尻の筋肉(大殿筋)は、股関節を外に回す筋肉じゃない。
むしろ、内に回す働きがあるんだ。
つまり、お尻を締めれば締めるほど、
股関節は内側に入っていく。
正しいのは「締める」じゃない。
「下ろす」だ。
お尻の力を抜いて、自然に下ろす。
すると、股関節が動きやすくなる。
誤解3:「肩を下げるときれいに見える」
「肩が上がってる!」って言われて、
思いっきり肩を下げたこと、あるだろ?
でもな、肩を「下げよう」とすると、首が固まる。
なぜか?
肩を下げる筋肉(広背筋など)は、
首の筋肉とつながってる。
無理に下げようとすると、首まで一緒に固まるんだ。
正しいのは「下げる」じゃない。
「背中に広げる」だ。
肩を下ろすイメージじゃなくて、
肩甲骨を背中側にスライドさせるイメージ。
そうすると、首は自由なまま、肩だけが落ち着く。
誤解4:「膝をピンと伸ばすのが正しい」
バレエでは「膝を伸ばせ」ってよく言われる。
で、多くの人がロックしてる。
でもな、膝をロックすると、衝撃を吸収できなくなる。
ジャンプの着地の時、ロックしてたらどうなる?
膝に全衝撃が集中する。壊れるぞ。
正しいのは「ロック」じゃない。
「軽く伸ばす」だ。
膝がカチッとロックする手前で止める。
筋肉で軽く支える状態。
これが「踊れる膝」の正体だ。
誤解5:「つま先をピンと伸ばせばきれい」
これもよく聞く。
「もっと足先を!」って。
でもな、足首だけでピンと伸ばしても、
そこに「感情」は乗らない。
正しいのは「足首だけ」じゃない。
「ふくらはぎからつま先まで連続して伸ばす」だ。
足首を伸ばす筋肉は、ふくらはぎから来てる。
ふくらはぎを意識せずに足首だけ伸ばそうとすると、
足首に負担がかかるだけ。
ふくらはぎ→アキレス腱→足首→つま先
この連鎖を感じながら伸ばせ。
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なぜ「誤解」が生まれるのか?
ここで一つ、深い話をしよう。
なぜこんなに誤解が蔓延してるのか?
3つの理由がある。
理由1:「感覚」と「指示」のズレ
先生が言ってることと、
生徒が聞いてることは、違う。
先生が「お腹を凹ませて」って言う時、
本当に伝えたいのは「体幹を引き締めろ」だ。
でも、それを言葉で伝えるのが難しい。
だから「凹ませて」って言う。
で、生徒はそのまま「凹ます」を実行する。
これが誤解の始まりだ。
理由2:「見た目」と「機能」の混同
見た目が同じでも、中身が違うことがある。
例えば、あるダンサーのお腹は「凹んで」見える。
でも、それは「凹ませてる」からじゃない。
「引き上がってる」からだ。
見た目だけ真似しようとしても、
中身が伴わなければ、ただの「形」になる。
バレエは「見た目」じゃない。
「機能」なんだ。
理由3:「即効性」を求める心理
「お腹を凹ませれば、すぐに細く見える」
「お尻を締めれば、すぐにアンドゥオールが深く見える」
そういう「即効性」のある方法が広まる。
でもな、その場しのぎの方法は、
長期的には必ず歪みを生む。
ワガノワは「即効性」を求めない。
「持続可能性」を求める。
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正しい「常識」の見分け方、教えてやる
「先生、じゃあ何が正しくて何が間違いか、どう見分ければいいんですか?」
いい質問だ。
3つのチェックポイントを教える。
チェック1:「呼吸ができるか?」
その方法をやった時、深呼吸できるか?
できないなら、それは間違い。
正しい方法は、呼吸を深くする。
間違った方法は、呼吸を浅くする。
チェック2:「全身がつながるか?」
その方法をやった時、腕と背中がつながるか?
脚と体幹がつながるか?
部分だけが動いてるなら、それは間違い。
正しい方法は、全身の連鎖を生み出す。
チェック3:「10年後も続けられるか?」
その方法を10年続けたら、身体は大丈夫か?
壊れそうなら、それは間違い。
正しい方法は、長く続けられる。
間違った方法は、いつか壊れる。
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ある日の老師、伝説の一言
俺がキーロフで学んでいた頃、
ある老師に「どうしてこんなに誤解が多いんですか?」って聞いた。
老師、しばらく黙ってた。
で、こう言った。
「正しいことを言うのは、勇気がいるからだ。」
「お腹を凹ませて」って言えば、一瞬で形は変わる。
でも「引き上げろ」って言うと、説明が長い。
「どうやって?」って質問が返ってくる。
それを一つ一つ説明するのは、面倒だ。
多くの教師は「面倒」を避ける。
だから「即効性のあるウソ」が広まる。
でもな、本当の教師は違う。
面倒でも正しいことを伝える。
それが「本物」と「偽物」の違いだ。
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結論:「みんながやってるから」で踊るな
よし、まとめるぞ。
バレエ界には「誤解」がはびこってる。
・お腹は「凹ます」じゃない
・お尻は「締める」じゃない
・肩は「下げる」じゃない
・膝は「ロック」じゃない
・足先は「足首だけ」じゃない
「みんながやってるから」
「ずっとそう教わったから」
その理由で踊り続けるな。
自分で考えろ。
自分の身体で確かめろ。
呼吸できるか?
全身つながるか?
10年後も大丈夫か?
それがワガノワの考え方だ。




