第7話 【驚愕】背骨と呼吸、バラバラに考えてる奴、全員損してる。
「先生、背骨ってどうやって使うんですか?」
若い奴に聞かれた。
で、やって見せた動きを見て、そいつが言った。
「え、それって…呼吸じゃないですか?」
俺、その時思わず笑った。
「気づいたか。お前、センスあるぞ。」
そう、背骨の動きと呼吸は、同じものなんだよ。
---
ある日、鏡の前で気づいた「衝撃」
今からもうずいぶん前になる。
俺がまだ若手で、ある老師に「背中が動いてない」って怒られまくってた時期があった。
毎日毎日、鏡の前で背中を動かそうとしてた。
肩甲骨を寄せたり開いたり。
背骨を曲げたり伸ばしたり。
でも、なんか違う。
機械的に動かしてるだけ。
老師は「違う」の一言で、何が違うか教えてくれない。
ある日、疲れてぼーっとしてたら、
自然に大きな息を吸ったんだ。
その時、背中が勝手に動いた。
背骨が伸びて、
肩甲骨が開いて、
肋骨が広がった。
「あ、これか」って、その瞬間にわかった。
背骨を動かそうとするな。
呼吸をしろ。
背骨は勝手に動く。
---
背骨と呼吸の「決定的な関係」
まずは基本から行くぞ。
背骨は24個の骨が積み重なった構造だ。
首からおしりまで、一本の柱になってる。
呼吸は、肺を膨らませたり縮めたりする動きだ。
横隔膜が上下して、空気を出し入れする。
この二つ、一見関係なさそうに思えるだろ?
でもな、めちゃくちゃ関係あるんだ。
なぜか?
呼吸筋のほとんどが、背骨に付いてるからだ。
横隔膜、肋間筋、腰方形筋…
これらは全部、背骨から生えてるか、
背骨に付着してる。
つまり、呼吸をすれば背骨は動く。
背骨が動けば呼吸は変わる。
二つは「一心同体」なんだよ。
---
ワガノワが考える「呼吸と背骨の3つの法則」
よし、じゃあ教える。
ワガノワで叩き込まれる、
呼吸と背骨の関係の「法則」だ。
法則1:「吸う=背骨が伸びる」
息を吸うとき、何が起きるか?
横隔膜が下がる。
肺が膨らむ。
背骨が縦に伸びる。
胸椎(胸のあたり)がわずかに後ろに反り、
腰椎(腰のあたり)が真っ直ぐになる。
この「吸う=伸びる」の関係を身体に刻め。
背骨が縮こまってる状態で吸おうとしても、
深い呼吸はできない。
法則2:「吐く=背骨が戻る」
息を吐くとき、何が起きるか?
横隔膜が上がる。
肺が縮む。
背骨がニュートラルに戻る。
胸椎の反りが戻り、
腰椎のカーブが自然になる。
この「吐く=戻る」の関係を意識しろ。
吐き切れてない奴は、背骨が常に反ったままだ。
それ、疲れるぞ。
法則3:「呼吸を止める=背骨を殺す」
一番言いたいことがこれだ。
無呼吸で踊る奴、見たことあるだろ?
息を止めて、必死に動いてるやつ。
あれ、背骨を殺してるのと同じなんだ。
呼吸を止めると、背骨は動けなくなる。
背骨が動かないと、全身の連鎖が止まる。
結果、腕も脚もバラバラに動く。
呼吸を止めるな。
背骨を殺すな。
---
ある日のレッスン、伝説の一言
俺がキーロフで中堅になった頃、
新人ダンサーに背骨と呼吸の関係を教えてた時の話だ。
そいつ、めちゃくちゃ真面目で、
「背骨を伸ばします!」
「呼吸を深くします!」
って、力んでた。
俺、それを見て、こう言った。
「お前、今、背骨を絞めてるぞ。」
意味がわからなくて、そいつはキョトンとしてた。
だから続けた。
「力を入れて『伸ばそう』とするな。
息を吸うとき、自然に伸びるんだ。
『伸びよう』としてる間は、伸びない。」
これ、すごく大事なこと言ってるんだ。
背骨は「伸ばす」ものじゃない。
「伸びる」ものなんだ。
呼吸が変われば、勝手に伸びる。
逆に、伸ばそうと力を入れると、
筋肉が固まって、逆に縮む。
ワガノワは「無理やり」を一切許さない。
「自然に」を追求する。
---
具体的な練習法、教えてやる
「先生、じゃあ具体的にどうすればいいんですか?」
そう来ると思った。
実践編、行くぞ。
練習1:「仰向けで背骨を感じる」
まずは仰向けに寝ろ。
膝は立てる。リラックス。
息を吸う。
何が起きる?
腰がわずかに浮く感じがしないか?
息を吐く。
腰が床に沈む感じがしないか?
これが「背骨の呼吸運動」だ。
立つ前に、寝て覚えろ。
練習2:「四つん這いで背骨を動かす」
次は四つん這いになれ。
手は肩の真下。膝は股関節の真下。
息を吸いながら、背中をそらせ。
お腹を床に近づけるイメージ。
これを「キャットポジション」って言う。
息を吐きながら、背中を丸めろ。
天井に向かって背中を押し上げるイメージ。
これをゆっくりやれ。
呼吸に合わせて、背骨が動くのを感じろ。
練習3:「立って第1ポール・ド・ブラ」
さあ、立ったぞ。
第1ポール・ド・ブラをやる。
プレパラトリーで息を吐く。
1番に上がるとき、吸う。
この時、背骨が伸びるのを感じろ。
3番を通るとき、息を保つ。
この時、背骨の「つながり」を感じろ。
2番に開くとき、吐く。
この時、背骨がニュートラルに戻るのを感じろ。
これができたら、お前のポール・ド・ブラは「生きる」。
---
子どもに教える時、どうするか
ここで実践的な話をしよう。
子どもに背骨と呼吸を教える時、どうするか。
まず、「背骨」って言葉を使うな。
子どもにはピンとこない。
代わりに、こう言え。
「背中で息してみよう」
「お腹がふくらんだりへこんだりするの、感じてみよう」
「息を吸うと背中が伸びるよ。触ってみる?」
最後の「触ってみる」は効果的だ。
先生の背中に子どもの手を当てさせて、
「今、吸ったから伸びたでしょ?」
って体験させる。
言葉より、感覚。
これが鉄則だ。
---
結論:呼吸は「表現」じゃない。「構造」だ
よし、まとめるぞ。
多くの人は「呼吸=表現」だと思ってる。
「ここで大きく息を吸って、ドラマチックに…」
みたいな。
でもな、ワガノワでは違う。
呼吸は「身体の構造」そのものなんだ。
背骨を動かすのは呼吸。
全身の連鎖を生み出すのも呼吸。
深いアンドゥオールを支えるのも呼吸。
呼吸が浅い奴は、背骨が硬い。
背骨が硬い奴は、全身がバラバラ。
逆もまた真なり。
深く呼吸できる奴は、背骨が柔らかい。
背骨が柔らかい奴は、全身がつながる。
呼吸を軽く見るな。
お前のバレエの9割は、呼吸で決まる。




