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ワガノワ・メソッド:キーロフ出身の漢がバレエの真実をぶった切る  作者: はまゆう


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第19話 【伝え方】「伝わらない」は言葉のせいじゃない。「届け方」のせいだ

「先生、どうやったらうまく教えられますか?」


若い先生に聞かれた。

「同じことを言ってるのに、伝わらない子がいるんです…」って。


俺、その時、こう言った。


「お前の『同じこと』が、本当に『同じ』か?」


「え?」


「言葉は同じでも、

伝わり方は違う。

それに気づいてないから、伝わらないんだ。」


---


ある日、見た「伝わらないレッスン」


今からもうずいぶん前になる。

あるスタジオで、若い先生が子どもに教えてるのを見た時の話だ。


先生:「肩を下げて!」

子ども:肩を上げる(逆効果)


先生:「もっと肩を下げて!」

子ども:さらに肩を上げる


先生、イライラしてきた。

「なんでわからないの!」


俺、その時、思ったよ。


わからないのは子どものせいじゃない。

伝え方が悪いんだ。


「肩を下げて」と言われて、

子どもが思うこと。


「え? 肩を下げるって?」

「肩を『押し下げる』こと?」


そう、言葉が「抽象的」すぎるんだ。


---


「伝わらない」3つの理由


よし、じゃあ教える。

「伝わらない」のには、3つの理由がある。


理由1:「抽象」から「具体」がない


「肩を下げて」

「お腹を引き上げて」

「背中を使え」


これ、全部「抽象的な指示」だ。


何が問題か?

「どうやって」が抜けてる。


抽象的な指示は、経験者には通じる。

でも、初心者には「何をすればいいか」がわからない。


抽象だけでは、伝わらない。

具体を添えて、初めて伝わる。


理由2:「否定」だけで「肯定」がない


「違う」

「ダメ」

「そうじゃない」


否定ばかりの指導は、

生徒を混乱させる。


なぜか?

否定だけでは「何が正しいか」がわからないからだ。


「肩が上がってる」と言われても、

「じゃあどうすればいいの?」となる。


否定だけでは、伝わらない。

肯定を添えて、初めて伝わる。


理由3:「言葉」だけで「体験」がない


言葉で説明するだけでは、

身体は動かない。


「こうやって」と言われても、

「どうやって」が身体でわからない。


言葉だけでは、伝わらない。

体験を添えて、初めて伝わる。


---


伝わる言葉にする「3つの変換」


よし、じゃあ教える。

抽象的な指示を「伝わる言葉」に変換する方法だ。


変換1:「抽象」を「具体」に


「肩を下げて」

→「肩を『耳から遠ざける』感じで」


「お腹を引き上げて」

→「お腹を『背骨に近づける』感じで」


「背中を使え」

→「肩甲骨を『背骨に寄せる』感じで」


「比喩」や「イメージ」を添えろ。

それだけで、グッと伝わりやすくなる。


変換2:「否定」を「肯定」に


「肩を上げないで」

→「肩を『下ろす』ことを意識して」


「お腹を緩めないで」

→「お腹を『キープ』することを意識して」


「膝を曲げないで」

→「膝を『伸ばす』ことを意識して」


「しないで」より「しろ」。

否定より肯定。

これだけで、頭に入りやすくなる。


変換3:「言葉」に「体験」を添える


言葉で説明したら、実際にやってみせろ。


「肩を下ろすってこういうことだよ」

って、自分の身体で見せる。


見せた後、生徒の身体に触れてみろ。


「ここ、こうやって動かすんだよ」

って、手で導く。


言葉+見せる+触れる。

この3つが揃って、初めて「伝わる」。


---


ある日の老師、伝説の一言


俺がキーロフで教え始めた頃、

ある大先輩に「どうやったら伝わりますか?」って聞いた。


先輩、こう言った。


「伝わらない時はな、

『相手の言葉』を話してないんだ。」


「え?」


先輩は続けた。

「自分が理解してる言葉で説明しても、

相手が理解してる言葉でなければ、伝わらない。


『肩を下げて』と言う前に、

その子が『肩』をどう理解してるか知れ。


『下げる』をどう理解してるか知れ。


相手の『言葉』を話せ。

それができた時、初めて伝わる。」


その時、「伝える」ことの本当の意味がわかった。


「伝える」は「相手の言葉で話す」ことなんだ。


---


年齢別・「伝わる言葉」の選び方


ここで、具体的な年齢別の「伝え方」を教える。


4〜6歳(幼児):「ごっこ」で伝えろ


抽象的な言葉は通じない。

「肩甲骨」なんて言ってもわからない。


代わりに、こう言え。


「鳥さんになって、羽をパタパタ!」

「お花が咲くように、腕を広げて!」

「風船が膨らむように、背中を大きく!」


イメージで伝えろ。

子どもは「ごっこ」が大好きだ。


7〜9歳(低学年):「比喩」で伝えろ


少し言葉が通じるようになってきた。


「背中に翼があると思って」

「お腹にボールを乗せてると思って」

「頭の上に本を載せてると思って」


比喩を使え。

抽象より具体。イメージがわく言葉を選べ。


10〜12歳(高学年):「理由」を添えろ


「なぜそうするのか」を説明できる年齢。


「肩を下げると、首が長く見えるんだよ」

「お腹を引き上げると、回転が安定するんだよ」


理由がわかると、納得して動ける。

納得した動きは、すぐに身につく。


13歳以上(中学生〜):「解剖」も使え


本格的な言葉が通じるようになる。


「広背筋を意識して」

「肩甲骨を内転させて」

「骨盤をニュートラルに」


専門用語も使っていい。

でも、必ず「具体」と「体験」を添えろ。


---


「伝わる言葉」の黄金ルール


ここで、どんな場面でも使える「黄金ルール」を教える。


ルール1:「3回違う言い方で言え」


同じ言葉を繰り返すな。

・抽象的表現

・比喩的表現

・具体的表現


この3つで言い換えろ。


例えば「肩を下げて」の場合:

・「肩を耳から遠ざけて」

・「コートを肩で支えるような感じで」

・「鎖骨を横に伸ばすイメージで」


同じことを3通りの言い方で。

これだけで、伝わる確率が格段に上がる。


ルール2:「ポジティブに変換しろ」


否定形を使うな。

「〜しないで」を「〜して」に変えろ。


「膝を曲げないで」→「膝を伸ばして」

「お腹を緩めないで」→「お腹をキープして」

「肩を上げないで」→「肩を下ろして」


ポジティブな言葉は、

脳に「行動」を促す。


ルール3:「体感」を言葉にしろ


「こういう感じ」を、言葉で表現しろ。


「背中が『広がる』感じ」

「お腹が『持ち上がる』感じ」

「腕が『浮く』感じ」


感覚を言葉にすることで、

相手も「同じ感覚」を探せるようになる。


---


結論:「伝わらない」は「伝え方」の問題


よし、まとめるぞ。


「伝わらない」と嘆く前に、

自分の「伝え方」を見直せ。


伝わらないのは、相手のせいじゃない。

自分の伝え方の問題だ。


・抽象を具体に

・否定を肯定に

・言葉に体験を添えろ


そして、相手の言葉で話せ。


それができた時、

初めて「伝わる」レッスンになる。


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