99. ブセルターン砦の攻防2
この敵兵の配置を見ながら、俺とクララ、キニアニオ様とヴァルターズ従士で軍議を行っている。
「キニアニオ様、敵軍の中に無理やり連れてこられたと思われる公爵領の人間が2000人ほどいます。彼らは敵軍ということで殲滅対象にしてよろしいか」
「ハルト殿、敵軍といっても我領民なのだろう。どうにかならないのか」
「無理です。彼らを殺さずに城門を開ければ、敵軍が城内になだれ込んで我々は殺されます」
「ううー。わかった」
「仕方ありません。これが戦争です。そして我々が負ければ公爵領が滅びます」
「今後の予想ですが、まず敵軍は使い捨ての兵士2000人で街道側の櫓に攻撃をかけると思います。
その後、歩兵が街道沿いから北側にかけて攻撃してくると思われます。
騎士の突撃は今のところないと思いますが、こちらが歩兵の攻撃に気を取られている間に、街道を無理やり進むかあるいは東側の森を迂回して砦の南側に回り込もうとするかもしれません。
そうすると、我々はそちらにも兵を回す必要が出てきます。その結果北側の守りが手薄になります。
とにかく騎兵の動きを注視する必要があります。
とにかく我々は援軍が来るまでここで持ちこたえる必要があります」
「援軍が来るまでどれくらいかかると思う」
「事前に要請がしてあれば早いと思いますが、今回はトゥール公爵家の主力すら来ていない状況なのでたぶん1か月くらいはかかると予想されます」
俺はキニアニオ様の許可が得られたので、櫓と尖塔にいる俺の部下に監視装置を通じて、砦に近付く者はすべて殲滅するよう命令した。
ただ、尖塔の砲塔については能力を知られたくないので待機とした。
そうこうしているうちに戦闘が始まったようである。まず街道沿いを南下する兵の一団が見える。
ぼろぼろの服を着て手に刀だけを持った一団である。
どうも我軍の兵士も気後れしているようである。そこで俺は監視装置に再度命令を伝達した。
すると爆裂弾が発射された。そしてその一団が消し飛んだ。
そうすると、後続の集団はそこで止まって動かなくなった。
そしたら、その後ろから魔法攻撃がその集団に行われた。
すると、またその集団が動き始めた。
あまりにもかわいそうだったので、俺は集団の少し手前に爆裂弾を落とすよう命じた。
そして爆裂弾の着弾と同時に土魔法で街道に大穴を開け街道を通れなくした。
この様子を見ていたキニアニオ様が泣いている。
しかたない、こちらも必死なのである。耐えるしかない。
その後、歩兵の突撃があるかなと思ったが、さすがに、街道に大穴が開くような威力を見せられると、前に進めないようである。
その日の攻撃はそれで終わりであった。
次の日は北側の壁に向かって攻撃が行われた。櫓と櫓のちょうど中間辺りから一番距離の遠い壁に対して攻撃が行われた。
すると壁から100mぐらいちょうど堀の掘ってある辺りまで近づけるようである。それより前に進むと爆裂弾で吹き飛ばされていた。
これは、俺も盲点であった。明日ここを集中攻撃されるとヤバイ。そこで俺はすぐにその地点にも爆裂弾の発射装置をセットし、兵を配置した。同時に櫓との距離がある東側と南側の壁にも爆裂弾の発射装置をセットし兵を配置した。
はたして、次の日、昨日の北側の壁に対して歩兵の突撃が開始された。俺は急遽設置した爆裂弾の発射装置については少し待つように命令した。
そして、敵が壁に到達する頃を見はからって攻撃をさせた。この攻撃は効いたようで、発射装置の射程内に多くの敵兵が入っており、かなりの数の敵兵を殲滅できた。
さて、敵はどう動く。夜襲か、それとも東側の森を抜けてくるか。結局その日は夜襲はなかった。
次の日、騎兵に動きがあった。少しずつ東側に移動している。どうも東側の森を抜けるようである。その日の夜騎兵が無理に入っていった。
しかし、森の中にはいたるところに罠が設置してある。まして夜である。罠の発見は不可能だろう。索敵で状況を確認するとほとんどの騎兵が罠に引っかかったようである。
砦から兵を出すことも考えたが、こちらの兵が罠にかかる可能性があることから、そのまま放っておくことにした。動ける兵はそのまま森を抜けるかもしれないが、少数なら砦の南側に展開しても問題ない。そして彼らには補給が来ないのであるから、そのうち餓死するだろう。
罠にかかって動けない騎兵は3日もすると全く動かない、もう餓死寸前である。3000人の騎兵のうち森を抜けたのは1000人もいない。
その森を抜けた騎兵から一度攻撃を受けたことがあるが、櫓からの爆裂弾の攻撃ですぐに撃退した。
帝国軍は攻城兵器も持ってきているようであるが、カタパルトはないようである。何分こちらの爆裂弾の発射装置の射程が500mもあるので砦に近付くことができないようである。
攻撃が始まってから10日ほどたった。砦は無傷である。こちらの兵の損耗もない。帝国軍は使い捨ての兵士はあれから姿を見ないのでどうなったのかわからない。歩兵は北側の壁の襲撃でたぶん2000人ほどの被害を出していると思う。騎兵は森を抜けた1000人以外は死傷したと思う。
そうすると帝国軍は約11000人こちらは6000人。でもやっぱり、帝国軍の方が強い。やはり籠城しかないか。早く援軍が来ないかな。
それから何日か経った時、夜襲があった。「夜で見えないはず」と思っていたようであるが、索敵で俺が敵軍の位置を把握して監視装置で櫓の兵士に伝え、事なきを得た。連続して夜襲をかけられると俺の寝る時間が無くなりつらいのだが、それはなかった。
そうやってしていたら12月になって、雪が降り始めた。すると帝国軍は引き始めた。山岳地帯の道を通っての補給は難しいようだ。
追撃戦をすることも考えたが、敵軍はこちらの2倍、返り討ちに遭ってしまう。結局俺はそのまま雪が積もるまでそこにいた。
せめて、公爵家の主力ぐらいは来ると思っていたが、結局、援軍は来なかった。
「どうなっている公爵家の領軍。こんなんで領地を守れるのか」そう思った。
キニアニオ様とヴァルターズ従士と協議して、この砦には公爵家の領軍1000人と2000人の市民兵が残ることになった。
爆裂弾の発射装置と使わなかった尖塔の砲塔は火薬を秘匿したかったのと、爆裂弾の補充が効かないことから収納空間ボックスに回収した。
12月の終わりに公爵家の領都に戻った。フアニート様とユリアーネお義姉様に挨拶だけして、
「疲れたので帰らせてほしい」
と言って、すぐに領都ネイメーに帰った。
何か言いたそうだったが、こちらも15000人の帝国兵と対峙しているのに公爵家の援軍も来ないのである。俺としても腹が立っている。




