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256.東方の調査(亡国を訪ねる旅)

 亡国の王女はもう死んでいるようである。それを、この魂に理解してもらうことにした。

「イリナ、お前はもう死んでいる。見ろ、この〇〇はもう骨と皮だけじゃないか。とても生きている人間じゃないだろう」

「でも、私はこうやって動けるし、お前となら話もできる」

「俺の名前はハルト、俺がお前と話が出来るのは俺のスキル言語理解のせいだ。普通の人間は死んだ人と話せない」

「そうなのですか。何となくは分かっていたのですが、やはり私は死んでいるのですね」

そう言って、少女は泣き崩れた。


「どうしたって」

レンが聞いてきたので

「やっと、イリナ王女も自分が死んだことを理解したようだ」

「そうですか」


「おい。イリナ、これからどうしたい」

「私、私の生まれたハイゼイト王国をもう一度見てみたい。そしてかつての王国民が生きていたら、私がお父様から預かった秘宝を渡したい」

「王国の再興は望まないのか」

「もう無理だと思う。王族もたぶんみんな死んだと思う、民もどれだけ生き残っているのか分からない。生き残っていてもみんな奴隷にされているかもしれない。それにそんなことをすれば、また戦争になる。今は静かにすごしたい」


「わかった。それが正解だな。国を興すとなるとまた戦争になる。俺も戦争は望まない。ところで、その秘宝とはどこにあるのだ」

すると、イリナは

「付いてきて」

と言って、奥の部屋に案内してくれた。そして扉を開けると、床下を指さして

「この床下に埋めてある」

と言った。


 床板をめくると、箱に入った王冠とネックレスと宝石と数珠が出てきた。

「ハイゼイト王国は仏教徒か」

「ハルトは仏教が分かるのか」

「わかるぜ、これ数珠だろう」

「よかった、異教徒でなくて」

「俺は仏教徒じゃないぜ」

「そんな冷たいこと言わずに、仏教に帰依したら」

「それはいろいろ問題がある」

「そうそれは残念ね」


 それから、俺は?マーク満載のレンたちに説明した。

「これが、イリナの言っていたハイゼイト王国の王家の秘宝だそうだ。これを、イリナはかつての王国民が生きていたら渡したいそうだ」


 その後、イリナから、ハイゼント王国の場所を聞いて、その場所に行くことになったが、正確な場所を覚えていないということなので、先に俺とイリナで転移して、王国の場所を調べることにした。その後、みんなでお寺ごと転移することになった。お寺ごと転移することにしたのは、お寺には死んだ供の者たちが祭られているので、出来たら故郷の土に戻してあげたいというからである。


 俺とイリナは手をつないで山の向こうに転移した。幽霊と手をつなぐ。いまいち実感がわかないが、イリナは満足そうである。

レンが

「幽霊でも旦那様と2人きりはよくない」

と言っていたが、

「どうせレンには見えないのだし」

と思って、無視した。


 2人で転移すると、山の向こうには大きな湖があった。

イリナの話では

「ハイゼント王国は砂漠の中」

とのことなので、ここは違う。さらに南にはまだ雪を頂いた山脈がある。


 そこで、もう少し南に転移した。すると砂漠の中に出た。イリナに聞くがよくわからないそうである。かなり幼い時に国を離れたようで、覚えているのは砂漠の中で大きな泉があったことぐらいとのこと。これでは探しようがない。


 そこで、近くの町に転移して、市場に行った。そして、商品を1つ買って、ハイゼント王国のことを聞いた。

「ハイゼント王国を知らないか」

「ハイゼント王国?聞かないな」


 その後何人かに聞いて回ったところ、今から200年ぐらい前に滅んだ国ということが分かった。王都はもう少し東にあったと言うことなので、東に転移したが、そこには町はなかった。一面の砂漠が広がっている。


 イリナに聞くがよくわからないという。そうやって、そのあたりを転移で行ったり来たりしていたが、最後はイリナが泣き出してしまった。結局よくわからないとのことであった。


 そのため、一度元のお寺に戻ってみんなで協議することにした。夕方お寺に戻って、

「南に見える山脈を2つ超えると砂漠が広がっていた。そこで、市場で聞いたら王国は今から200年ぐらい前に滅んだとのことであった。『王都はそこからもう少し東に行ったところにあった』というので行ってみたが、辺り一面の砂漠で、泉もなければ人の住む町もなかった」


 そう言うとサラムが

「泉というのはたぶん、カレーズのことではないか」

「カレーズとはなんだ」

「カレーズとは山の雪解け水を運ぶ地下水路のことだ」

「なぜ、地下に水路を作るのだ」

「地上に水路を作れば、町に着くまでに水が蒸発して無くなってしまう。だから地下に水路を作っている。南の砂漠にはよくある施設だ。ただし、その水路を維持するのには膨大な手間がかかる、国が滅んで水路も維持できなくなったのだろう。だから何も無くなったと考えるべきだ」


「国が滅んで、地下水路も維持できなくなって、泉もなくなり、人もいなくなった。そして砂漠だけが広がっている。そんなー」

そう言ってイリナは泣き崩れた。


 これからどうしていいのか、イリナはただ泣くだけであった。

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