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253.東方の調査(サラムの話とプールシャー脱出)

 サラムは商品の仕入れのため3日ほどここに滞在すると言っていた。それが急にここを出るという。すぐに準備をした。その間、問題令嬢の昨日のいきさつとここの領主の家令と対峙して、マエズラ王国国王の親書を見せたことをサラムに話した。


「やはり、あの令嬢は問題令嬢だったのですね。親書を見せたのはよかったと思います。見せなかったらこの宿へ兵士が突入してきたかもしれません」

「だろうな。そうなったら、俺はレンを抑える自信がない。たぶんレンは突入してくる兵士ごとこの宿を破壊したと思う」


「ところで、サラムの急用とは何だ」

「どうも領主に不穏な動きがあるようです。密かに兵を集めているようです」


「領主はどう動くと思う」

「今は思案中だと思います。マエズラ王国の戦力ですと、オプラスカ要塞の駐留軍だけでも、ここの領主の軍より強いでしょう」


「だろうな、オプラスカ要塞の駐留軍には250台の魔道馬車がある。軽騎兵では魔道馬車に勝てない。ここの領主がどれくらいの魔法士を抱えているかだが、1000人以下だったら、領主に勝ち目はない。本気でかかれば、この町だったら3日もあれば灰燼にできるだろう」


「それほどの戦力差があるのですか」

「そうだ、たぶんここの領主は分かっていないだろうが。セープール王国の国王は分かっていると思う。以前俺たちの演習を監視していたみたいだしな」


 宿の支払いをして、すぐに出発した。荷物はすべてマジッグの中。今回はサラムの荷馬車も俺の収納空間ボックスに入れた。とにかく騎乗した人間だけとなった。これだとたとえ領主軍に追撃されてもすぐに逃げられる。


 そのまますぐに町の東門まで来た。すると門番が

「現在この門は閉鎖されている。何人も通ることは出来ない」


「私はマエズラ王国の特使ハル、先日ここの領主家の家令のヤソーから行動の自由は確約を得た。もしその約束をたがえるというなら、私を襲った男の話を蒸し返すことになるのだがよいのか」

「そのような話は聞いていない。私はとにかく『ここを誰も通すな』と命令されている」


「もし、それでマエズラ王国と戦争になったらこの国が亡ぶぞ。それでもいいのか」

「あなたたちを通さなければ戦争になるのか」

「なる。俺が国王にそう言うからな」


 そう言って魔力を込めた。門番は苦しそうに、胸を抑えた。

「どうする。このまま魔力を込め続けるとお前は死ぬぞ」

「わかった。通っていい」


 門の通行許可を得たので、すぐに門を通った。


 その後は全力疾走である。馬はそんなに長くは全力疾走できない。せいぜい10秒か20秒である。距離にすると200mから300mである。


 その後はばてる。300mほど走ったら馬がばてた。門番がこちらを見ている。仕方がないので、替えの馬に乗り換えた。馬は予備を含め1人2から3頭連れてきている。


 そこからはゆっくりペースとなった。早くこのプールシャーから離れたいが、もどかしいものである。


 サラムがやってきて

「ハル様、馬はそんなに長く全力疾走できませんよ。適当な速さで走る方が馬もばてないしかえって早くなりますよ」


 もう面倒になったので収納空間ボックスから魔道馬車と馬運搬車を出した。もう隠しておくわけにはいかない。たぶん門番から領主に連絡が行くと追手が来る。たぶん領主は俺たちを国王との取引材料にする気になったのだと思う。でなければ門を閉ざすはずがない。


 魔道馬車と馬運搬車にしたら早い。領主が東門を閉ざした影響で街道には誰もいない。街道を時速60kmで疾走した。


 途中町や村、都市があるところは迂回して平原を突っ走った。そして夕方には王都の手前まで来た。ほんとうだったら、プールシャーと王都の間は馬で6日ほどの距離である。それを1日である。


 ワンが驚いている。

「これがうわさに聞いた魔道馬車、すごいのね、こんなに早いなんて信じられない」

「そうだ、これが魔道馬車、中で寝ることもできる。トイレもあるので中で用もたせる。必要なら夜も走れる」


 そこからは馬に乗り換えて、ついでにサラムの荷馬車も出して商人の風を装った。

ワンにも

「俺たちは商人サラムとその一行よいな」

と念を押した。


 何か言いたそうだったが魔力で黙らせた。もう問題令嬢の言うことを聞く気にならない。とにかく俺はこの国のごたごたには関与したくないのである。


 夕方門が閉まる前に王都の門を通ることが出来た。


 こうして特使一行はセープール王国の王都に着いたわけである。しかし問題山積である。この先どうなるのやら頭を抱えるハルトであった。

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