252.東方の調査(領主の家令との対峙)
それから、しばらくして、領主の従士が宿にやって来た。
「我々は領主の部下だ。お前たちと一緒にいるワンという女を引き渡してほしい。ワンは犯罪人だ。また、お前たちはワンを捕まえようとした我々の仲間を気絶させた。お前たちも犯罪者だ、一緒に連れて行く」
俺は魔力を込めて従士を見つめた。
そして、
「ここの領主は礼儀をわきまえていないのか。私はマエズラ王国の特使ハル、マエズラ王国の特使に危害を加えようとした男を捕まえた。この男は領主の部下ということは、ここの領主はマエズラ王国を敵に回すということでよいのだな」
これには、やってきた従士たちは息も絶え絶えで、
「あなたがマエズラ王国の特使と言う証拠を見せてほしい」
「私の顔がこの地方の人間の顔に見えるか」
俺がこう言うと、従士たちは俺の顔をまじまじと見て震え出した。
そして、
「かえって相談する」
こう言って帰っていった。
それからしばらくして、領主家の家令という男がやって来た。
「私は、ここの領主に仕える家令のヤソー、あなたがマエズラ王国の特使だという証拠を見せてほしい」
「わかった」
俺はそう言って、マジックバッグの中から国王の親書を取り出した。そして、ヤソーに示した。ヤソーはそれをまじまじと見ていたが、
「私はマエズラ王国の言葉が読めません。これには何と書いてあるのですか」
「分かった。読んでやる。ついでに、セープール王国とカイギン王国の両方の言葉に翻訳して紙に書いてやろう」
「その様なことが出来るのですか」
「これから、セープール王国を通って、セイトウ王国やカイギン王国まで行くというのに、その国の言葉を学ばずして何をするというのだ」
「御見それしました。あなた様は語学に精通しているのですね、さすが特使に選ばれるだけはある」
「それでは親書を読むぞ、
『私はマエズラ王国国王、ハルト・サウスブニューデン、私はこの大陸の西と東の国々が平和でともに栄えることを望んでいる。
そして東西の交易路の安定が図られ交流が促進されることを望んでいる。そのためにも今後とも協調関係を維持したい』
ということだ。今言った言葉をセープール王国とカイギン王国の両方の言葉で書き写すので、後で領主にもっていけ。そして今後俺たちに関わるな」
その後マジックバッグから出した紙に、今言った言葉を2か国語で書き写した。そして、ヤソーに渡した。ヤソーはそれを受け取ると
「領主には話をしておく、あなた方には手を出さない。あなた方が捕まえた男は引き渡してほしい」
「俺たちに手を出さないのなら、事は荒立てない、男は引き渡す」
そう言って、男を引き渡した。
ヤソーが帰ると
「ハレ様は、マエズラ王国の言葉だけでなく、セープール王国とカイギン王国の言葉までわかるのですか。すごい博識なのですね」
こういって、絶世美女2人とワンが感心している。
「ワンお前もカイギン王国の言葉は分かるだろう」
「わかりますが、そんなすらすらとは読めません。まして書くのは疲れます」
「そうなのか、セープール王国の支配層は両方の国の言葉を理解していると思っていたのだが」
「昔はそうだったかもしれませんが、私たちがこの地に定着して70年になります。その間に少しずつ私たちも変わってきているのです」
「そうか」
「それで、どうします」
「たぶん領主は手を出してこないと思う。俺が特使ということは信用してもらったと思う。サラムが戻ってきたらすぐにここを出よう。今日は様子見だと思う。ただ、監視の人間は張り付くだろうな」
「でしょうね。宿からは出られないということですかね」
「そうだな」
「ワンさん。本当に面倒なことをしてくれましたね」
「すいません。レンさん、そして皆さん」
「おとなしくしているのですよ」
「それからどうして、私に名前がコロなのですか」
「コロは犬の名前だ。セープール王国では犬はなんて鳴くのだ」
「ワングですが」
「わかっただろう。マエズラ王国では犬にはよくコロという名前が付けられる。そしてお前の名前は犬の鳴き声のワンだ。だからコロとした。どうだ良い名前だろう」
「ひどい。犬の名前なんて」
次の日早々にサラムが戻ってきた。どうも状況が急転しているようである。すぐにプールシャーを出ることになった。状況の説明は道すがら聞くことになった。




