248.東方の調査(米料理を味わう)
問題令嬢が俺を狙っているとわかってからはレンが片時も俺の側を離れないようになった。アファフとアメルはレンを補佐する形でその後方に控えている。
普通は男が女を守るはずであるが、ここでは俺が守られている。
レンの言葉では
「旦那様は鼻の下が長いので、こうでもしないと女が寄ってくる」
だそうだ。
仕方がない。身から出た錆である。時折サラムが今日の予定や現在の状況を伝えにやって来る。
「なあ、サラム、お前たちは東のカイギン王国から絹を仕入れて、東の市まで持ってくるのだよな。その間片道で1年ぐらいか」
「そんなものですね」
「その間の人件費が絹の価格に上乗せされるのだよな」
「そうですね。ただ、途中で仕入れた商品を途中で販売することもありますので、1年間の経費がすべて上乗せされるわけではありません」
「そうなのか」
「はい、そんなことをしたら絹の値段が高くなりますし、絹以外も扱わないと、絹が売れなかったら破産してしまいます」
「そうだよな」
「それに最近は東の市にはいろいろなものが売られるようになりました。ヤマユリ商会で売っている商品はどれも魅力的で、東の市で仕入れた液体肥料や毛織物や綿織物も人気商品です。
それに最近は液体肥料の散布によってセープール王国の農業生産も大きく伸びました。それでそれらの商品を途中で購入することも多くなりました。そういう意味ではハルト様には感謝しているのですよ」
「なんかうれしいこと言ってくれるね。サラムはさすが商人といったところか」
「おほめに預かり恐縮です」
今日は問題令嬢は襲ってこない。あれからイケメン男性2人には、
「お前たちも遊牧民だろう。女にあしらわれてどうするのだ」
と説教した。
今日はうまく抑えているようである。
それにしても、馬の旅とは暇なものである。果てしなく続く赤茶けた台地と砂の海。川沿いに進んでいるので気温は幾分低いが、それでも砂漠を吹き渡ってくる風は肌に吸い付いてくる。そして、いやおうなしに肌から水分を奪っていく。
砂埃が舞うと目を開けていられない。暇だけど過酷な自然、そして注意を怠ると襲ってくる魔獣、何とも過酷な物である。こんな自然に揉まれていたら人は強くなる。遊牧国家が強いのは自明のことのように思う。
その日は久しぶりに宿に泊まった。サラムの話ではこれからは、北西に向かって流れる川沿いに上流に上っていくので、都市や町や村が連続してあるため、毎日宿に泊まれるそうである。
今日の宿は少し豪勢。しかし、客が多かったようで、あまり多くの部屋が取れなかった。そこで男性は3部屋と女性は1部屋、計4部屋となった。
問題令嬢と同室と言うことでレンとアファフとアメルがいやそうな顔をしている。どうもあの令嬢は貴族ということでプライドが高く、女性にはお高くとまるそうである。そのくせ男性にはこびへつらうところがるようで、同性に嫌われるタイプのようである。
夕食はこの地方で特産の果物がふんだんに使われていた。そして俺が何よりも喜んだのは米料理であった。
正確には米と肉とニンジンをカレー風に煮込んだ炊き込みご飯であった。名前は知らない。名前などどうでもよい。「米、米、米」と叫んで盛んにお代わりをしていた。そして宿屋の調理人に是非この料理の作り方を教えろと迫った。これにはレンやサラムもあきれていた。
次の日朝、レンに前日の問題令嬢のことを聞いてみたら
「私たちを下僕のように扱おうとしたので、魔力で黙らせた」
とのことであった。どうも魔力で、そのまま眠ってもらったようである。
朝、令嬢が俺を見て近寄ってこようとしたので、
「お前を連れて行く条件は、俺たちを詮索しないことだ。あまり俺たちに話しかけるな。それ以上近づくと昨日のレンのように魔力で黙らせるぞ」
これは少し効いたようで、
「ハル様はひどい」
と言って行ってしまった。
その後朝食をとって、また暇な、そしてお尻にの痛い旅の再開である。




