247.東方の調査(問題令嬢)
それから、また半日かけて街道に戻った。もう夕方である。今日はここで野営することになった。令嬢がいるので、魔道馬車は出せない。テントを張って野宿である。
俺はレンと1つのテントで寝ることにした。寝込みを襲われても困るので、テントには結界を張った。
「テントには結界を張ったから、これで安心だ」
「そうですか、それはよかった」
そう言って、レンが俺にすり寄ってきた。
「旦那様、今日は私と二人っきりですね」
「そうだな」
「まるで昔テー公爵領の領都で1つのベッドで寝ていたときのようですね」
「そうだな、あれからずいぶん経ったな」
「懐かしいですね」
今日はいろいろあったので、すぐに寝た。夜中に鼻をつままれたような気がしたが、気のせいであったようだ。なお、護衛は夜通し順番に起きて監視していたそうである。
令嬢は面倒なので、イケメン2人に任せた。アファフとアメルの絶世の美女2人組に任せようとしたら、嫌がられた。「ああいうタイプは嫌い」とのことである。女心とはよくわからない。
また暇な、そしてお尻の痛い旅が続く。
「なあ、サラム、あと王都までどれくらいあるのだ」
「そうですね、オプラスカ要塞を出てから4日ですから、あと4日ほどでプールシャーに着きます。プールシャーはセープール王国の西方で最大の都市です。そこには東の族の諜報員もいます。
しかし、今回は例の令嬢がいるので、諜報員との接触はしません。取引先の商会を訪ねたらすぐに王都アルトイマまで出発します。プールシャーと王都の間は馬で6日ほどになります」
「馬の旅とは時間のかかるものだな。魔道馬車なら1日か2日なのにな」
「魔道馬車が早すぎるのです」
「あんなもので軍隊を作ったら、いつでもどこでもすぐに大軍を送れます。そのうえ魔法攻撃以外はほぼ無敵。たぶんマエズラ王国はこのあたりでは最大の軍事大国ですよ」
「そうか、あまり実感がわかないな。おれは、平和が一番。周りの国を征服しようとは思わない。美味しいものが食べられて、(小声)美女がいれば十分」
「そうですな、ハル様はそんな人でしたな」
するとレンが近くに寄ってきた。
「旦那様はまだ、側室を取る気ですか」
小声で言ったのにしっかり聞こえていたようである。
「成り行きだな。こちらから求めたりはしない。奴隷ハーレム計画は俺の夢だ。それはお前も了承しているだろう」
「了承はしましたが、納得はしていません」
「了承と納得は同じ意味だと思うが違うのか」
「違います。乙女心です」
「乙女心、秋の空か」
「どういう意味ですか」
「移り変わりやすいということだ」
「旦那様は物知りですね」
「そうだな」
そんな会話をしていると、問題令嬢がやって来た。さすが遊牧民の一族。馬を扱うのは俺達よりずっとうまい。さっと、俺とレンの間に割り込んできた。令嬢を任せたはずのイケメン2人組はどうしたと思ったら、どうも軽くあしらわれたようである。
「ハル様はこちらの国の方ではありませんよね」
「西の方の生まれだ。それ以上は言えない」
「そうですか、言ってくれないのですね」
「そうだな、言えない」
「私、盗賊に捕まっていたでしょう。もう家族は私を見捨てるかもしれません。昨日それを思ったら、もう寝れなくて。だから寝不足なんです」
「それを俺に言われても、俺はどうにもできない。後は家族と十分相談することだな」
すると、アファフとアメルの絶世の美女2人組がさっと、俺と問題令嬢の間に割って入ってきた。さすが東の族、遊牧民は馬を扱うのがうまい。
「だまされてはいけませんよ。ハル様、遊牧民は一族が家族だから家に帰れば見捨てられることはありません。この女はハル様の気を引こうとしているのですよ」
すると
「チェ」
と舌打ちする声がする。
俺は言語理解のスキルがあるので、令嬢の言葉がすべてわかる。レンやアファフとアメルが聞き漏らしたような独り言でもすべてわかる。
この令嬢も俺を狙っているようである。




