241.東方の調査(月夜の酒宴)
今日も砂漠の旅である。果てしなく続く岩石砂漠、申し訳程度に生えた草がとこどころに見える。一面赤茶けた台地が広がっている。そこを真っ二つ割って街道が続いている。
たまに商隊に出会う。サラムがその商隊と声を交わしている。情報交換をしているようである。
「サラム、何を話していたんだ」
「この先の状況ですかね。山賊や野党がいると問題ですし、もしこの先で戦争でも起こっていると我々は引き返すことも考えないといきません。
それは向こうの商人も同じようです。最もオプラスカ要塞から北はカンテリク国の領域なので、カンテリク族は交易を重視していますから、定期的に街道を警備しています。
最近はカンテリク国も魔道馬車で警邏しているようなので街道の安全は以前にも増して安全になったようです。それで、この街道を通る商人も増えたようです」
「そうなのか、俺はカンテリク国から『魔道馬車を供与してほしい』と言われたので、500台ほど融通しただけなのだが。街道の警邏に使っていたんだ。確かに馬だと逃げられるけど、魔道馬車だったら馬でも逃げられない」
「そうです。だからオプラスカ要塞から北は山賊や野党はいません。非常に安全です。我々商人もオプラスカ要塞を越えるとほっとします。もう家に帰ったようなものです。そういう意味ではハルト様には感謝しています」
「そうか喜んでもらえるならよかった」
「それにしても暇だな。このまま1日馬に揺られているのか」
「それがキャラバンですから。馬に乗っているので寝ることもできませんし、警戒を怠れば山賊や野党、夜になれば狼も襲ってきます」
「でも昨日の夜は狼なんて出なかったぞ」
「それはオプラスカ要塞が近かったことと、それに奥方が魔力を放出していましたから、魔物も強大な魔力には近寄ってきません」
どうも俺が露天風呂で絶世の美女2人に声をかけられたのはレンにばれていたようだ。でもその結果レンの魔力におびえて狼が襲ってこなかったのだから、これはこれでよかったのかもしれない。自分を納得させるハルトであった。
暇な、そしてお尻の痛い旅は続く。そして夕方になった。
今日も野営である。俺の収納空間ボックスから魔道馬車を出して、適当に並べた。そしてその真ん中に露天風呂を作った。今日は満月、そこで俺はレンに声をかけた
「なあレン」
「何ですか、旦那様」
「ここで、俺と月見酒をしないか」
「旦那様と2人で月見酒ですか」
「そうだ、月見酒だ」
「わかった」
とたんにレンの機嫌が直った。そして、酒とグラスを持ってきた。俺は露天風呂の中にテーブルを作った。テーブルに酒とグラスを置いて、さらに俺の収納空間ボックスからとっておきの一品ブランディーを出した。ついでに各種カクテルも出した。
「レンはどの酒を飲む」
「わたしですか私は旦那様と同じ物が飲みたいです」
「そうかそれじゃ順番に飲み比べするか」
「はい」
ということで最初は軽くワインから
「これはフラ王国の俺の領地のアルジュル地方で作られたとっておきのワインだ。このワインはフラ王国でも高級品の評価をもらっている。なかなか手に入らない逸品だ。先ずはこれで乾杯といこう」
そういってグラスにワインを注いで
「旅の安全と今後の成果に乾杯」
「旦那様の浮気癖が治りますように乾杯」
なんか今、不穏な言葉が聞こえたが、これは無視することにした。これをまともに取り合っていると後で俺の行動が制約される。これは酔ったふりをするに限る。
「このワインはうまいな。さすが最高級品。つぎはお待ちかねブランディーといきますか。
このブランディーは同じく俺の領地アルジュル地方の俺の直営工場で作っている物だ。かなりの人気だそうで工場長の話だと『注文に生産が追い付かない』そうだ。
以前アンナに飲ませたら。アンナがすぐに陥落した。その後も飲ませろとうるさく言うので、工場長にはアンナの注文を優先するように言ってある。
俺が思うに北大陸では最高の酒だ。少なくとも俺はそう思っている。アンナも同じ意見だそうだ。特にアンナは酒飲みだから、いろいろな酒を取り寄せて飲んでいる。酒については詳しい。そのアンナが言うのだから間違いない」
「そんなに美味しいお酒なんですか。私はお酒のことはあんまりわかりません。普段はお酒を飲まないので」
「そうだな、レンはあまりお酒を飲まないな」
「はい。でも旦那様と一緒に飲むお酒は最高です」
そうして月夜の酒宴は過ぎていった。




