237.東方の調査(東の族の族長の話)
俺とレンは家族との打ち合わせ後、東の市まで転移した。そこで、族長に今回の東方調査のことを話した。
族長からは
「ハルト様の言われることももっともだと思う。東の族としても遊牧民の動向には目を光らせている。東方の国々にはスパイも送り込んでいる。
まず、カンテリク国だが、ここの国王からは東方から配下にない遊牧民が来た時はすぐに連絡が来るようになっている。もし、カンテリク国が襲われるような場合は、この東の市から援軍を出す手はずになっている。
ハルト様が馬運搬車を増やしてくれたおかげで、カンテリク国まで4日もあれば援軍を出せるようになった。これにはカンテルク国王からも感謝の言葉をもらっている。行くのであれば、カンテリク国にもよって東方の状況を聞いたほうがいいだろう。
次にセープール王国だが、ここにもスパイを潜入させている。また、東の市に来る商人の中には我々の手足となって活動している商人もいる。だから、東方へ行くなら、我々のスパイとなっている商人の一行として行った方がいい。
正直言ってハルト様とレン様は、この地域の人間とは顔立ちが似ていないので、すぐに異邦人としてばれてしまう。むしろ商人の一行として西方より来たと言った方が自然である。
護衛は東の族から10人付ける。レン様も行かれるようなので女性も2人付ける。レン様、そう睨まないでください。女性の護衛は容姿の特に悪い者をつけますので。
セープール王国では我々のスパイの手引きで行動される方がいい。商人はスパイのこともわかっているので、彼らの案内で行動すれば、すんなり調査が出来ると思う。
次にセイトウ王国だが、ここにもスパイを潜入させているので、やり方はセープール王国と同様にしてもらえればいい。
最後に、カイギン王国だが、ここにはスパイは送り込んでいないので、調査は難航すると思う。若し今後スパイが必要なら、今回そのスパイ要員を同行させるが。
それから、ハルト様が気にしている草原の遊牧民の状況だが、彼らの集合離散は、日常茶飯事であり、そのまま離散しているのか、あるとき突然糾合されるのか、全くといって見当がつかない。
スパイを送り込もうにも、スパイごと殺される恐れがあり、若し送り込んだスパイが反対部族に殺されると、こちらも敵認定される恐れがあり、現状では恐ろしくてスパイを送り込むことはできない。あくまでも周りの状況と取引している商人から聞くだけである」
さすが、元遊牧国家の国王である。周辺の遊牧民の状況には絶えず情報の収集に努めていたようである。それに族長も東方の草原の遊牧民については危惧しているようであった。
「族長が、絶えず東方の国々や遊牧民の状況を調べてもらっていることに感謝する。東の族はもっと脳筋なのかと思っていたが、意外と繊細なところもあるのだな」
「これぐらいのことはどこでもしていることです。遊牧民にとって情報は神様です。若し有力な部族が出て来た時はそれに従うのか敵対するのかによって一族の命運が決まる。敵対した場合は一族皆殺しにあう場合もある。
ハルト様のように敵対した我々東の族を罰も与えずにそのまま許すなどということはありません」
「そうなのか、俺たちの国では、降伏した場合は賠償金を取って解放するのがしきたりだが、ここでは違うのか」
「それは、食うのに困らない豊かな地方のやり方では。ここ草原では勝った者が生き残る。負けたものは滅びる。それが掟です」
「草原の掟か厳しいな。それで、これからどうすればいいのですか。段取りはしてくれるのですか」
「その前にカイギン王国にもスパイを配置しますか」
「そうだな、そうしてくれ、かの国の状況も今後は継続して知りたい」
「わかりました。それでは東へ向かう商人と張り付ける護衛、それにカイギン王国に配置するスパイの準備ができたらお知らせします。それまでこの東の市でお過ごしください」
「レン様、ここ東の市の王宮はマエズラ王国の王宮ですし、レン様はハルト様の正妻、側室に会って睨みを効かすのもいいでしょう」
「わかったわ。側室に誰が正妻かを教えてあげるわ」
このようにして東の族の族長との話は終わった。非常に有意義な会議であった。




