227.偽りのモンタフアルコ要塞
あれから1か月以上たってもう11月の終わりである。王国歴353年11月である。食料はないはずなのに、いまだに敵軍は俺たちの立てこもる砦の包囲を続けている。時々斥候を放って、カウトサラゴ市の状況を確認させているが、市内は食料の強制調達でひどい有様だそうだ。
食べられなくなった人間が通りで倒れていて、それを巡回の兵士が回収していくそうだ。これに対して、この地方を預かる領主がランド王国の援軍は何もせずに食料を奪っていくだけだと言っているそうだ。ずいぶん雰囲気は悪くなっているようである。
そんなある日、敵軍の包囲が薄くなっているのが分かった。どうも敵軍は砦を包囲する兵の一部を割いて、我辺境伯領へ食料の調達に向かわせたようである。たぶん向かうとすれば、バルマトル市だと思う。
もう敵軍はこの砦の攻略はあきらめたと判断した俺は、バルマトル市に転移して、この地方の防御態勢を整えることにした。こちらを預かる我辺境伯家の領軍の司令官と市長を交えて今後の作戦を協議した。
「今回の戦争が始まってから、ハルト様が我領以外での液体肥料の出荷を止めたため、辺境伯領以外の領地の農業生産が激減したようです。食べられなくなって、我領へ逃げ込んでくる難民が最近増えてきました。とくにランド王国軍が駐留しているカウトサラゴ市では餓死者も出ているそうです。幸いここ辺境伯領での農業生産は例年通りです。食料は十分あります」
「今、我軍はカウトサラゴ市近郊の丘に砦を作ってそこに籠城している。この砦を俺はバルコウブステ砦と名付けた。我軍は約2万人、対して砦を包囲する敵軍は約6万人、こちらとしては動けない状況にある。しかし、最近敵軍の包囲が薄くなったように思う。若し、敵軍がこのバルマトル市に軍を向けたのなら、早急に対処する必要がある」
「カウトサラゴ市から、バルマトル市まで約7日間、敵軍はどのルートを通ってくると思う」
「わかりませんな、最短だと北側を通るコースですが、そこにはいくつも分岐する道があて、正直って、どこと言われると判断が付きません」
「そこでだ、もし、我軍が途中のモンタフアルコ要塞を攻略して軍を駐留させたらどうなる」
「たぶんそこを落とさない限り前へは進めなくなります。そこを素通りすれば背後から襲われます」
「だろう。明日モンタフアルコ要塞を攻める」
次の日の早朝、3000人の辺境伯軍が150台の魔道馬車に乗車して、バルマトル市を出発した。魔道馬車は早い、途中の町は素通り、途中領地境の敵の検問所は俺の爆裂魔法で破壊した。とにかく、止まらずに、ただ走るだけ。2時間ぐらいでモンタフアルコ要塞に到着した。
すぐに要塞を包囲して、まずは降伏勧告
「要塞をすんなり明け渡せば、命は保証する」
すぐに降伏してきた。そう、驚くぐらいにすぐにである。あっけに取られた。
その後要塞に入ったのだが
「小さい」
それが第1印象。この要塞。もっと大きいのかと思った。これでは3000人も兵が駐留できない。降伏して来た兵も100人ほど、それではすぐに降伏したはずだとかえって納得してしまった。
しかし、この要塞を落としたのは、間違いない事実。もう引き返せない。たぶん敵軍はここを通る。だからここで敵軍を迎え撃たないといけない。敵軍の規模は不明だが、俺の予想ではランド王国軍3万人だと思う。
こうなったら破れかぶれ、このあたりの丘に手当たり次第に柵を設置していった。そして、そこに竿を建てて辺境伯軍の旗を立てていった。これだけの陣地すべてに魔道馬車を配置できないが、これで数はごまかせることができる。旗は500ほど設置した。最後は柵もなしに竿を建てて旗だけを設置した。




