223.カウトサラゴ市急襲
バルコウブステ砦に来たのが4月、砦を作って、快適な生活を始めたのが6月、そして9月になった。今もう秋である。領軍の兵士の中には、「国に帰って農作物の収穫をしたい」と言っている兵士もいる。これを言っているのは主にリチ族である。
マエズラ族はそんなことは言わない。彼らは基本怠惰である。暇なら寝る。そして、食えなくなったら俺が食わしてくれると思っている。食料がなければ近くの国に略奪に行くだけである。そのあたりの意識改革はしたはずだが、性根は変わっていないようである。もう少し、リチ族みたいに「農作物の刈り取りをしたい」とか言ってくれるといいのだがそんな声は聞こえてこない。
東の族も脳筋であり、彼らは基本馬さえいればいいのである。バルコウブステ砦の城壁の中に広い土地を確保して、そこで、馬を放し飼いにできるようにしたのが悪かった。彼らはそこで一日中馬を走らせているので、国に帰って何とかは言わない。
そのような怠惰な時間を過ごしているとき、斥候から、情報が届けられた。
「どうも、カウトサラゴ市の領軍の数がかなり少なくなっている。たぶん農作物の収穫とその後の畑起こしと作付けのため、領地に帰ったのではないかと考えられる」
とのことである。
この情報をもとに、各部隊の指揮官を集めて、今後の展開を協議した。
「カウトサラゴ市を守る兵が少なくなっているのなら、とりあえず、偵察の意味で一度襲撃してみてはどうか」
「調べてみる価値はありますね」
「では以前の軍事演習の時のようにカタパルトで城壁を壊して、その後魔道馬車で攻撃して、その後軽騎兵が突入ですか。それだともう威力偵察じゃなくなるのではないですか」
「それに、カタパルトなんか持っていったら、カウトサラゴ市に近付く前にカタパルトが壊されてしまうのではないですか」
「マジックバッグにはカタパルトは入りませんよね」
「カタパルトをいくつかのパーツに分解したらいいのでは」
「カタパルトは3つぐらいに分解したらマジックバッグに入りますよね」
こんなの意見が出て、その意見を集約したら次の結論に達した。
「それでは、夜にカタパルトを3つに分解してマジックバッグに入れて持って行く。そして、城壁の前で組み立てて、攻撃を開始する。城壁が壊れ始めたら、魔道馬車で攻撃、そのあと軽騎兵が突入。しかし、途中で、敵が打って出てきたら、カタパルトを破壊して撤退ということでいいですか」
「異議なし」
ということで、今日はカウトサラゴ市を攻撃する日となった。準備したカタパルトは3つ、事前に3つのマジックバッグに入れてある。そのまま、夜の闇に紛れて、進むことにしたが、たぶんカウトサラゴ市の近くまで行くと敵に気づかれるような気がする。どこまでいけるかは運次第である。
結局、市から5kmぐらいのところで、敵に気づかれた。そうしたら、敵が打って出てきた。もうマジックバッグからカタパルトを出してなんで流暢なことはできない。
幸いこちらは魔道馬車と軽騎兵、すぐに全軍で逃げだした。なんせ、事前情報では、敵はうちの3倍、まともにやり合ったらどれだけの被害が出るかわからない。とにかくに逃げた。たぶん砦まで逃げれば追ってこないだろうと思った。
砦まで全軍が逃げ込んだら、なぜか敵が砦の周囲に集まってくる。中で馬を放し飼いにする必要から、広さだけは超一流のこの砦を包囲する気のようである。
朝までに、砦は完全に包囲された。敵軍の総数約6万人、さすが、圧巻である。とりあえず、敵がカタパルトを用意してくるまでは静観することにした。どうも敵軍が少なくなっているというのは偽情報だったみたいである。我軍を砦からおびき出す偽情報だったように思う。
夜から出かけて行ったので眠い。軍議は午後にしてとにかく寝た。




