220.バルデフロイス山中の戦い
俺たちが撤退したブルドボス市には次の日に、ポルイスト王国軍6万人が入ったようである。ブルドボス市には食料がほとんどない。我軍が大量に買いあさったからである。強制徴収ではない、金は払った。
たぶん、バシャンシア市を出てきたのも、食べるものが少なくなってきたからだと思う。何度も食糧の調達をすれば誰でも食料を隠してしまう。そこで、我軍を打ち破り意気揚々とブルドボス市に来たのだが、ブルドボス市には食料がほとんどない。
我軍はシグローニョ市に向けて逃走中。昨日の戦闘では早々に敗退したので、我軍にはほとんど被害を与えていないのは分かっているはずである。特に主力の魔道馬車が、無傷なのはよくわかっているはずである。だから、ポルイスト王国軍に出来ることは早々に逃走中の我軍を追って、掃討戦に移行して、我軍を殲滅する。多分敵の将軍ならそう考えるだろう。
その後、斥候からの情報ではブルドボス市に入ったその日にはブルドボス市を出て、我軍の追撃を始めたようである。そこが俺の狙いである。騎士は馬なので早い。歩兵と魔法士は徒歩なので遅い。特に魔法士は体力がないので、歩兵よりも遅れる。追撃戦に移行すれば、移動速度から騎士、歩兵、魔法士と自然と選別が出来てしまう。
そして、彼らがバルデフロイス山中に入った時が彼らの地獄である。シグローニョ市へ逃走中の俺たちは敵の追撃の速度に合わせるように、バルデフロイス山中に入る前の平原で、一旦野営した。あまり距離が空くと追撃してこないかもしれない。難しいところである。我軍が通った後には魔道馬車の轍の跡をわざとつけてきた。また、馬の蹄の跡も残してきた。だから我軍がどこを通ったかは敵軍には丸わかりだと思う。
次の日の朝には我軍はバルデフロイス山中に入った。そして、魔道馬車の轍の跡と馬の蹄の跡を残すため、一旦山中を抜けた。そして、その後マエズラ族と東の族にはこの山中で活動してもらうべく、再度山中に入ってもらった。そして、魔道馬車は山中を抜けたところで待機である。これで準備は整った。さて、敵はどう動く。
我軍を追撃してきたポルイスト王国軍は、山中に入る前に我軍が野営したと同じところで野営し始めた。これにはがっくりである。早く山中に入ってくれればいいものをと思ってしまう。仕方がない、敵軍の将軍も騎士、歩兵、魔法士と選別が出来るのはよくないと判断したようである。
次の日朝から敵軍はバルデフロイス山中の街道に入ってきた。かなり警戒しているようで、斥候を何人も事前にはなっている。斥候に見つかると厄介なので、マエズラ族と東の族には山の奥深くに隠れるように指示した。
すると、街道に俺たちの兵がいないことを確認してから、先頭に歩兵その後ろを騎士、その後を多分魔法士だと思う兵が一団となって山中の街道に入ってきた。その後を、かなりの兵が続いている。さすがに6万人というとこの山中に入りきらないではと思ってしまう。たぶんの山の入り口付近にはまだかなりの兵が待機していると思う。
敵軍の先頭の集団が山中を抜けて平野の中に出るところを、街道の出口を取り囲んだ魔道馬車で攻撃した。今回は魔道馬車に爆裂弾の発射装置を付けた。これで射程は500mである。魔法士の攻撃は届かない。これで順番に前に出てくる兵を攻撃していった。そうしたら、もう兵は前に出てこなくなった。ちょっとやり過ぎたみたいだ。
前に出て来ないのなら、後ろからつついてみることにした。魔道馬車1000台を北側の間道を大きく迂回して敵軍の背後に回り、そこから攻撃するように指示した。この魔道馬車にも爆裂弾の発射装置を付けた。
昼過ぎには、間道を迂回した魔道馬車が敵軍の背後を攻撃したようである。このまま、敵軍をひたすら殲滅していく。これが俺の作戦。注意するは敵魔法士の攻撃だけ。魔道馬車には敵の魔法士と思われる人間が攻撃してきたら引くように指示してある。
魔法士が集団でいると、魔道馬車では対抗できないが、例えば、こちらの陣地に深く入り込んで突出してしまえば、例えば3台の魔道馬車が時速60kmで突撃してきたら、1台には攻撃魔法をあてられても、後の2台で魔法士を跳ね飛ばすことができる。まして今回は爆裂弾の発射装置をつけたため、射程が500mと長い、とても魔法士だけでは対応できない。
しばらくすると、敵軍は街道にバリケードを設置して、魔道馬車が侵入してこれないようにした。でもこれじゃ敵軍も街道を進めない。敵軍の食糧事情は俺がブルドボス市の食料を買い占めたため、あまり余裕がないはずである。たぶん3日もすれば食料が尽きて降伏して来るかな、気長に敵が降伏するのを待つことにした。
結局それから、1週間して敵は降伏した。そこでハタと困った。こちらも6万人もの捕虜を食わせるだけの食料は持ってきていない。そこで、身代金の取れそうな貴族だけ拘束して、残りの徴用された農民の兵士はそのまま解放した。
東の族の族長が
「なぜ奴隷にしないのだ」
と聞いたが、
「彼らを食わせる食料がない」
と言うと
「仕方がないな」
と諦めてくれた。
その後、俺たちは再度、ブルドボス市を再占領した。
そうしたら市長から
「食料を分けてほしい」
と言われたが
「余裕がない」
と断った。
どうもブルドボス市を解放したポルイスト王国軍に残っていた食料を根こそぎ奪われたようである。




