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219.ビシャレルマ平原会戦2

 ポルイスト王国軍とハルトの領軍は王国歴353年4月の初めにビシャレルマ平原で相対した。ポルイスト王国軍約6万人、内訳は騎士8000人、歩兵と魔法士は混在しているようでよくわからない。


 対する我軍は魔道馬車2800台乗員15000人(マエズラ族5000人、リチ族7000人、サウスブニューデン侯爵領3000人)、軽騎兵15000人(東の族)の計3万人、敵軍の半数である。


なお、カタパルト操作兵3000人(イーストブルガシェル国)はブルドボス市で後方待機である。偽装撤退時にはブルドボス市の駐留軍とともにシグローニョ市方面へ撤退する予定である。


 ここビシャレルマ平原は今日は霧が立ち込めている。昨日は晴れて見渡す限りの畑作地帯が続いていたのだが、今日は視界が悪い。朝霧の中に陽がさすと、薄明りの中で夢の中の世界に来たような感覚にとらわれる。霧は主に地表近くの標高の低いところに立ち込めているようである。


 遠くには少し高いところにこんもりと森のように見えるのは小高い丘でもあるのだろうか。あの丘に城でもあれば、前世だと一大観光地になるのにと割としょうもないことを考えている。地表近くだと遠くは見えないので、近くを見ると朝日を浴びて冬小麦の緑が眩しい。


 今日は負ける戦いと思うとどうしても戦闘に身が入らない。周りの美しい風景に見入ってしまう。こんな畑作地帯で、戦闘が行われる。農作物を台無しにされたら、さぞかし農民は嘆くだろうな。元農民の俺としてはなんだかこの地方の農家に悪いような気がする。


 大敗するわけにもいかないので、戦闘に集中すべく敵の配置を観察する。敵は魔法士混在の歩兵を15000人ずつ左翼、中央、右翼と均等の分けた形で配置している。その後ろに左翼と右翼に騎士を3000人ずつ配置している。敵本陣は中央でその左右には遊撃隊としての騎士2000人と歩兵3000人を配置している。また、本陣の背後には歩兵4000人を配置している。魔法士は歩兵に混在していてよくわからない。敵の戦力はこれだけのようである。どこかに兵を潜ませて不意打ちをかけるといった戦法はないようである。


 これに対して、我軍の配置は魔道馬車を600台ずつ左翼、中央、右翼に配置した。その後ろに軽騎兵を5000人ずつ配置した。残り魔道馬車1000台は遊撃隊として俺の背後に置いた。あまり魔道馬車を前面に多く配置すると魔道馬車の間隔が狭くなりすぎて、魔道馬車の間をすり抜けて軽騎兵が突撃できなくなる。遊撃の魔道馬車1000台は、戦闘開始直後、大きく迂回して敵本陣の背後を突く予定である。


 いくら負け戦の偽装撤退といっても、敵に少しぐらいは損害を与えないと偽装がばれてしまう。これが昨日の軍議の結果である。それで、軽騎兵も歩兵と重騎士への弓矢と魔法攻撃を行う。また、魔道馬車も遊撃を多くして敵本陣への魔法攻撃を行う。そして、軽騎兵が撤退を始めるに合わせて、魔道馬車も撤退する。そうなると、前面に配置した魔道馬車1800台は何もすることが無くなるで、ただの案山子となる。それはちょっともったいないのではという話になって、軽騎兵が突撃を始めたら、敵の側面に回り込んだらという話になった。


 軽騎兵の指揮は東の族の長に任せた。俺の仕事は戦闘が始まったら、遊撃隊を敵本陣の背後に回して攻撃させることと、前面の魔道馬車を敵側面に回して攻撃をさせること。そして、軽騎兵が撤退を始めたら、すべての魔道馬車に撤退を命じること。こうなった。


 戦闘開始は朝からと思ったら、まだ霧が晴れない。見えない敵に突っ込んでいくというのは、いくら脳筋の東の族でもしないようでしばらく様子を見ている。この間俺は前面の魔道馬車に敵側面に回り込むように指示した。また、遊撃の魔道馬車にも敵の背後に回り込むように指示した。


2800台の魔道馬車が一斉に動き出すと、かなり大きな音がした。これは敵にかなりの動揺を与えたようである。霧で相手の姿は見えずらいが索敵で探ると敵の大まかな位置は変わっていない。しかし、大きな音に戸惑う兵士の感覚が伝わってくる。


 そうしたら、東の族が一斉に突っ込んでいった。やっぱり彼らは脳筋である。仕方がないので、側面の魔道馬車にも攻撃命令を出した。側面の魔道馬車にはマエズラ族が乗る魔道馬車を多く配置した。彼らも脳筋である。見えない敵に向かってやみくもに弓矢や魔法で攻撃をしている。背後に回した魔道馬車はまだ敵の背後に回り込んでいない。連携もあったもんじゃない。彼ら脳筋種族をどう抑えるか、今後の課題である。まあいいかどうせ今日は負け戦。そう思うことにした。


 霧が晴れ始めると、今まで前面にいた魔道馬車がいなくて、軽騎兵が突っ込んでくる。これには、ポルイスト王国軍もあわてたようだが、とにかくポルイスト王国軍は数が多い。余裕を取り戻すとすぐに歩兵が引いて重騎士が突撃してきた。


そこで、軽騎兵と重騎士の戦闘が行われたが、軽騎兵の弓矢は重騎士の鎧で跳ね返される。すると、軽騎兵は重騎士を避けて残った歩兵に狙いを定め、歩兵に回り込もうとした。そうしたら歩兵の中に紛れ込んだ魔法士から魔法攻撃が放たれた。なんか混戦模様である。


側面に回り込んだ魔道馬車からも魔法攻撃がされているが、こちらは敵魔法士によって防がれているようで、魔道馬車もあまり近くに近付けない。


 そのうちやっと背後に回り込ませた魔道馬車の攻撃も始まったようであるが、こちらは本陣ということで魔法士を多く配置していたようで、一斉に魔法攻撃が行われた。これには俺もあわてた。虎の子の魔道馬車を失うわけにはいかない。俺は背後に回した魔道馬車にすぐに撤退を命じた。


 しばらくすると、軽騎兵が兵を引き撤退を始めたので、俺は側面に回した魔道馬車にも撤退を命じた。それからの行動は早かった。魔道馬車は早い。最高速度時速100kmである。すぐに軽騎兵を追い越して、一斉にブルドボス市に向かった。


 昼までにはすべての魔道馬車がブルドボス市にたどりついた。戦闘で失なわれた魔道馬車はなかったようである。よかった。まあ、ほとんど戦闘らしい戦闘をしていない。霧の中からやみくもに弓矢や魔法攻撃を放って、すぐに撤退したのだから被害がないのは当然である。


 その後、軽騎兵も戻ってきた。しかしこちらは被害がないというわけにはいかなかったようである。死んだ兵士や傷ついた兵士もいるようである。戦争だから仕方がない。ぐずぐずしているわけにはいかないので、その後、すぐに荷物をまとめて、夕方までには全軍ブルドボス市を出て、シグローニョ市方面へ撤退した。

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