218.ビシャレルマ平原会戦1
俺がマリナンダ町でポルイスト王国の軍を打ち破ってから2か月がたった。その間幾つもの都市を攻略した。普通だったらポルイスト王国の中央の動きがあっても不思議ではない。増援を送るとか、期待薄だけど講和の申し込みがあるとか。何か動きがあるはずだが、いまだに何もない。
まあ、増援を送るにしても、もう3月。これから農作業が始まるという時期である。この時期では農民の徴用は難しい。ひょっとして、ポルイスト王国の首脳は、農繁期になってきたので、俺が軍を引くと思っているのだろうか。重ねて言うが、俺の軍は常用である。すべて通年雇用の従士である。農閑期に農民を徴用しているわけではないのである。だからいつでも戦争が出来る。これが俺の強みであるが、膨大な金がかかる。その金を俺は産業の育成で編み出してきた。
そんなことを考えていたら、ポルイスト王国西部の貴族軍がバシャンシア市に集結しているとの情報が入ってきた。王国南部の貴族軍や王家軍もこれに糾合するようである。最終的に軍の数がどれくらいになるのかわからないが、聞こえてくる噂ではもう5万人ぐらい集まっているそうである。ううん。これ嘘だな。そう思う。そんなに集まったら、食料の調達だけでも大変である。
俺の軍でも食料の調達は大変である。現在ポルイスト王国にいる領軍はサントゥルバオ市の駐留軍を含めると4万人である。今回戦争をするに当たってマエズラ王国の食糧庫旧リチ王国で生産された農産物を俺の収納空間ボックスに入れて大量に持ってきているので、食料については今のところ問題ないが、通常だったら、食料の確保で後方支援の担当官は頭を悩ますところである。
若し占領した土地から強制的に徴収しようものなら、現地の住民の反感を招き、反乱を誘発しかねない。しかし、今のところ、占領した土地からの食料の強制調達は行っていない。また、俺が占領した都市での略奪を禁止しているので、占領地域は至って平穏である。
ただ問題がないわけではない。我軍の場合東の族の軽騎兵は1人の騎士に対して2から3頭の馬を抱えている。彼らの飼い葉と水が膨大なのである。軽騎兵15000人、馬が約4万頭、飼い葉が膨大な量になる。占領地域でちょっと目を離すと畑の冬小麦を食べてしまう。
もし、仮にバシャンシア市に集結した軍隊の規模が5万人として、それに必要な食料が1人1日1kgとすると1日5万kgすなわち、1日50tの食料が必要である。1か月だと1500tである。小麦の価格をt当たり金貨20枚(1kgで小銀貨2枚→10kgで銀貨2枚→100kgで金貨2枚)とすると、1か月で金貨3万枚である。たぶん逃げ出す貴族もいるのではないか。
ということで、俺は、ブルドボス市でしばらく敵軍の動きを見ることにした。敵軍は集まれば集まるほど内部に爆弾をかかえることになる。そのうちしびれを切らして我軍に決戦を挑んでくると思う。そうなったらしめたものである。最も我軍に有利な場所まで撤退して、そこで戦いを受ければいい。
俺は、領軍の首脳を集めて、俺の作戦を伝えた。かん口令を敷くために魔法契約で縛った。
「今回の作戦を伝える。今敵軍はバシャンシア市に軍の集結を図っている。たぶん敵軍は軍の規模が5万人を越えた段階で我軍に決戦を挑んでくると思う。たぶん1か月以内にそうなると思う。
そうしたら我軍もそれにこたえる形で、ここブルドボス市から打って出る。決戦の地はバシャンシア市とブルドボス市の中間のビシャレルマ平原となると思う。
多分敵は我軍の魔道馬車対策として魔法士を我軍に分からないように配置すると思う。そうなると魔道馬車での戦闘は被害が大きくなる。
軽騎兵で戦うと敵は重騎士を出してくると思う。軽騎兵は重騎士に勝てない。そこで、ビシャレルマ平原では負けたことにして、撤退する。
これはあくまで偽装撤退である。撤退が偽装と気づかれないためにも撤退のタイミングは難しい。これについては各指揮官の技量に任せる。
それから、ブルドボス市の駐留軍はビシャレルマ平原で我軍が負けたという知らせを受けたら、直ちに全軍をまとめてシグローニョ市方面へ撤退してほしい。
それから、ここブルドボス市には食料をほとんど置いておきたくないので、明日から市内の商人を回って食料の大量購入を行ってほしい。購入した食料はすべてマジックバッグに収納して撤退時にもってきてほしい。
ブルドボス市を放棄した我軍はシグローニョ市に向かう途中のバルデフロイス山中で罠を張る。ビシャレルマ平原からここまでは約2日間の距離であるが、あくまでもこれは偽装撤退である。負けて逃げるのではないことを肝に銘じてほしい。
バルデフロイス山中はブルドボス市からシグローニョ市に向かう途中の山岳地帯で道が狭いため、追撃するポルイスト軍の隊列が長くなる。そこを森に潜んだマエズラ族が攻撃する。また、この山岳地帯はあまり急でないので、これぐらいなら東の族の軽騎兵なら山中を動けると思うので、軽騎兵にも攻撃に参加してもらう。それから魔道馬車は敵がこの山中に入ったら北側を大きく迂回して敵の最後尾に回り、そこから攻撃してほしい。
作戦は以上である」
それから、1か月後、ポルイスト王国軍はバシャンシア市を出てブルドボス市に向かった。ハルトの領軍もブルドボス市を出てバシャンシア市に向かった。そして両者は途中のビシャレルマ平原で相対した。




