199.帝国観光2
次に行ったのはバイエルベルク市である。ここはバイエルベルク公爵家の領都であるが先のブルガシェル族との戦争でこの公爵家が所有する銀山の利益の半分が、ブルガシェル族の所有地なったことから、都市も寂れたかなと思ったのだが、市内は相変わらずにぎわっているようで行きかう商人も多くいる。
宿は市内の中心部に位置する、いかにもお貴族様専用といった感じの宿にした。
宿屋の主人に
「公爵家の所有する銀山の利益が半分になったと聞いたが、景気はどうだ」
と聞くと
「その利益の減った分は南部貴族全体でもつという話になったので、市内の賑わいはあまり変わらない。むしろ帝国が周辺国と講和したので、周辺国の商人もやってきて、にぎやかになったぐらいだ」
とのことで、影響は限定的なようだ。貴族の利益が減っただけとのようである。
「この町で見に行くとしたらどこがいい」
と聞くと
「マンネリ広場の時計台が有名だ。『正午の鐘の音に合わせてお祈りをすると願いがなかう』と言われている。ほんとかどうかわからないが、『カップルで行くと、必ず結ばれる』と言われている」
これを聞いたレンが食いついてきた。
「明日正午に絶対に行くのですよ。旦那様」
と言い出した。
「もう結婚しているじゃないか」
と言うと、
「来世でも結婚する」
と言い出した。
「来世まで縛られては大変だ」と思い、宿の主人に
「もっと他にいい所はないか」
と聞くと、返事をしてくれない。
見るとレンが宿の主人に魔力を放出している。
周りを見るとさっきまでいたアンナやリタやほかの妻たちはいない。
しかたがないので、
「明日正午にみんなでマンネリ広場へ行こう」
と言うとやっとレンは魔力の放出をやめた。
次の日、正午までは時間がある。遠くへ行くわけにもいかず、市内で時間をつぶすことにした。それで、宿の主人に
「いい場所がないか」
と聞くと
「ミルテコナピーク美術館が有名」
とのこと。
それで行ってみたのだが、俺に美術の造詣などあるわけのもなく、裸婦像でもあればと思ったのだが、この時代にそんなものはあるはずもない。確か前世で裸婦像が描かれるようになったのはル〇〇ンス後だったような気がする。美術館に入って早々に興味をなくした。
妻たちはと見ると、レンたちはさすが元農家の娘、あっちを向いている。アンナとリタは興味があるようで真剣に見ている。アンナは庶子とはいえ根っからの貴族で理解できるが、リタは元平民、意外である。
「リタが美術品に興味があるとは意外だな」
と言うと
「今度、うちの商会でも、美術品を取り扱ってみようかなと思って」
「美術品なんて、良し悪しなんてわかるのか」
「私たちの子供には鑑定が使える子がたくさんいるから、その子たちに鑑定してもらえればいいと思って」
「確かに、鑑定を使えば、贋作だったら、すぐにわかるし、能力が上がれば適正価格もわかる」
「ほんと、だったら、今、目の前の絵画、鑑定してみて」
と言われたので、鑑定してみた。そしたら贋作と出てきた。それで、リタの耳元で
「これはダメだ、贋作だ」
「ええ、そんな」
「こら、声がでかい」
結局、アンナ以外は無駄な時間をつぶして、美術館を出た。
正午前に、と言っても美術館に早々に興味をなくしていたので、かなり前に広場に行った。まだ、正午までかなり時間がある。屋台の串焼きでも買って食おうとしたら、レンが
「神聖な儀式の前に買い食いとは」
と言い出した。
「だって、まだ時間あるし」
と言うと
「これは儀式。神聖な気持ちでするものです。少しぐらい我慢しなさい」
何となくうっとうしい。仕方がないので買い食いはやめて、ただ、周りを見ることにした。
そうしているとだんだんカップルが集まってくる。「男は大根」と思うと周りは美女だらけ、複眼複眼である。
そうしていると正午近くになったので、みんなで集まって手をつないで、正午の鐘の音に合わせてお祈りをした。怒られそうなので、
「来世もこのメンバーで。ただし、追加はいくらあってもOKと」
お祈りをした。
お祈りが終わるとレンが
「来世も旦那様と夫婦」
と言って抱き着いてきた。その日は妻たちの機嫌がすこぶるよかった。
次に行ったのはブルガシェル族の領地となったウンベルブルク市である。ここは元辺境伯家の領地であったが、先のブルガシェル族との戦争でブルガシェル族の領地となった。
行くと市内は落ち着いている。「遊牧民に攻略されたのだから、略奪とかあったのかな」と思ったのだが、「都市を守る領軍も領主もいない状態では守り切れない」ということで、略奪をしないという条件で早々に降伏したとのこと。
ブルガシェル族も「遊牧民に都市の統治は出来ない」ということで、市内の統治は市内の有力商人に任せているとのこと。そこから上がる収益だけ税金として徴収しているとのことである。したがって、ここは商人の町というわけで市内は結構にぎわっている。東方の産物が安く買えるということで、周辺からも商人が集まってきているとのことである。しかし、東方の産物ならマエズラ王国で買える俺として興味がない。
宿の主人に
「どこかいいところはないか」
と聞くと
「美術館が有名」
と言われたが、美術館はバイエルベルク市でこりている。
「他には何かないか」
と聞くと、
「劇場」
と言われたが、観劇に興味はない。
この町は元平民の俺には高尚しすぎるようである。そこで、市内グルメツアーと称して、市内で気にいった店を手当たりしだいに、食べ歩きすることにした。これにはアンナ以外の妻たちも乗り気であった。やはり元平民、文化の質は低いようである。
そんなこんなの帝国観光であったが、それから半月ほど帝国を見て回って領都サウスナンテンブルグに帰ってきた。
王国歴351年11月、帝国を家族とともに気ままに旅するハルト41歳、帝国は今日も平和である。




