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193.マエズラ王国の宗教政策

 先のペテン師騒動で、領地内の司祭の任命権はそこを治める領主のものになったわけであるが、マエズラ王国には教会と呼べるようなものはない。一応、建物は作ったが、司祭はいない。マエズラ族に宗教と聞くと、「?」である。それでいて、レンを見ると『魔力弾の女神』と言って崇めている。そしてレンの言うことは絶対である。レンをシャーマンと考えているようにも思うが、それだけでもないようである。とにかくわからないというのが実情である。


 このままほっておいてもいいのだが、彼らは強い戦士である。こと戦闘に関してはたぐいまれな能力を発揮する。弓の能力にしても、魔法攻撃の能力にしても、とにかく有能なのである。そして、彼らは純朴で単純なので変な方向に行かれても困る。誰かに煽動されるとえらいことになる。


 そこで、かつてレンが作ったレンの女神像の周りをドームで覆って、そこで祈りをささげられるようにした。そして人を雇って、そこの管理をさせることにした。すると、マエズラ族は暇なときはそこで祈りをささげるようになった。


 彼らの生活は単純である。晴れると男は狩り行く、女は植民都市の周りの畑を耕す。夕方になるとサウナで汗を流し寝る。雨が降ると1日何もせずに過ごす。最近はこれに祈りの時間が加わった。春から秋はこれでいいのだが、冬になると1日何もせずに過ごす。夜が長いので〇〇すると、子供ができる。最初10万ぐらいだった彼らの人口はたぶん倍ぐらいにはなっていると思う。


 今のところ食料は足りているので問題はないが、これも頭の痛い問題である。毛織物工業の育成を進めているが、中々その進捗は遅い。最近は、元東の王国の住民、俺はこの種族を東の族と呼んでいる。からの羊毛の提供で産業自体は育っているようであるが、当初のマエズラ族の雇用機会の確保にはあまりつながっていない。


 とりあえず、マエズラ族には祈りの場を提供したので、変な方向に行かない限りはほっておくことにした。


 次は東の族である。彼らも宗教的にはマエズラ族に近い。しかし彼らの信仰の対象は強い男である。一度「俺の人形を作っていいか」と聞かれたので「いい」と返事したら、筋骨隆々の人形が作られていて、びっくりした。そしてあそこが大きいのである。それを見て東の族の女性がうっとりしているという。


 そして、この人形が出回ってからは俺のことは別名「精根の王」と言われているようである。精根とは精神力とか気力とかいう意味で別に問題ないのだが、人形とセットとなると別のことを考えてしまう。俺が東の族のところへ行くと「愛人にしてほしい」と女性が寄ってくる。だから「東の族のところへ行く」と言うとレンの機嫌が悪い。


 今の彼らの生活は遊牧で羊を育て、植民都市で羊毛を売って必要なものを購入している。奴隷はいなくなったが、俺が羊毛の購入価格を高めに設定しているので、必要なものは購入できるようである。


 彼らは遊牧生活をしているので、彼らの人口がどれくらいかはっきりしないが、従属的な種族を含めると20万人から30万人はいると思う。そして彼らは全員馬に乗れる。男も女もである。たいしたものだと思う。


 彼らも戦闘力が非常に高い。特に馬を扱わせるとフラ王国の騎士よりもずっとうまい。そのうえ馬の上から弓矢や魔法攻撃をするのである。たぶん東の族とフラ王国の騎士が戦ったら、絶対、東の族が勝つと思う。


 だから東の族に俺の変な人形が出回っていても、規制するわけにいかないのである。俺のあそこが極端に大きい人形1つで彼らの忠誠心を維持できるのなら安いものである。


 次に、俺の本国から先生代わりに移住させた農民であるが、6000家族を送り込んだ、人口にすれば、3万人から4万人といったところである。彼らは本国の教会を信仰しているので、彼らの要望で教会の建物だけは建ててやった。しかし、司祭までは面倒が見られないとして、ほっておいた。


 しかし、司祭の任命権が領主のものになったので、本国の教会関係者と協議して赴任してもらう司祭を募った。国王すら住むのを嫌がるような極寒の地ということでなかなか希望者が現れなかった。


 俺は「希望者がいないのなら、いいや」と思ったのだが、教会としては、そういう訳にもいかないようで、一番若い司祭が赴任することになった。決まった司祭に聞くと「3年の任期とか」、俺は「ご苦労さん」と声をかけた。他人事である。


 最後の、旧リチ王国の住民である。たぶん人口的には15万人ぐらいだと思うが、戦争で男性の多くが死亡しており、女性の比率が非常に高い。女性が多いだけあって、行くと何となく楽しくなる。もっともレンの機嫌は悪いが。


 ここは東の帝国と宗教が同じということで、旧王都リチが復興すると、東の帝国から支援物資が届けられ、司祭も赴任したようなので、彼らに任せておくことにした。


 このように、雑多な宗教が混在しているので、宗教でもめると面倒である。そこで、俺は

「マエズラ王国では宗教は自由。個人の選択で好きな宗教を選択するように。強引な勧誘は禁止。他の宗教ともめ事を起こすことも禁止。また、勝手に税をとることや、強引な献金や寄付を求める行為の禁止。これらを犯せば厳罰に処す。追放もありうる」

と通知した。


 宗教の自由を通知したことから、さらにいろんな宗教の人間がやってくるようになった。俺は知らん。「もめなければいい」と思っている。中々多難な宗教政策である。


 王国歴350年1月、宗教政策に頭を悩ますハルト39歳、雑多な宗教が咲き乱れるマエズラ王国は今日も平和である。

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