184.東の王国との戦争
東の王国に侵攻するにあたって、俺は東の王国のことについて情報収集をすることにした。まず、奴隷にした東の王国の兵士から聞き取りをした。
彼らの王国の民はいくつかの有力部族からなり、それに小さな部族が従属している。部族の中で一番強いものが族長になる。そしてその族長の中で一番強いものが王となる。王国の民は基本遊牧を生業とし、草を求めて家畜を追って夏と冬で移動している。そのため、彼らの移動する範囲が彼らの王国の領土となる。行動は基本部族単位で、部族ごとに決まった草場がある。
王国の王都はNO.21から東へ馬で5日ほど行ったところにある。王都といっても城壁で囲まれているわけではない。周りは草原で、そこに柵をして巡回の兵士が見回りをしている。王都には王宮もあるが、木造で、このNO.21のような立派な建物はない。王都では、彼らの使う道具や服などを作っているが、作っているのは征服された土地に住んでいた奴隷である。
王国の収入は主にそこを通る商人からの通行税で、これで、王国で生産できないものを購入している。最近は王国を通る商人が減って税収が減って、最低限必要な物さえ購入できなくなってきている。
動員可能な兵力は、誰でも馬に乗れるので、すべての人間が兵士になれるが、強い兵士となると限られてくる。NO.21を攻めた時は約4万の兵士を動員したが、戦争でかなりの兵士が死んだり捕虜になったりしたので、今動員可能な兵力は2万人から多くても3万にぐらいだと思う。
東の王国の民は、とにかく強い男に従うので、戦争で勝っても、一騎討で負けない限り従うことはない。
なんとも厄介である。2万人や3万人の兵力なら、今の戦力で何とかなるだろう。しかし、戦争で負けても従わないのであれば、地の果てまで追っていくわけにもいかない。そのうち戻ってきてゲリラ戦でもされたら面倒である。
レンやバルトカイとも協議した。その結果、東の王国の王都近郊で戦闘を仕掛ける。そして、俺と東の王国の国王が、一騎討をする。俺が勝って彼らを従わせる。そのような段取りとなった。
レンが「私が一騎討をしようか」と言ったが、そうすると「相手が挽肉になるので、それはまずいだろう」という話になった。
王国歴349年9月、一騎討に望むハルト38歳、マエズラ王国は風雲急である。
バルトカイが本国から率いてきた兵士は3000人、それと魔道馬車300台である。これに俺は俺の収納空間ボックスからさらに200台の魔道馬車を出して、魔道馬車を500台とした。魔道馬車に乗り込む兵員が不足するのでマエズラ族から2000人の兵を募った。
彼らに兵を募ったら「『魔力弾の女神』と一緒に戦える」と言って多くの兵が集まった。レンの人気は異常である。俺はこの中から優秀な兵士を選別した。
そして、9月の半ば、一路、東の王国の王都へ向けて進軍を開始した。魔道馬車500台とそれに乗車した5000人の兵士、それに、威圧のため、捕虜にして奴隷紋を刻んだ元東の王国の兵士1万4000人である。我軍の総数は19000人である。途中までは一体として行動したが車列が長くなりすぎるので、途中からは部隊を3つに分けて、北、西そして南から彼らの王都の狙うように進んだ。行軍のスピードは奴隷にした軽騎兵のスピードにあわせた。
すると、東の王国は兵を王都周辺に集めてそこで決戦に臨むようである。上空に監視装置を飛ばすと、王都の西側の南北の森にそれぞれ2000人の軽騎兵を忍ばせている。また、王都の前面には1万人の軽騎兵がいる。その後ろに2000人の重騎兵がいる。この国には重騎兵はいないのかと思っていたが重騎兵もいるようである。さらに少し離れた南側に軽騎兵が6000人いる。敵の総数は約22000人である。
この配置から、俺は、敵の戦術は、俺たちが正面の敵軍につっ込んで行けば両側の森からの軽騎兵が側面を襲う。そして、南に控えた遊撃部隊が俺たちの背後をついて包囲殲滅する作戦だと予想した。
これに対して、俺の作戦は奴隷の軽騎兵を2つに分けて、南北の森にいる軽騎兵の動きを抑える。いくら奴隷でも3倍の人数なら相手の動きを止めるぐらいできるだろうと思った。そして、500台の魔道馬車のうち300台を正面から突っ込ませる。残り200台は南側の軽騎兵に対抗する。
前回のNO.21平原会戦で彼らの戦い方は、魔法よりも弓矢で敵の戦力をそぐ戦いを得意としていることが分かったので、多分今回の戦いでも魔道馬車の損害は少ないと予想される。それに戦いに勝てば破損した魔道馬車は後で回収できる。
戦闘は次の日の朝から始まった。まず俺は200台の魔道馬車を南にいる敵遊撃部隊を攻撃するように出撃させた。
そして、我軍の奴隷の軽騎兵を2つに分けて南北の森の抑えに配置し、森にいる敵の軽騎兵を弓矢で攻撃させた。これに対して、森の敵の軽騎兵は弓矢で応戦したが、森に潜んでいたのがばれたのと、3倍もある戦力差に押されて逃げ出した。
そこで、俺は300台の魔道馬車をゆっくりと敵本体に向けて前進させた。すると、敵は軽騎兵でなく重騎兵を突撃させてきた。しかし、重騎兵といえども、俺の魔道馬車には対抗できない。簡単に跳ね飛ばされて終わりである。この間敵の魔法攻撃もあったが、魔道馬車の損害は軽微であった。
しばらくすると、先に出撃させた200台の魔道馬車が南側に配置した敵の遊撃部隊を撃破して敵本体の背後に回り込んだようである。




