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171.NO.20草原の戦い

 東の王国からの無理な要求を拒否したハルトに東の王国からの軍団が迫る。今まさに戦争必至の状況である。


 マエズラ王国もここまで来ると北部のうっそうとした大森林もまばらになり、森や一部草原も広がっている。そして敵が侵攻しようとしてくるのは、南の端、草原が広がっているあたりからである。


 森や森林の中では馬の移動速度が限られてくるので、また対処方法もあるのだが、草原と丘陵、森はあってもわずかである。こんな中で、敵を叩くのは難しい。


 こう見晴らしが効くと待ち伏せもできない。がっぷり四つに組んで戦闘なんかしたら、彼らの思うつぼである。とにかく草原で軽騎兵との戦闘なんてしたことがないのである。戦闘の仕方が分からない。


 川でもあれば、渡河する時にスピードの落ちたところを攻撃すれば勝機もあると思った。索敵で探すと北から南に下る川があるのだが、ここから東へずいぶん行ったところにあり、彼らの移動速度を考慮すると、この川で迎え撃つのは時間的に難しそうである。我々が行く時間と彼らが着く時間が同じくらいになりそうである。もし彼らが渡河した後だと、こちらがやられる。


 いろいろ思案したが、早くしないと敵がここ植民都市NO.20に来てしまう。


 そこで、俺は罠を張ることにした。わざと俺たちの魔道馬車を見晴らしのいいところに並べて、その前面に強力な柵を設置する。その柵で騎兵が袋小路に誘導されるように柵を設置していく。その柵には隠蔽と魔法防御の魔法陣を仕込んで、近くに来なければ発見できないようにする。また、発見されても簡単な魔法攻撃では破壊できないようにする。スピードが速いだけに立ち止まって対処できない。後ろから来る騎兵に押されて前へ進むしかなくなる。そうすると最後は袋小路である。そこを攻撃する。


 場所は植民都市NO.20と国境の中間地点とした。俺にも準備する時間が必要である。とにかく彼らの移動のスピードが速いのである。これでもぎりぎり間に合うかどうかというような時間である。俺は計画をレンとバルトカイに伝えた。俺とレンが転移で現地に移動して柵を設置していく、後でバルトカイが魔道馬車を率いて来る。戦闘開始は明日彼らが現地に到着してから、そういう手はずにした。


 俺とレンは転移で現地に移動した。俺は柵を設置していった。レンは護衛である。しかし見晴らしが効くだけに「することがない」と言って、俺の仕事を手伝ってくれた。それで思ったより早く柵を設置できた。時間が出来たので、騎兵の移動を妨害するような窪地や、穴をいたるところに作っていった。さらに、柵が見えにくくするために柵の前の地面を少し高くして柵が隠れるようにしていった。そのようにしていたらバルトカイが魔道馬車を率いて来た。それで、柵の背後の見晴らしのいいところに魔道馬車を並べていった。


 次の日、東の国の軍団が現れた。すべて騎馬である。そして兵士よりも馬の方が多い。どうも彼らは替えの馬を用意しているようである。これなら、乗っている馬がつかれたら、ほかの馬に乗り換えることによりスピードを落とさずに移動できる。さらに馬に食料や水を携行させれば、荷物を運ぶ荷駄隊もいらない。まさに移動に特化した戦闘集団である。感心していても仕方がないので、彼らの動きを注視することにした。


 彼らは、俺たちの姿を捕らえると、すぐに突撃を開始したようである。砂埃が上がって向こうがよく見えない。それで索敵をかけて彼らの動きを探ることにした。すると背後の部隊を大きく迂回させて俺たちの背後に回ろうとしているようである。


 もし敵の背後に回した部隊に、俺たちの背後を突かれると、今度は俺たちの部隊が敵と柵との間に挟まれて身動きが出来なくなる。そこで、俺は俺の部隊の周りに風魔法でわざと砂塵を起こして、俺たちの部隊を隠した。そして大きく迂回して敵本体の背後に回るように指示した。


 俺たちが移動して、砂塵が晴れると魔道馬車がいなくなったのがばれるのを防ぐため、俺は土魔法で魔道馬車の張りぼてを、俺たちのいた場所に作った。狐とタヌキの化かし合いである。


 馬のいななきと地響きが響く中、砂塵をまといて俺たちは敵本体の背後に回るべく移動を開始した。このあたりはなだらかな丘陵地が続く平原、魔道馬車だとどこでも走れる。そのままの形で編隊を組んだまま大きく迂回して敵の背後に回った。そしてもう一度態勢を整えて、敵本体の背後を突くことにした。


 しかし、初めて見る部隊、そして、すべて騎兵である。誰が指揮官でだれが魔法士かわからない。狙う場所が分からない。仕方がないので、索敵で一番魔力の大きい人間を指揮官として攻撃することにした。


 そして、敵中央の人間を第一攻撃目標と設定し、部下に指示した時に、レンが魔道馬車の上に上がってきた。そして、

「こんな時は景気付けに一発かますのがいいのよ」

と言って俺の忠告も聞かずに魔力を込め始めた。魔力を込めるのを中々やめない。ハラハラしてくる。

「こんなこと以前にもあったな」と感慨にふけっていたら、「えい」と言って魔力弾を放った。

「これ魔力は超極大だが、距離が全然足りてないじゃない」そう思った。


 そこで慌てて風魔法で飛距離を伸ばして、それでも届きそうになかったので、転移で敵本体の中央上空付近に転移させた。その後超極大の魔力弾は敵本体へゆっくり降下していった。


 もう後は知らない。俺は味方の被害を最小限に抑えるため、俺の部隊の前面に結界を張った。その後はお決まりのパターンである。


 しばらくして俺が砂塵を吹き飛ばすと敵本体の姿はなく。そう綺麗になくなっていた。これを見た袋小路に追い込まれていた部隊は降伏してきた。また背後に回り込もうとしていた部隊はそのまま逃げ出したようである。


 こうして俺たちマエズラ王国は東の王国の侵入軍を破ったのである。この戦争はのちにNO.20草原の戦いと呼ばれるようになった。そして、この戦いで極大の魔力弾を放った魔法士はのちに『魔力弾の女神』と呼ばれるようになったのである。この二つ名はレンも気にいっているようである。『爆裂のブヒ』よりはずっとましである。


 王国歴344年7月、脳筋妻の爆裂魔法で救われたハルト34歳、植民都市NO.20の平穏はこうして守られた。

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