165.サウスブニューデン侯爵家サウナの癒し
植民都市の建設も一段落、久しぶりに平穏な日々が訪れていた。マエズラ地方の住民のサウナ好きは度を越していたように思う。サウナを作ったというだけで住み慣れた村を捨てて城内に移住してきたぐらいである。サウスナンテンブルグに戻ってからも、そのことが忘れられずに、侯爵邸のサウナを拡充することにした。しかし、侯爵邸の敷地はすでに各種工場が建設されており、空き地が少ないことから。郊外にリゾート施設を作ることにした。転移魔法が使える俺としては郊外でも問題ないのである。
まず大きな大浴場を作った。ついでに室内プールも作った当然温水プールである。そして、この施設のメインであるマエズラ地方で見られた森林の中で小さな部屋を作ったサウナである。これを再現するため、体育館のような大きな部屋を作って、そこに小さな木を植えて、その間に幾つか部屋を作って、そこをサウナにした。家族単位で過ごすことが出来るようにしたのである。そして、宿泊できる部屋と、大食堂それにステージを作った。また、居酒屋や歌を歌える部屋やダンスを踊れる部屋、卓球台やゲームができる部屋も作った。まさに一大リゾート施設を作ったのである。名前は「サウスブニューデン侯爵家サウナの癒し」とした。施設の名前にもサウナをつけたのが今回のこだわりである。
ほんとはガスオクシタ地方とアルジュル地方とポルイスト王国の辺境伯領の施設整備の続きをしなければならないのだが、とにかく今年はいろいろあったので、ある意味現実逃避である。いつもだと居酒屋にこもってハーレム生活をするのであるが、今年はマエズラ地方で見たサウナが忘れられなかったのである。
さて、施設は作った。後はこの運営をどうするか。リタは北の海での交易で忙しそうだし、エバは新食材の工場の運営で目一杯だし、従士の中からやりたい人間を募集することにした。面接はリタにも同席してもらった。最初レンは「またいやらしいものを作るのでは」と疑いの目を向けていたが、リタが「マエズラ地方ではサウナが文化として根づいている」という説明をすると、「たまには旦那様もまともな物を作るのですね」と言われた。
面接の結果、総支配人を1人、あと、施設担当1人、従業員担当1人、仕入れ担当1人、イベント担当1人の5人を採用した。リタは面接が済むと忙しいと言ってもう語ってくれなかった。しかたがないので採用した5人と打ち合わせしながら、内容を詰めていった。
こういう地味な仕事は今まで部下に丸投げしていたのだが、もう丸投げする部下がいなくなったので仕方がない。この施設についてもこの5人に丸投げしようとしたら、この世界にリゾート施設なんてあるはずもなく、仕方がないのでこれについては全面的に関与することにした。というか、しないと施設が運営出来ないので、仕方がなかったというのが実情である。
まず、リゾート施設の説明からすることになった。
「リゾート施設とは、そこで遊んだり、疲れた体と心を癒すために、ゆっくり過ごすことが出来る施設である」
というと、男の担当から
「娼館とどう違うのか」
と言われた。
そこで俺は
「リゾート施設は健全な施設である。男性も女性も子供も同様に楽しめることが出来る施設である」
と答えた。
やっとどのような施設を作ったかを分かってもらえたようで、その後の打ち合わせは順調にいった。そして職員は市内から募集した。応募してきたのは前回の食品工場の時と同様貧民街の人間がほとんどであった。今回はいい加減な人間は雇うわけにはいかないので、面接で俺は鑑定をフルに使って、有用な人間を採用した。
そして職員の研修期間を経て10月の半ばにやっとオープンにこぎつけた。今日は侯爵家と侯爵邸で働く職員の貸し切り、費用は侯爵家もちである。レンやアンナ、リタ、エバ、ソフィー、ミレーヌ、パメラや子供たちである。リヒトは妻のマリーが妊娠中ということで欠席である。侯爵邸で働く職員は1/3づつ家族で参加できるようにした。残りの2/3は後日、日を改めての参加となる。今日はいっぱいの人である。子供たちはゲームのできる部屋が気にったようであるが、俺は真っ先にサウナに行った。当然愛人4人組も強制的にサウナである。レンとリタは食堂に行ったようである。アンナさんは居酒屋に行ったようである。
「今日は1日ここでゆっくり過ごす。心が癒される」
そう思うハルトであった。
王国歴342年10月、サウナが忘れられないハルト33歳。サウスナンテンブルグは今日も平和である。
ところが、しばらくすると、総支配人が俺のところにやって来た。
「オープンのご領主様の借り上げ期間が過ぎるとお客さんが来ない」
「それぐらい何とかしろ」
俺がそう言うと、総支配人は
「まず、郊外なので、歩いては来られません。来るのは馬車を使える人間だけになります」
「わかった、辻馬車の様な物を運行する」
そう言うと、とりあえず総支配人は帰っていった。
そこで、俺は前世の大型バスのような魔道馬車を作って、それを施設と市内の間を運行することにした。もちろん施設利用者は運賃は取らない。前世の60人ぐらいの大型バスを作って、これを侯爵家の従士に運行させた。朝7:30に施設を出て、7:40に市内の中央広場に着く、そして8:00にそこを出て、8:10に施設に着く。帰りは17:30に施設を出て、17:40に市内の中央広場に着く、そして18:00にそこを出て、18:10に施設に着く。
この無料バスを運行するようになってからは総支配人は何も言ってこなくなった。お客さんもそこそこ来ているようである。
そうしたら、市内の宿屋から「お客さんが減った」と苦情が来るようになった。頭の痛い話である。1つ問題を解決すると、また新たな問題が出てくる。そこで市外の人間からはバス料金を取ることにした。これでしばらく様子を見るということで宿屋の組合の代表には帰ってもらった。
その後は何も言ってこないので良しとした。
そうしたら、「そのバスを市内の移動用に運行してほしい」という要望が上がってきた。そこで、これは総支配人に丸投げした。「送迎バスの運行は朝と夕方だけなので、それ以外の時間の運用は構わない」と伝えた。ただし、後で苦情が来ても困るので「運賃は取るように」言った。そしてバスを追加で何台か渡した。




