164.植民都市の建設
その後、北の海中央海戦で拿捕した軍艦は、サウスナンテンブルグ港に曳航していって、そこでスクリューと駒の装置を取り付けた。さらに、防火、衝撃吸収、物理耐性、魔法防御、クリーン、自動補修の魔法陣を設置した。舵も舵輪にした。これで、拿捕した軍艦15隻はサウスブニューデン侯爵家の軍艦となった。そこに捕縛した水兵を奴隷にして乗船させた。しかし、レンの姿を見ると『爆裂のブヒ』と言って役に立たない水兵もいたことから、彼らには開拓村に押し込めることにした。転地療養が必要である。
また、北の海の哨戒については、軍艦20隻をあたらせているが、北の海の最奥の植民都市がまだ建設されておらず、またフグ町の軍港地区も20隻を常時停泊するには狭すぎるので、さしあたって、アンゼン川の両岸を少し浚渫して係船できるようにしたが、これは一時しのぎである。それで、フグ町の外港地区の泊地を拡大して、ここに軍港地区を作ることにした。そして、軍港地区の拡幅をしていたら6月も終わってしまった。
北の海の最奥に建設する植民都市については、7月にオスヴィン提督に案内してもらった。商売に関することなので、俺とリタの2人で行った。案内してもらった場所はマエズラ地方と呼ばれるところであった。現地に行くと、北に面した海岸があり、その背後はうっそうと茂る大森林であった。
近くに村があるというので、行ってみた。すると、小さな集落があり、200人ぐらいの人がいた。村長という人に話を聞いたが、ここでとれた毛皮や魚を北の都市同盟の商人に売って、代わりに食料を買っているとのことであった。
俺たちがここに都市を作ってもいいかと聞くと、そこに住まわせてもらえるなら構わないとのことであった。
「都市に住むのなら俺を領主として認めるか」
と聞くと、
「食べさせてくれるなら、領主として認める」
とのことであった。なんか北の都市同盟の商人に餌付けされているようで、先が思いやられるが、良しとした。
「小麦は作れないのかと聞く」と「ライムギならつくれる」とのことであった。農産物には期待しないことにした。
「お前たちの領域はどれくらいか」と聞くと「ここから見える範囲がすべて」とのことであった。
なんか聞いていた話と少し違うような気がした。オスヴィン提督と同行した北の都市同盟の案内者をにらみつけると何も答えない。まさか俺が現地の言葉を理解して、現地の人と直接会話できると思っていなかったようである。
そこで俺は現地の人が言った言葉を引き合いに出して
「ここから見える範囲をすべて俺の領地にする。異存はないな」
と念を押した。
担当の事務官は何か言っていたが、
「いやなら約束違反で北の都市同盟の市長に直談判する」
と脅すと
「わかった」
と了解した。
これで俺の領地はこのあたり一帯のかなり広範な領域が俺の領地になった。それに見える範囲という言葉は、いかようにも拡大解釈できる。海から見れば、あるいは空から見ればと、無限に領域を拡大できる。非常に便利な言葉である。
このようにして、マエズラ地方が俺の領地になったのだが、住民は「俺に食べさせてもらえる」と思っているようであるし、現地はうっそうと茂る大森林、その上今は夏だからいいが、冬になったらどんなに寒いのだろうと思うと、ここで暮らしたくないと思ってしまった。
案内は済んだとオスヴィン提督と同行した北の都市同盟の案内者はすごすごと帰っていった。
俺はここに都市を建設することにした。海岸に我軍の軍艦が接岸できるような吃水の深い船に対応した岸壁を作っていった。そしてその岸壁の際の切り立った断崖を削ってエプロンを作っていった。掘削した土は沖合にもっていって水深を浅くしてその上に防波堤を作って泊地を確保した。
海岸に面した丘の上に道路の区画を作ると、その周囲を城壁で囲った。そして道路の区画に、以前ネイメー伯爵領の海岸地方で作った前世のマンションのような建物を作った。キッチンとトイレ付3LDK、戸数は村人の戸数の2割増しぐらいにした。また、ここに駐屯する船員や兵士用さらにここを管理する侯爵家の官吏用に同様な建物を作った。さらに商人の宿泊用の宿屋や食堂も同様な建物とした。そして城壁の周りに堀を作って、南の出入り口には跳ね橋を作った。
また、これらの建物は冬の間の寒さ対策用として幾重にも断熱用の結界を張って熱が天井や壁そして床に逃げないようにした。さらに地下道でつないだ。ついでに城壁にも回廊を作って、そこから見回りができるようにした。そして城門と城壁の回廊も地下道でつないだ。これで、冬の間は外に出なくてよい。これならここに駐屯してくれる兵士もいるだろう。とにかく冬の間は外に出なくていいのだから。
後は水の確保だが、付近には大きな川はなかったので、地下水に頼ることにして井戸を掘った。温泉が出たらいいなと思ったが温泉は出なかった。現地の人に聞くと、現地の人はサウナに入るのが習慣とのことなので、ここにはこれまで作っていたよりも巨大な公衆浴場を作ってそこにサウナも作った。
これまでの植民都市と同様疫病対策として、ネズミと害虫を防ぐ魔道具の設置と病人の隔離用の施設の建設をした。
サウナを見せたら、現地の住民はすぐに引っ越してきた。これまでの村の周りの畑はここから通うそうだ。また、森への狩猟もここから行くという。彼らにとってサウナは至高の贅沢とのこと。
ついでなので、都市の周りの森林は適当に開墾して畑にした。辺り一面を畑にしたら、
「こんな広い土地は耕せない」
と言ってきた。
俺も食糧援助をずっと続けたくなかったので、
「王の命令だから耕せ。嫌ならこの都市から出て行け」
というと
「わかった」
と了解してくれた。
これで、ここに俺の植民都市が出来た。名前はマエズラ市とした。フグ町の軍艦については半分をここに配備することにした。そしてフグ町の間を哨戒してまわることにした。
彼らの種族名を聞くのだが「孤高の戦士族とか、サウナ大好き族とか」訳の分からないとを言うので、疲れたのでマエズラ族と呼ぶことにした。
後は商人であるが、リタはまず現地の言葉が分からないので、言語理解のスキルのある三男ミシェルに当面は通訳を頼むことになった。またヤマユリ商会の駐在員も何人か駐在させると言っている。当面は毛皮と魚と木材が主要な取扱品になるだろうとのことである。




