163.戦後協議
海戦はサウスブニューデン侯爵軍の大勝利となったわけであるが、拿捕した船をどうするか、また捕縛した捕虜をどうするか、ということを協議した。最初、オスヴィン提督はブレーフェンブルグ市に戻ることを提案したが、レンとしては帝国に行くのは問題があるということで、フグ町に戻ることにした。
次の日の昼頃にフグ町に戻ってきた。拿捕した船はサウスブニューデン侯爵家の所有でよいとのことであった。捕虜については、ブレーフェンブルグ市に連れて行くのも、面倒なので、ネイメー伯爵家で預かることになった。
今後どうするかという話になったが、ドレーン王国が講和に応じればいいが、応じなければ、新たな展開に持ち込まなければならない。
オスヴィン提督は王都ドレーンを攻めることを主張したが、レンは今回陸軍を連れてきていないので、王都を攻めることはできないと主張した。それにサウスブニューデン侯爵家の軍艦は吃水が大きいので、ちゃんとした港でないと接岸できない。それで、王都ドレーンの攻撃は北の都市同盟でしてほしいと主張した。
北の都市同盟として戦艦が今回1隻大破したので9隻しかない。これでドレーン王国の王都を攻めるのは難しい。結局様子見となった。
その後、今回の戦争の報酬の件で北の都市同盟の代表者と協議することになった。こちらとしては帝国に行くわけにはいかないということで、フグ町に来てもらった。来たのは、リューランドベルク市の市長とブレーフェンブルグ市の市長と、ハンブルゲン市の市長である。まさに北の都市同盟のお歴々が総集合といったところである。
北の都市同盟の一行とは、フグ町の領主館別館で協議することにした。こちらは俺とレン、アンナ、リタそれに侯爵家で海軍の責任者のニコラウス従士である。
まず、お歴々からは今回の戦争でドレーン王国の艦隊を殲滅し、北の海の制海権を取り戻したことに対して、謝辞が述べられた。
その後、協議が行われた。概要は次の通りである。
今回の戦争に要した戦費であるが、こちらとしては軍艦にほとんど損傷がなく、拿捕した敵の軍艦15隻はすべてこちらの所有としてくれるというので、要らないと言った。すると、お歴々からは、驚きの感嘆が漏れた。そして感謝すると言われた。
また、捕縛したドレーン王国の捕虜については、取り扱いはハルトに任せられることになった。
「身代金をとるもよし、奴隷にするもよし」
と言われた。敵対しているドレーン王国から身代金をとるのはハードルが高そうなので、ハルトとしては北の都市同盟に押し付けたかったが、北の都市同盟としても個別に協議すると足元を見られうまくいかないので、ハルトに押し付けたといった状況であった。
仕方ないので、これはハルトも受け入れたが、
「もし身代金をもらっても、北の都市同盟にはやらない」
というとこれも了承された。
つぎに、今後の北の海での制海権の維持であるが、現在ドレーン王国の艦隊が全滅した結果、北の海が無法地帯と化しつつあるということで、俺が北の海で艦隊を維持して哨戒にあたってほしいとのことであった。これについては、
「この海域に20隻の軍艦を配置して、フグ町とおれが建設する植民都市との間を定期的に運航して哨戒の任につかせる」
と言うと安堵の声が漏れた。
この費用については、毎年、事前の契約では「北の海での交易で得られる利益の10%」となっていたが、利益がなければ支払いがないことになり、これでは艦隊の維持できないので、年間金貨5万枚とした。それには異論も出たが、「いやなら哨戒はしない」と言うと払ってくれることになった。
北の海の最奥に建設する植民都市については、後日案内してもらうことになった。また、その際その地を治める部族の族長も紹介してくれることになった。また、その地に商人を駐在させて、その地で得られる商品を購入して、フラ王国やそれ以外の国々に販売することも認められた。
その様にして報酬については協議が終了したのであるが、依然として降伏してこないドレーン王国をどうするかという問題が再度蒸し返された。どうも、現場でレンがオスヴィン提督に「うちは関与しない」と言った言葉をお歴々は納得していない様であった。
俺が
「ドレーン王国は帝国のすぐ隣であり、そんな国に軍を派遣すれは帝国の介入を招くことになって、今回の戦争が単なる海の安全確保のための戦争でなくなってしまう」
と言うと、お歴々は
「そうは言っても、我々も加盟する都市が1つ焼かれている。安全の確保は最重要課題である」
と言いだした。これに対して俺は
「そうは言われても、こちらの事情もある。加盟する都市で軍団を維持して対抗してもらうしかない。市民兵でも十分戦えると思う。何年か前のランドル戦争では『市民兵がフラ王国の騎士の突撃を止めた』と聞いている」
と答えた。
その後もぶつぶつ言っていたが、俺の答えは一貫してNOであった。結局諦めてくれた。
その様にして、北の都市同盟のお歴々との協議は終了した。その後、お歴々はフグ町の造船所を見学して、「この軍艦を購入したい」と言ったが、「(仮想敵国である)帝国の都市には売れない」と断った。どうもオスヴィン提督より、侯爵家の軍艦の優秀さを聞いているようであった。
その後、北の都市同盟のお歴々は帰っていった。
王国歴342年5月、面倒ごとが終わって、新たな領域への希望が膨らむハルト32歳。フグ町は今日も平和である。




