160.北の都市同盟との協議1
王国歴341年12月ハルト32歳、辺境伯領での工事に一区切りをつけて領都に戻って絶賛不貞腐れ中である。季節は冬、「今年はどこへも行かない」春まで冬ごもりを決めたハルトであった。
現在、フラ王国とポルイスト王国に新たな領地を得て、サウスブニューデン侯爵家の領軍の規模は約29000人となった。内訳は陸軍が23000人で水兵が6000人である。現在110隻の軍艦を有している。フラ王国でも屈指の規模である。また軍艦110隻は一国の海軍とも呼べる規模である。もっとも陸軍はガロンルーズ家から引きついだ者が、3000人、ポルイスト王国で奴隷紋を刻んだ者が10000人なので、陸軍に関しては、新たに領軍に加わった者の忠誠心はかなり低いと考えられる。
もっとも、フラ王国で俺に軍事的に敵対できる勢力はないし、ポルイスト王国も現在は度重なる戦争で疲弊しきっているので、張子の虎でもなんとかなるだろうというのが俺の考えである。張子の虎でも領内の治安維持くらいはしてくれるだろう。実際、これらの兵士を巡回させているだけで盗賊の被害はほとんどないようである。
そんな引きこもり生活を送っているハルトのもとに、北の都市同盟の使者がやってきた。北の都市同盟とはこれまで北の産物を仕入れるだけで主に商業関係の取引しかしていなかった。というか北の都市同盟に参加している都市の多くが帝国の自由都市であることから、帝国と敵対関係にあるハルトとしては、あえて避けていたというのが実情である。
ただ、サウスブニューデン侯爵家やネイメー伯爵家としては軍艦を作っている関係上、北の都市同盟から木材を購入する必要があったのである。
普通都市というのはそこの領主の居城であり支配下に置かれるのである。しかし、自由都市というのは、領主の支配から離れて直接帝国皇帝あるいはそれに代わる権力者に仕えている。いわば領主と同格の存在である。
自由都市の多くは帝国にあるが、帝国の領域を外れた地域にもある。また北の大陸のランド王国にもある。北の自由都市は主に北の産物を扱っている。また、南の自由都市は主に東方貿易を行っている。つまり外国の産物を購入しようとすると自由都市は避けて通れないのである。
俺の前世の記憶ではハ〇〇同盟とロン〇〇ディア同盟があったように思うが、いまいち記憶がはっきりしない。
商売に関するということで、リタを同席させた。俺はこれはあくまで商業上の取引であり政治は関係ないというスタンスである。
しかし、北の都市同盟の使者の言葉はまるっきり政治であった。
「ハルト様にはぜひ北の都市同盟に参加してほしい」
これに対して
「私はフラ王国で侯爵位を拝命しており、自由都市ではないので、同盟には参加できない」
と答えた。
すると使者は
「同盟に参加できないのなら、オブザーバーでもよい」
なんか粘るな
「そもそもサウスブニューデン侯爵家としては直接帝国と戦火をまみえたことはないが、ネイメー伯爵家としては帝国と幾度か戦火をまみえている。いわば帝国の敵である。そんな俺が北の都市同盟に参加すれば問題になるのではないか」
これに対して使者は
「それは問題ない。北の都市同盟は帝国とは別の組織である。
それに今は皇帝が一昨年の疫病で死亡してから次の皇帝が一応決まったのだが、反対する貴族も多い。
有力諸侯は国としての統一より自分の利益のことで頭がいっぱいで、こちらのことに構ってくれない。
そこを、ドレーン王国に攻撃されて北の都市同盟に加盟する都市が1つ焼き討ちにあった。
我々は北の海の制海権を失っており、北の海で自由な交易が出来ない。
それともハルト様は北の産物がいらないとでも言われるのですか」
痛いところを突いてくる。そしてこっちが本命か。
それと帝国のどろどろした内部事情は部外者の俺としてあまり聞きたくない。
「つまり使者殿は俺の力を借りてドレーン王国を打ち破り北の海の制海権を取り戻したいということか」
すると使者は
「理解が早くて助かる」
と言われた。
「即答は出来ない。しばらく考えさせてくれ」
と言うと
「わかりました。この都市でよい返事がもらえるまで待たせてもらいます」
と言って退席していった。
俺のOKが出るまで帰らないというのは厄介だなと思った。
仕方がないので、レン、アンナ、リタそれに今回はリヒトも交えて会議をした。北の産物が購入出来ないのは、領地経営上問題があるので、協力せざるを得ないだろうということで話が進んだが、リタから戦費の負担はどうするのかという問題が提起された。そこで、それについては相手の出方次第ということになった。また、派遣する艦隊の規模は相手の戦力を見て軍艦の数を決めることとなった。
その後、いろいろ調べるとドレーン王国の保有する海軍の規模は約50隻とのことなので、うちが全部出すわけにはいかないということで、40隻を派遣することにした。
指揮はレンがとると言い出した。
「俺が行くと側室をもらってきそうだ」
とのことである。




