157.マーサの結婚とリヒトの婚約
次女マーサはトゥール公爵家の嫡男キニアニオ様と婚約していたのだが、疫病も収まったということで11月に結婚した。
貴族の結婚は俺もレンもよくわからないし、まして式の準備期間中はずっと戦地いたわけで、式の段取りはアンナとユリアーネお義姉様にすべて丸投げであった。
戦後処理で忙しくて、バタバタしていた関係で、結局、移動はすべて転移魔法で行った。優雅に定期連絡船に乗って、魔道馬車で行くなんて時間はなかった。
俺とレンが忙しくて当てにならないのでマーサとリヒトとルナが領都サウスナンテンブルグと公爵家の領都の間を転移魔法で行き来して人を運んでいたようである。子供たちはすべて転移魔法が使えるということで公爵家の人たちは驚いていた。
マーサはだいぶ疲れていたようで、式の時は顔にクマが出来ていたように思う。
そんな中、ユリアーネお義姉様の紹介でルナの婚約が決まった。相手はトゥール公爵家の寄子の貴族の子爵家の長男とのこと。これにはリタさんも大喜びで、すぐに婚約が決まった。ユリアーネお義姉様としては1人でも多く俺の子を自分の派閥に取り込みたいようである。
ぐったりして領都サウスナンテンブルグに戻ってきたら長男リヒトが会ってほしい人がいるというので、相手の人に会うことになった。相手の人はフラ王国の学院で一緒だった平民のお嬢さんとのこと。
元平民の俺としては別に長男の嫁が平民でも一向にかまわない。ほかの貴族のように家柄とかは別に気にしない。12月の初めの日にリヒトが魔道馬車でお嬢さんとその家族を連れてきた。
エティエンヌさん夫妻とお嬢さんのマリーさん。向かい合って挨拶をしたのだが、「マリー」と聞くとレンが一瞬いやそうな顔をした。
「俺は関係ないぞ、俺はあれからマリーには会っていない」
そう言った。
そしたらリヒトが
「お父さんの昔の恋人?」
とか言い出した。
「恋人じゃない。幼馴染だ。誓ってやましいことはなかった。ただ美人だなと思っていただけだ」
話が変な方向に行ってしまった。
そしたらエティエンヌさんが
「うちは平民で、ハルト様は侯爵様。よろしいのですか。マリーでは侯爵家の付き合いは出来ないと思うのですが」
と言われた。
そこで俺は
「俺は一向にかまわない。俺は元農家の次男だし、レンも農家の長女、今は侯爵だが、しょせん成り上がり者、普段の生活も貴族らしいことは何もしていない。貴族の付き合いもしていない。
ただ、最近、ルーズペルピ伯爵が、『うちの派閥を立ち上げる』」と言っているので、今後は増えるかもしれない。でもそれはあまり気にしなくていい。ルーズペルピ伯爵に任せておけばいい」
そう答えた。
それを聞いてエティエンヌさん夫妻とマリーさんはほっとしたようだ。
婚約成立ということで、リヒトはすごくうれしそうである。ただ貴族の正妻の結婚は王家の許可が必要とのことで、これについては書類を出すことになったが、書き方が分からない。これまではこういうことはすべて相手の貴族に任せていた。
そこでアンナさんを呼んで来たら、書類はアンナさんが出しておいてくれるとのこと。平民との結婚なので問題ないだろうとのこと。「よかったうちの家族にも元からの貴族がいて」そう思った。
リヒトが婚約したという話をルーズペルピ伯爵にしたら、六女セリーナや七女ミリーにまで婚約の話が来るようになった。特にルーズペルピ伯爵があっちの貴族こっちの貴族と派閥拡大の話をしているので、そのような話が来るようである。
俺は
「今学院に行っているので、その中で気にいった人がいればいいのじゃない」
と言ったら、
「それでは派閥の拡大は出来ない」
とのこと。難儀な話である。
「貴族のことはよくわからない」
ということで、これはアンナさんに丸投げすることにした。
(ここからはリヒト視点)
それからしばらくして、僕が
「父さん、父さんの幼馴染のマリーさんてどんな人」
これを聞いた母さんが父さんをにらみつけたので、父さんは小声で
「チョウチョ商会のアムスム王国の王都店に人形が飾ってあるはず、今も売れてなければの話だが」
と言ってくれた。
リタさんに聞くと
「人形はまだ売れてない。レン様が怖くて売れない。私はその件についてはノータッチ」
と言われた。
気になったので、婚約したマリーの家に転移すると、一緒にチョウチョ商会の王都店に転移した。
僕が
「この人が父さんの初恋の人か」
というとマリーが
「きれいな人ね」
と言った。
「これじゃ母さんが怒るはずだ」
と言うとマリーも
「そうね」
と言った。
マリーが
「今この人どうしているのかしら」
と言ったので
「テー公爵家のレア叔母さんに聞くと分かるかも」
ということで、テー公爵家の公爵邸へ転移した。
レア叔母さんに会うと、
「婚約おめでとう。この人がリヒトの婚約者、綺麗な人ね」
と言ってくれた。うれしかった。
「ハルト兄さんたら最近は全然こっちに来ないのだから、『父も寂しがっている』と言っておいてね」
と言われた。
「父の幼馴染のマリーさんて知っている」
と聞くと
「マリーなら商人と結婚したわ。詳しいことはマリアンヌさんの方がよく知っていると思う」
と言われた。
マリアンヌさんに聞くと
「マリーさんの夫はヤマユリ商会とも取引のある商会の息子さん。子供も3人いる。取引でヤマユリ商会の領都店にも来る」
とのことだった。
せ っかく来たのだからということで父さんと母さんの実家にも挨拶した。
侯爵邸に戻って、父さんに
「マリーさんは結婚して子供もいるそうだ」
と言うとちょっぴり寂しそうだった。
これを聞いた母さんはうれしそうに
「よかったね、マリーは結婚して幸せそうで」
と言うと、
父さんは「そうだね」とつぶやいた。




