151.バルマトル港急襲
俺の応援部隊の来た西側と領都周辺のポルイスト王国軍は駆逐したが、それ以外のルーズペルピ子爵領にはまだポルイスト王国の敗残兵が潜んでいる。これらの兵を拘束する作業はレンとレノアに任せた。
港湾地区の支配権を取り戻したので、俺は避難していた軍艦10隻を呼び戻した。そして、ポルイスト王国の中の海の艦隊のせん滅を図ることにした。ポルイスト王国の中の海の艦隊はその多くがバルマトル港にいる。そこでこのバルマトル港を夜半に襲撃して軍船を焼き払うことにした。
幸い敵の軍艦はほとんどがガレー船である。我軍の軍艦より高さが低いので上から火矢をお見舞いすれば焼き払うことができる。何なら油入りの樽をまき散らしてもいい。そう考えた俺は軍艦の上に小さなカタパルトを設置して油を詰めた樽を飛ばせるようにした。
7月の半ば夕日が西に傾くころ、サウスブニューデン伯爵家の軍艦10隻は、静かにルーズペルピ港を出港した。
その後舵を南東にとり、ポルトイスト王国の中ノ海に突き出た岬を大きく迂回すると、今度は南に舵を取りしばらく進んだ、そして夜のとばりが落ちるころ、今度は舵を西に切ってポルイスト王国の軍港バルマトル港を目指した。
ここにはポルイスト王国の中ノ海艦隊の本拠地であり、艦隊の半数以上、30隻のガレー船が停泊している。事前に入手した情報ではこのはずである。港に近付くと、俺は索敵で艦隊の位置を把握していった。軍艦の数は34隻、港内に停泊しているのが20隻、岸壁に接岸しているのが14隻であった。
ただ、このバルマトル港は細長い港であったため、軍艦はかなり長い距離にわたって停泊している。港内に停泊しているということは船員が乗船しているということで、すぐに動く可能性が高い。また岸壁に接岸しているということは船員が陸に上がっている可能性もあり、そうなるとすぐに動くのは難しいと考えられた。
そのため、まずすぐに動く可能性のある港内の軍艦を攻撃することにした。敵の軍艦20隻、我軍の軍艦10隻なので我軍1隻当たり2隻の敵艦を攻撃するように命じた。そしてカタパルトで敵の軍艦に油の詰まった樽を飛ばし、そのあと火矢で攻撃する。攻撃を始めて2時間もすると、港内に停泊している敵艦はすべて燃え上がった。
敵艦からの攻撃は、敵魔法士による攻撃も散発的にみられたが、我軍に大きな被害を与えることはなかった、幾人の水兵が傷ついたのと、カタパルトがいくつか壊れただけであった。また、抜刀して我軍の軍艦に乗り移ろうとした猛者もいたが、船の高さの違いから飛び移ることはできなかった。
次は岸壁に停泊している敵艦14隻である。これも同様にして2時間ほどですべての敵艦を燃え上がらせた。今回は船の船員は陸に上がっていたのか魔法士からの攻撃はなった。
港湾施設にも攻撃を加えることも考えたが、燃え上がる火の手で、我軍の軍艦も被害を受けそうなので、やめて引き返すことにした。しばらく沖合に停泊して状況を確認したが、港から出てくる敵艦は見られなかった。それを確認して、帰還の途に就いた。
そして朝日を洋上で迎え、昼前にはルーズペルピ港に戻った。
我軍の被害は皆無である。完勝である。今回の攻撃で、ポルイスト王国の中ノ海艦隊は壊滅的な打撃を受け、組織だった艦隊運営が出来なくなった。
外洋艦隊は3年ほど前のフェアコロル港沖海戦でほぼ全滅しており、ポルイスト王国としては海軍をほぼ喪失したと言っていい状態となった。
「他国に攻撃されたら離島の維持さえ難しいのでは」
と思ったが、それは敵国のこと今は考えないことにした。
いつも「転生者とバグでない異世界人の物語」をお読みいただいてありがとうございます。
「北の関を死守せよ、野望は泡沫の夢と消えて」を投稿しました。3299文字で完結の短編です。よろしくお願いします。
「帝国皇女の憂鬱(前世の夫の生まれ変わりを捕まえろ)」と「牛乳とチーズは違う味がする(顔だけ男の気ままな旅)」も引き続きよろしくい願いします。




