149.トリューソレ平原会戦
我軍はなんとかピッチランヌ峠を抜けた訳であるが、この山道を抜けた平原の入り口にはビュリベア砦がある。この砦を抜けないとルーズペルピ子爵領の領都にはいけない。最後の難関である。
たぶんないとは思ったが、監視装置を送ってみたら、やはりルーズペルピ子爵家の領軍はおらず、いるのはポルイスト王国の兵士であった。
ビュリベア砦はポルイスト王国からルーズペルピ子爵領の領都に至る街道の対岸の山肌を削って作った砦で、前面には川が流れ山肌は急峻で獣道すらなさそうである。街道とビュリベア砦との距離は600mほどあり、通常の弓矢やカタパルトを用いた石でも届きそうにない。
幸い山道を下ってきた街道の高さはビュリベア砦と同じくらいの高さなので、街道からビュリベア砦の中が見える。そこで、この街道上に魔道馬車を据えて、魔道馬車から発射する爆裂弾を魔法士の風魔法で援護して飛距離を伸ばせば、ビュリベア砦まで届くかもしれない。
ということで、街道上に魔道馬車を据えて、近くには風魔法が使える魔道士を配置した。俺の号令で、魔道馬車から爆裂弾が発射されると、魔法士は風魔法を行使して飛距離を伸ばした。俺もできるだけ援助した。すると魔道馬車から発射された爆裂弾の1/3ぐらいは砦に届くようである。半日ほど攻撃していたら、砦の中はひどい状況となった。
夕方には「降伏する」と言ってきた。そこで砦の中に入り、武装解除するとともに、まだ生きている兵士は治癒魔法で治療していった。砦の中には1000人ほどの兵士がいた。そしてこれまでしてきたように、奴隷紋を刻んで我軍に忠誠を誓わせるようにした。この作業に1日かかった。これでルーズペルピ子爵領の領都まで行くのに障害はなくなった。ここまで長かった。サウスナンテンブルグ港を出てから1か月以上である。
平野に出た我軍は一路、領都ルーズペルピに向かったが、途中ポルイスト王国軍とトリューソレ平原で対峙した。どうもここで我軍がルーズペルピ子爵家の領軍と合流するのを阻むため、陣を張っていたようである。街道にはバリケードのようなものが多数設置されて魔道馬車の進行を阻んでいる。
トリューソレ平原は先日攻略したビュリベア砦から領都に至る街道沿いで、唯一小高い丘がある場所である。北側に川が流れており街道は川の南側を走っている。川とその小高い丘の間は1kmもない。障害物を設置するには格好の場所である。
その障害物の後ろにはポルイスト王国の軍隊が控えている。敵軍の規模は1万5000人といったところである。前面に歩兵5000人騎士3000人魔法士1000人そして川の向こう側に騎士2000人また森の中にも魔法士500人歩兵1500人また本陣の側に遊撃としての騎士2000人を配置している。川の向こう側にも騎士を配置しているのでこの川かなり浅いようである。騎士なら渡河できるようである。まさに万全の体制で我軍が来るのを待ち構えていたようである。
これに対して俺の配置は前回のサビニャンコロ河畔での戦いの教訓から魔法士のいる森と騎士のいる川からは距離をとって魔道馬車を配置することにした。魔道馬車300台を1列に6台の魔道場所を横に50台並べることにした。横方向の魔道馬車の間隔10mとした。幅は約500mである。
500mの幅で障害物を撤去するのは無理なので撤去するのは中央の50mだけとした。現在敵軍との距離は約1kmこれを500mまで近づいたら魔道馬車からの爆裂弾で中央の障害物を50mの幅で集中的に攻撃して破壊する。靄が立ち込める中、俺の収納魔法で残骸を撤去し、俺の土魔法で整地したら、全力でその中央付近を走り抜ける。障害物を通り過ぎたら横方向に広がりながら敵陣を全速力で走り抜ける。そしてそのまま、領都ルーズペルピに向かう。作戦はこのようにした。
敵陣の手前500mから走り始めて敵陣の幅を1kmとすると1.5kmを走るのに要する時間は、時速100kmなら約1分である。この1分間にかけることにした。作戦の決行は今日の夜半とした。怖いのは敵の魔法士である。夜の方が魔法士が魔道馬車の位置を捕らえにくいと思ったからである。問題は我軍の魔道馬車が障害物を撤去した幅50mの間をうまく通り抜けれるかということだけである。その後は、もう走るだけなので問題はない。敵の騎士だろうが歩兵だろうが本陣だろうが跳ね飛ばしていけばいい。それだけである。
陣を敷いたその日の夜半、我軍の魔道馬車は静かに動き始めた。障害物から500mの距離に来ると、一斉に爆裂弾を放った。中央の障害物が吹き飛ぶ。残骸を俺が収納魔法で収納すると、障害物のなくなった50mの区間を整地する。ここまで1分。まさに時間との勝負である。ここまで敵からの魔法攻撃はない。
次に300台の魔道馬車が障害物の無くなった区間を通り抜ける。俺は最初にその50mの区間を通り抜けたが、もしうまくいかない魔道馬車がいれば救出できるようにしばらくそこに待機した。
最初のうちは魔法士の攻撃は見られなかったが、最後の方になると魔法士の攻撃も見られるようになった。そこで俺は結界を張って敵の魔法攻撃を防いだ。
そして、すべての魔道馬車がその区間を通り抜けるのを確認すると、また魔道馬車の進行を再開した。ここまで約6分。
それから敵陣を抜ける長い1分間が始まる。俺は絶えず前面に結界を張って前へ進んだ。長い1分間が終わった。
それからは、しばらくすると、領都ルーズペルピが見えてきた。
領都の手前で一旦止まって態勢を整えるために全軍に停止命令を出した。300台すべての魔道馬車が敵陣を突破することに成功したようである。




