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143.疫病の影響

 王国歴340年3月、北の大陸を席巻した疫病もやっと収まってきた。4月からはアムスム王国でもフラ王国でも学院が再開されるようである。また延期になっていた学院の入学試験はアムスム王国でもフラ王国でも8月に2学年まとめて行われるそうである。


 なお、五女レノア、六女セリーナ、七女ミリーは

「遠いと何かあった時不安だ」

ということでフラ王国の学院を受験する予定である。


 俺の領地は疫病の発生がほとんどなく、農産物の収量も安定しており、いたって平和である。中止していたサウスブニューデン伯爵領とネイメー伯爵領との定期連絡船も先日再開した。また、禁止されていたサウス王国の西の出口港への入港についても来月から禁止が解除されるとの通知を受け取っている。


 また延期されていた次女マーサとトゥール公爵家のフアニート様の結婚も今年の秋に行われる予定である。


 しかし、

「アムスム王国の王都にあるチョウチョ商会では、少なくない感染者が出て死者も出た」

とリタが言っていた。


 医療技術が未発達なこの世界では、この病気に感染したら、まず他人に移さない。これが肝要だと思う。

「では感染したらどうするのだ」

と言われても難しいところである。


 特効薬なんてないし、治癒魔法も万全でない。

「神に祈るしかないのかな」

と思ってしまう。

悲しいところである。


 しかしまあ、何はともあれ疫病も治まってきたということで、また平和な日々が戻ってくるそう思っているのだが、他の領地ではそうもいかないようである。


 まず疫病の発生で領内の人口が激変している。どれくらいの人が死亡したのかはっきりしないが、「かなり」と言っておこう。とにかく正確な数字が分からないそうだ。前世のようにしっかりした戸籍があるわけではなく、人頭税のようなものがあれば、その数字もはっきりするのだろうが、フラ王国でもアムスム王国でも人頭税はない。そのため農産物の収量で税金が支払われている以上、人口は計りようがないのである。


 俺の前世の記憶では6世紀の東ローマ帝国ではペストの発生で国が傾いたと言われているし、13世紀のヨーロッパではペスト発生で当時の人口の1/3以上ひどいところでは人口の半分が死んだとも言われている。


 とにかく人口が減って、農産物の収量も減った。それが事実のようである。


 しかし、収量が減ると、これまでのような税収が得られない。税収を確保しようとすると、ただでさえ疫病で疲弊した農民が反発して農民の反乱がおきたりする。


 元農民の俺としては

「少しは農民に配慮してあげたら」

と思うだが、他領のこと、口出しすると後が怖い。

「心情的には同情するが、黙っている」

というのが実情である。


 また、農民の反乱まで行かないが、農民の地位が比較的向上したところもある。


 悲惨なのは疫病で貴族の家族が全員死亡したところである。とりあえず、親戚の者を新しい当主にしてその貴族家を存続させようとしているようであるが、誰が新しい当主になるかで揉めたりしてうまくいかないようである。


 比較的、そう比較的である。比較的疫病の被害の少なかったフラ王国でもそのような状態なので、被害の最もひどかった帝国では状況はもっとひどいようである。なんでも皇帝が疫病で死亡したといううわさが聞こえてくる。

「これすんなり次の皇帝が決まってくれればいいけど、もめると厄介だな」

と思ってしまう。

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