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141.新しい料理の普及

 新食材研究所で開発された食品は、美味しいごはん、醤油、味噌、豆腐、漬物である。すでに従業員も雇っている。これらの食品の普及が急務である。


 それで、まず伯爵邸でこれらの食品を用いた料理を提供することを考えたが、妻たちがあっちを向いている状況では、それもしゃくにさわる。


 そこで、以前、サウスブニューデン地方に来るときに、シフエルブルグ港から連れてきた居酒屋の店主に、ここ領都サウスナンテンブルグで店を持たせたことを思い出した。店を出させた後はほとんど何もせずにほったらかしであったので、久しぶりにいってみたら、そこそこ客が来ていた。


「もうマリアさんはいないのだから、つぶれているかな」

と思ったが、そんなことはないみたいだ。聞くと

「近所の娘さんを雇っている」

とのこと。料理の腕はそこそこだったのだから看板娘がいれば店がはやるのも納得である。


 そこで、俺は店主に、今まで店の賃貸料をとっていなかったのだから、その代わりに、今度俺が作った食材を使った料理のメニューを加えるように強制した。命令、そうこれは領主命令である。


最初は、難しそうな顔をしていたが、食べさせてみると「意外といける」ということで了解してくれた。そこで

「仕入れる食品の値段をいくらにするのだ」

と言われてハタと困った。孤児に金の計算なんかできない。


親父に

「工場の管理もして」

と言ったら

「無理」

即答であった。


 俺の妻で暇なのはエバとソフィーとミレーヌとパメラである。そこで、この4人を呼んでこの4人に工場の管理やらせようとしたが、ソフィーとミレーヌとパメラは

「文字の読み書きができない」

と言われた。

まして

「計算なんか無理」

と言われた。


そこで赤字になったら俺が補填するということでエバに無理やりやらせることにした。前途多難である。



 何とか、この食品を普及させる次の一手が必要である。そこで、俺は伯爵邸で働く職員に無料の食券を配ることにした。この食券を持ってきた客は新食品を用いた料理はタダにする。この食券は、有効期限が1か月で食べられるは先ほどの店主の店のみで、食べられる料理は新しい食材を用いた料理のみとするものである。そして後日、この店主から、料理の代金を俺がまとめて払うようにした。


 最初店主は

「つけはきつい」

と言ったので、

「最初に金貨10枚を預けこれを越えた時は追加で払う」

と言ったら納得してくれた。


その様にして始まった新食材の普及であるが、さすが料理のタダ券というのは効いたみたいで、この店は結構流行った。


 そしたら他の店でもこの食材を扱わせてほしいという店が出てきたので許可した。


 そしたら伯爵邸で働く職員だけでなく領軍の兵士からもタダ券が欲しいという声が上がってきた。ここまでいくと俺の一存というわけにもいかず、レンやアンナやリタにも話をした。


 そうしたら、

「領都サウスナンテンブルグには食券を使える店があるが他の都市には食券を使える店が無いのにどうするのだ」

と言われた。

痛いところを突いてくる。


 結局、他の都市にも食品工場を作って、工場のできた都市からタダ券を配ることになった。ちなみに、ただ券の費用は俺の個人負担から伯爵家負担にしてもらった。


 また、伯爵邸でもこの食材を使った料理が出るようになった。また、サウスブニューデン地方伯爵領だけでなく、今後はネイメー伯爵領にもこれらの工場を作り、工場を作ったところから兵士や職員にタダ券を配ることになった。



 その後、俺はうどんやそうめん、さらにはそばの工場を作った。ラーメンはこだわりがあるので、現在伯爵邸の厨房で研究中である。


 いずれはこの新食材を使った料理がこのフラ王国だけだなくアムスム王国さらには他の王国でも広まればいいなと思っている。俺の食に対する飽くなき探究心は止まることを知らないのである。


 俺は今伯爵邸の食堂にいる。これから朝食である。メニューは温かいごはんに納豆、みそ汁に漬物それに卵焼き、これで海苔でもあれば最高なのだがと思ってしまう。海苔はまだできていない。これは今後の課題である。


 納豆は出来た。納豆を作ったら

「こんな腐った豆など食べられない。糸まで引いている。子供たちには絶対に食べさせないでくれ」

とえらく不評で、仕方がないので俺だけが食べた。


 むろん工場を作るのはあきらめた。伯爵邸の裏に工房を作って、ソフィーとミレーヌとパメラに作らせている。愛人とはいえ奴隷なのだから、こういう時は便利である。「作れ」と言われれば作らざるを得ない。当然彼女達にも食べることを強制している。また元奴隷のエバにも当然強制している。


 この納豆朝食を食べるのは俺たち5人だけということで、朝の朝食はバイキング形式にして好きな料理を各自とって食べるようにした。ほかの妻たちは納豆は食べない。


 納豆を食べるのが5人だけというのは寂しいので、伯爵邸で働く者も俺たち領主の家族と一緒にバイキング形式で朝食をとるようにした。

最初は

「領主の家族と一緒に朝食を食べるのは恐れ多い」

と言っていたが領主命令ということで従わせた。


 そしたら納豆派も少しいて俺は満足のいく結果となった。そういう訳で今は和気あいあいと朝食を食べている。最近は子供たちも納豆の良さが分かってきたようで少しずつ納豆を食べる回数が増えてきた。


 王国歴338年11月、ハルト29歳、領都サウスナンテンブルグは今日も平和である。

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