122.ウエストベシャンプール平原会戦
俺は今サウスブニューデン伯爵領北部のレン市の東方、ウエストベシャンプール平原にいる。伯爵領に侵攻したフラ王国軍を撃退するため、ここに陣を敷いている。昨夜はレンに、ここより10Km東に野営していた侵攻軍を夜襲してもらった。
ハルトは索敵でフラ王国軍の状況を確認すると、陣地の中央付近で人がせわしなく動き回っている。レンの報告では「夜襲の効果は限定的」とのことなので予想通り午前中に敵が、ウエストベシャンプール平原に布陣すると思っていたのだが、なかなかそんな様子がない。
そこで、敵の背後に回した魔道馬車には戦闘開始時間は遅れると連絡を入れた。結局敵が動き出したのは午後になってからで、ウエストベシャンプール平原に布陣したのは夕方になってからであった。
フラ王国軍の布陣は前面に8000人の歩兵、その後ろの北側に2000人の騎兵、なぜか魔法士がいない。騎兵の南の街道付近に本陣があり、その後ろに歩兵3000人、本陣の南に騎兵2000人である。ハルトはこの布陣を見て「勝った」と思った。魔法士のいない部隊など魔道馬車の敵でない。後は淡々と敵を蹴散らしていけばいい。
戦闘は次の日の朝から始まった。まず、フラ王国軍の前面の歩兵が突撃してきた。これを、中央の魔道馬車が攻撃する。歩兵は運よく魔道馬車の攻撃を逃れて魔道馬車にとりついたとしてもそこまで、魔道馬車に切りかかっても切れない。魔道馬車が少し動くと踏みつぶされて終わりである。
歩兵の攻撃が効かないとみて騎兵が突撃してきたが、これも状況は同じであった。
その間ハルトは北側と南側に配置した魔道馬車をフラ王国軍の側面に展開させた。あとは、背後に回した魔道馬車でフラ王国軍の背後を突けば、包囲殲滅戦の完了である。
背後の魔道馬車に指令を出そうとしたら、レンが出てきた。
「昨夜、夜襲の帰りがけに魔力を込めた魔力弾を放ったのだけれど、暗くてどれくらいの威力だったかわからなかったの。
それで、今同じくらいの魔力弾を放ってもいいかな」
嫌な予感しかしない。
しかし、ここで、それをダメと言うと、後でブツブツ言われそうな気がしたので
「いいよ」
と言った。そしたら、
「ありがとう」
と言って、魔力を込め始めた。
そして、魔力を込めた極大の魔力弾を放った。
その魔力弾は敵中央本陣辺りに着弾した。大音響とともに、爆風が押し寄せてきた。
とっさに俺は俺の前と、その横の部隊に結界を張った。
なんかいっぱい物が飛んできたような気がしたが、あえて見ないようにした。
レンを見るとすがすがしいような顔で
「すっきりした。旦那様大好き」
と言ってきた。
もう敵軍の抵抗は見られない。とにかく靄がひどくてよくわからない。生き残った敵軍の兵士は逃げ出したようである。
風魔法で靄を吹き飛ばした。そしたら街道の真ん中、魔力弾が着弾した辺りに大きな穴が開いている。敵の司令官はもう生きていないだろう。
仕方ないので、街道の穴をふさぎ、生き残った者を拘束して治癒魔法をかけていった。
その後、背後に迂回させた魔道馬車が戻ってきた。
「街道は逃げ出した兵士で大混乱している」
とのことである。
結局負傷者を治療していったら捕虜は3000人ほどになった。捕虜に聞くとほとんどが徴用された農民とのことで身代金を取れそうもなかったので、すべて奴隷にして捨て駒の兵士とすることにした。そこで、ベシャンプール平原に砦を作って、そこで領地の防衛にあたらせることにした。
死者はどれくらいになったのかはわからないとにかく現地がひどい有様で調べようもなかった。あまりにもひどすぎるので現地にちょっとした慰霊碑を作った。
こちらの損害はゼロである。圧倒的な大勝利である。
レンの恐ろしさは敵軍だけでなく領軍にも響き渡ったようである。
この日サウスブニューデン伯爵領に侵攻したフラ王国軍は、レン市の東のウエストベシャンプール平原で多くの犠牲を出して敗退した。フラ王国軍は司令官以下多くの騎士を失った。
後にこの戦闘はウエストベシャンプール平原会戦と呼ばれるようになった。
また、この戦闘で「爆裂のブヒ」の名声はさらに広まったのであった。




