121. ベシャンプール平原での戦い
サウスブニューデン伯爵領北部のレン市から王都トイユアルジャンに向かう街道沿いを西に向って、フラ王国軍約1万5000人が進軍している。
レン市はサウスブニューデン伯爵領の領都サウスナンテンブルグとノースブニューデン子爵領の領都ノースナンテンブルグを結ぶ街道上にあり、まさにこの地方の守りの要である。ここを制圧されると、北の子爵領と南の伯爵領が分断される。
朝サウスナンテンブルグ港に戻ると、収納空間ボックスから魔道馬車100台を出し、これに爆裂弾の発射装置をセットした。そして、20隻の軍艦の水兵から400人を選別すると、魔道馬車の運転手として戦闘に参加させることにした。
一連の作業をしているとレンの率いる魔道馬車の部隊も戻ってきた。そして400台の魔道馬車、兵士3400人で北部の要衝レン市に向かった。
レン市には昼頃に着いた。レン市の市役所で今後の方針を検討した。
敵は、まだサウスブニューデン伯爵領の領境は越えていなかった。街道には延々と軍馬や兵士の列が続いている。このままいくと、領境を越えるのも時間の問題である。たぶん今日の夕方ぐらいには領境を越えるであろう。
そして、ベシャンプール平原ぐらいで野営して、明日の昼頃には、このレン市に到着する。
このあたりはなだらかな丘陵の続く平原である。見通しが効くため、奇襲をかけるのは難しい。
出来るとしたら夜襲である。取りあえず、今日の夜は50台の魔道馬車で夜襲をかける。狙うは敵の食料。夜襲についてはレンに任せることにした。
決戦の地はベシャンプール平原から西へ10kmほど行ったウエストベシャンプール平原、ここで敵本体と決戦する。
レン市の伯爵家の駐留軍には城壁の門を閉ざして、市民からも義勇兵を募って、防備を固めるように命じた。
また400台の魔道馬車については50台は今夜の夜襲用にまわし、100台については大きく北側からこの街道を迂回してフラ王国軍の背後に回るようにして、明日の午前と予想される戦闘時に敵の背後を突くように命じた。
おれは300台の魔道馬車とともに、ウエストベシャンプール平原に着くと陣地の構築にかかった。といってもなだらかな平原、ただ魔道馬車を並べるだけである。
北側に縦方向に1列10台、それが5列で50台、中央に横方向に50台の列が3列で150台、南側に縦方に1列10台、それが5列で50台、レンの奇襲部隊は奇襲終了後、戻ってきて中央の背後で遊撃用に待機とした。
そして、中央の魔道馬車の前面には魔道馬車の通行には問題ないが、馬や歩兵が通るには問題があるような起伏を随所に作った。また、街道の両側には随所に柵を立てて騎兵の突撃が出来ないようにした。
ハルトがウエストベシャンプール平原で陣地の構築をしている頃、レンは50台の魔道馬車を引いてベシャンプール平原に来ていた。
「しかし、ここで奇襲をかけるといってもこれじゃ丸見えじゃない」
そう言って。辺りを見回していたら、街道から北へ2km程行ったところに小さな川があり、そのそばには木も生えていて小さいながらも林になっていることから、その陰に土魔法で洞穴を作って、そこに隠れることにした。
魔道馬車は入らないので魔道馬車はマジックバッグに収納して人だけ洞穴に入って暗くなるのを待った。
夕方ごろ、フラ王国の軍隊が来たようで、遠くから軍馬のいななきや人があわただしく作業をする音が聞こえてくる。遠くに炊事の火が見える。
魔力反応を探ると街道沿いのところが一番多くの魔力反応があるので多分このあたりに魔法士が多くいる。魔法士は貴重なので、本陣近くに置かれることが多い。ということで、このあたりに軍の指揮官がいると予想される。そこで、ここを第1目標とすることにした。
あとハルトは「食料を焼け」と言っていたが、こう暗くてはどこに食料があるかわからない。たぶん本陣より後ろということでこのあたりを第2目標とすることにした。
そしてこの2つの目標を25台ずつの魔道馬車で襲うことにした。襲撃は北から攻撃を加え、そのまま敵を突き抜けて街道の南側に出たら、そのままウエストベシャンプール平原のハルトの陣まで戻る。そのような計画とした。
夜半過ぎになり、人が寝静まったころ、レンは洞穴から出るとマジックバッグから魔道馬車を出して乗員を乗り込ませた。そして、最初の1kmはゆっくりと近づき、その後加速して敵陣地を突き抜けた。
その間約3分ほどであったが、ものすごく長いように感じた。敵魔法士が攻撃してきたらどうしようかと思ったが、音に気付いてもすぐに攻撃できるような魔法士は少なかったようで、50台すべてが敵陣を通り抜けることが出来た。
しかし、攻撃する魔道馬車の射手もあせっていたのか、いくつか燃え上がる火は見えるが、あまり有効な被害を与えることできなかったようである。
そこで、レンは魔道馬車を止めると、屋根の上に出て、おまけとばかりに極大の魔力を込めた魔力弾を魔力反応の一番強いところに打ち込んだ。
そして急いで魔道馬車の中に戻るとそのまま走り去った。




