108. シフエルブルグ港沖海戦
結局自分たちで哨戒をすることになったので、3隻の船でシフエルブルグ港の周辺を周回することにした。
周回を始めて3日たった、正午ごろ、岬を回ったところでフラ王国の艦隊を発見した。
ハルトが索敵で敵の規模を確認すると約50隻、どうしてこれだけの規模の艦隊が残っていたのだと思った。敵の艦隊を見ると帆船だけではなくガレー船もいる。むしろ、ガレー船の方が多い。とても3隻で対応できる数ではないので、急いでシフエルブルグ港に引き返した。
シフエルブルグ港に引き返して、イングブリオ王国軍の指揮官に
「岬を回ったあたりで、フラ王国の艦隊を発見、規模は約50隻」
と報告した。そうしたら
「イングブリオ王国の軍艦の水兵は多くが今陸に上がっているので、呼び戻すので、しばらく時間稼ぎをしてほしい」
と言われた、開いた口が塞がらない。
「今は戦時だぞ、昼間から飲みに行ってどうするのだ」
と思ったが、とにかく時間稼ぎしないと、下手すると全滅である。
仕方がないので、3隻で時間稼ぎをすることにした。こちらは3隻、向こうは50隻、囲まれたら終わりである。そこで、とりあえず岬の影に隠れて、敵艦隊が行き過ぎたら、背後から攻撃することにした。
こちらは敵の約6倍のスピードが出せる。それに敵の帆船は逆風だと斜めにしか進めない。ガレー船と混在しているので、多分統率が乱れると思う。その隙をついていけば、活路も見出せるのではと思ったがやはり50隻は多すぎる。
仕方がないので、矢の先に爆裂弾を取り付けた矢を用いることにした。これなら、当たれば1発で船を航行不能にできる。この矢はネイメー伯爵家の2隻だけでなく、マンネリズム子爵家の船にも渡した。
とにかくスピードを緩めない。船は縦1列で進む、俺の船が先頭を行く、その後マンネリズム子爵家の船、最後をもう1隻のうちの船というように決めた。3隻の船は港を出ると、岬に向かい、隠れられるような入り江を探し、そこに停泊した。念のためにハルトは、3隻の船に隠蔽の魔法をかけた。
索敵で、敵艦隊の位置を探ったが、昼頃に見た位置とあまり変わっていない。どうも夜になるのを待っているようである。夜にシフエルブルグ港を攻撃するようである。
「それなら、時間稼ぎをするという俺たちの役目も果たせたのかな」
と思ったが、
「イングブリオ王国の軍艦がいつ出てくるのか分からないので、とりあえずフラ王国の艦隊の背後を襲って、敵の艦隊にいくらか被害を与えることにした」
夕刻になるころ、敵艦隊は碇を上げて、動き始めた。敵の艦隊がすべて通り過ぎるのを待って、入江から出ると、魔道エンジンを全開にしてまっすぐ敵の最後尾の帆船の側面に突撃した。
そして帆船に接敵すると、部下に爆裂弾の矢を放つよう命じた。同時に俺は、辺りのガレー船にも攻撃魔法を放った。
そのまま3隻の船は敵艦隊の側面を陸から沖に突き抜ける形で進んだ。
沖に出ると今度は、舵を右に切って、敵艦隊の先頭を行く帆船を側面から攻撃した。
そして、敵艦隊を追い抜いて、前に出ると、今度は陸側から、沖に向けて再度、敵艦隊の先頭を行く帆船に接敵した。
この間部下たちは多くの矢を放っており、燃え上がっている船もある。
しかし、相手の艦隊は数が多いので、こちらの3隻では嫌がらせは出来ても、艦隊の戦列を乱すことはできない。とにかくこちらは囲まれたら終わりなのである。仕方がないので、とにかく端っこの戦艦をめがけて突撃を繰り返した。
そのうち、イングブリオ王国の軍艦も出てくるだろう。そう思っているのだが一向にイングブリオ王国の軍艦は出てくる気配がない。
結局夜半過ぎまで、このような攻撃を繰り返したが、イングブリオ王国の軍艦は出てこなかったので、俺たち3隻の軍艦は一旦沖に出て距離を取って休憩することにした。
索敵でフラ王国の艦隊がどう動くか見ていると、フラ王国の艦隊も夜襲はあきらめて軍を引くようである。まあ、俺たちと交戦した時点で夜襲があるということは、ばれているわけであるから、このまま進めば返り討ちに遭うと考えるのが当然である。
それにしてもイングブリオ王国軍の指揮官も俺たちに時間稼ぎを命じた以上、準備が出来れば救援に来るのが筋というものである。
それなのに、次の日の朝、シフエルブルグ港に戻ると、イングブリオ王国軍の指揮官は
「ご苦労」
それだけであった。まるで梯子を外されたような感じである。
今回も貧乏くじを引かされたハルトであった。




