第5話
「……なんだ?」
画面を見ていて、違和感に気づいた。
地面。
落ち葉が積もったあたりで、
何かが動いている。
「虫……?」
目を凝らす。
小さな影が、あちこちで動いていた。
一匹、二匹。
気づけば、数が増えている。
「いつの間に湧いたんだよ……」
だが、環境は整っている。
湿った土。
積もった草。
「まぁ、出てきてもおかしくはないか。」
そう呟きながら、視線を動かす。
その中に、
妙な動きをするやつがいた。
丸いものを、
後ろ足で押している。
「……あれ?」
思わず、身を乗り出す。
黒い体。
丸い塊を転がす姿。
「フンコロガシ……か?」
しばらく眺める。
ころころと、器用に転がしていく。
その動きに、
妙な既視感があった。
「……ん?」
引っかかる。
さっき、どこかで見た。
「……あの文字か。」
亀の足元に出た、
あの奇妙な記号。
甲虫みたいな形。
「……似てる、よな。」
完全に同じじゃない。
でも、どこか重なる。
「……気のせいか?」
いや、
気のせいにしては、
妙に引っかかる。
俺はブラウザを開いた。
検索欄に打ち込む。
「フンコロガシ 意味」
すぐに結果が出る。
「……スカラベ、ね。」
スクロールする。
「……誕生、再生……?」
思わず、止まる。
「……へぇ。」
もう一度、画面を見る。
水辺に立つ亀。
「……あー。」
なんとなく、繋がる。
「つまり、あれか。」
「こいつが“生まれた”って意味か。」
小さく頷く。
「なるほどね。」
――少し、ズレている。
だが、その違和感には気づかない。
画面に視線を戻す。
虫の数が、増えている。
さっきよりも、明らかに。
「……増えすぎじゃねぇか?」
落ち葉の下。
土の隙間。
あちこちで動きがある。
そのとき。
影が、地面を横切った。
「……ん?」
一羽の鳥が、
箱庭の上の方を飛んでいた。
「は?」
思わず声が出る。
「いや、どっから来た。」
さらに、もう一羽。
「増えた……?」
呆れながらも、目が離せない。
その間にも、
地面の様子が変わっていく。
見覚えのない植物が、
いつの間にか増えている。
「……植えてねぇぞ。」
ススキの間に、
別の葉が混じる。
低い草。
広がる葉。
「……なんだこれ。」
さらに時間が経つ。
木が増える。
ハンノキやヤシャブシの間に、
別の木が混ざる。
「……勝手に増えてんのか?」
だが、
妙に“自然”だった。
やがて――
【ステータス】
植生:草原 → 林(初期)
「おー……」
思わず声が漏れる。
「一気に来たな。」
箱庭の中は、
もう“草原”ではなかった。
影ができ、
層ができる。
「……森、になるなこれ。」
そのとき。
ピシッ。
「……またか。」
地面の奥で、
何かが走る。
一瞬だけ、
あの文字が浮かぶ。
「……」
今度は、少しだけ見えた。
甲虫の形。
その横の記号。
「……」
意味は分からない。
だが――
さっきよりも、
“ただの模様”には見えなかった。
「……なんなんだよ、これ。」
小さく呟く。
それでも。
画面から目は離せなかった。




