第3話
しばらく、画面を眺めていた。
すると――
「……お?」
水辺に置いたススキとイタドリが、ゆっくりと広がっていく。
最初に置いた場所から、じわじわ外へ。
「増えてるな……」
数は変えていない。
なのに、確実に範囲が広がっている。
やがて。
【ステータス】
植生:草地 → 草原
「おー……変わったな。」
小さく笑う。
「ちゃんと段階踏むタイプか。」
少し満足して眺めていると、
別の変化に気づいた。
ススキの一部が、
色を失っていく。
「……あれ?」
緑だった葉が、
くすんだ茶色に変わる。
やがて、そのまま倒れた。
「枯れてるな。」
地面に横たわったまま、
消えない。
しばらくすると、
その数が増えていく。
「……草、積もってきてるな。」
風もないのに、
ただ静かに、重なっていく。
「落ち葉……みたいなもんか。」
画面を眺めていると、
その“積もった草”に変化が出始めた。
形が、崩れていく。
「……ん?」
さっきまで葉の形をしていたものが、
いつの間にか、輪郭を失っている。
細かくなり、
色が濃くなり、
地面に馴染むように沈んでいく。
「……分解、してる?」
思わず呟く。
だが、すぐに違和感が追いついた。
「いや……早くないか?」
普通なら、こんな短時間でこうはならない。
少し考えて、
一つの考えに行き着く。
「……微生物、いる設定か?」
ステータスを開く。
【ステータス】
植生:草原
生物:無し
水源:小川
魔力:微量
「“無し”のまま、か……」
画面に目を戻す。
さっきまで茶色だった地面が、
少し黒くなっている。
しっとりとした、
“土らしい色”に。
「……いい感じじゃねぇか。」
小さく頷く。
「これなら、次いけるな。」
植生アイコンを開く。
草原になったことで、選択肢が増えていた。
「出たな……」
ハンノキ。
ヤシャブシ。
「こういうの、欲しかったんだよ。」
水辺の近くに配置する。
数秒。
「……は?」
芽が出る。
伸びる。
葉が開く。
明らかに、早すぎる。
「まぁ……ゲームだしな。」
自分に言い聞かせる。
だが、その違和感は消えない。
気づけば、
配置していない場所にも木が増えていた。
「……増えてる?」
首をかしげる。
「種が飛んだ……にしても、早すぎるな。」
さらに。
木の下に、
葉が落ち始めた。
「おぉ……」
枝も落ちる。
細い枝、乾いた葉。
それらが地面に積もっていく。
「いいねぇ……」
自然と頷く。
「これ、どんどん土厚くなるな。」
さっきよりも、
地面が柔らかそうに見える。
「一気に“それっぽく”なってきたな……」
そのときだった。
ピシッ。
「……っ」
まただ。
画面の奥で、
何かが走る。
今度は、はっきり見えた。
黒くなった地面の上に、
一瞬だけ、何かが浮かぶ。
「……文字?」
目を凝らす。
だが、すぐに消えた。
「……気のせいか?」
少しだけ、背筋が冷える。
さっきの分解。
異様な速さ。
増えていく植物。
「……まぁいい。」
小さく息を吐く。
「今は、うまくいってるしな。」
視線を動かす。
亀のアイコン。
「……そろそろ、いいか。」
草原。
若い木。
湿った土。
「生きられる場所には、なったはずだ。」
マウスを、ゆっくりと合わせる。




