前編
大司祭たちにも事情を話したのと、衆目の場で聖杯を破壊されたことが功を奏したのか、イザベラへの謁見は難しくなった。
教会としても救済の聖女が起こした奇跡を破壊されるなど、許される行為ではなかったのだろう。
良いことかはわからないが、教会へ助けを求めるためには、相当の誠意が必要となった。
要は、金だ。
どれだけ信仰心という金を積めるか。それが、教会に救いを求めるための現状。
「……」
自分に本当に力があったのなら、こんなことにならなかったのに。
「イザベラ様」
それでも、高額な治療を支払って、助けを求めに来る人は多く、聖職者たちは求めに応じて、瘴気を祓っていた。
そして、イザベラも最後の砦として、呼ばれることがある。
「大丈夫よ。さぁ、この水を飲んで。気を楽にして。すぐ楽になるから」
病人に飲ませるための水として、聖水をこっそり用意して、それを飲ませ、祈祷する。
今のところ、水が回れば、瘴気は浄化できている。
「マリア。またいいかしら?」
「はい……!!」
一息ついて、病室から出れば、またマリアーナが忙しく呼ばれているところだった。
現在の聖女はイザベラひとりということや、大司教たちにも力が衰えていることを伝えていることもあり、イザベラの出番は意図的に少なくされている。
代わりに呼ばれているのは、聖女見習いであるマリアーナだった。
「マリアーナ。大丈夫?」
明らかに疲れているマリアーナに声をかければ、驚いたような表情でこちらを見ると、困ったような笑みを浮かべていた。
「はい。大丈夫です。姉さまより大変ではないですし、それに聖女になるなら、これくらいの事できないと……」
もし、俺に本当に力があったなら、楽をさせてやれたというのに。
ここにいるのが、本物のイザベラなら、もっとうまく助けてやれただろうに。
でも、イザベラはここにいない。
「ねぇ、少し付き合ってくれない?」
自分がやるしかない。
「――で、ここに連れてくるのか」




