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3年間、聖女を偽ることになりました。ドッペルゲンガーです。  作者: 廿楽 亜久
第13話 婚約者?

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後編

 あのシエルすら、地図を指さしたまま、唖然とクリミナのことを見ている様子が、先程の言葉が嘘ではないことの証明だった。


「となると、この辺りか……」

「灰被りの君……? 灰被りの君……!! す、少し待ってくれ……!?」

「半日程度あれば……」

「灰被りの君……!!」


 話を一切聞いていないクリミナに、シエルが肩を掴み、力づくで自分の方に向かせる。

 そうすれば、さすがのクリミナも眉をひそめて、シエルの方へ視線を合わせた。


「まだ何かあるのか?」

「ないわけがないだろう!?」

「大して危険なやつじゃない。お前らがうるさいだろうから、森の中を彷徨うな幻影も見せているしな」


 「何の問題もないだろ」と明らかにため息をついているクリミナに、シエルもひどく渋い表情をしていた。

 内容は理解できないが、おおよそこの魔女が悪いことだけは、よくわかった。


 どうやら魔物を使役しているわけではないようだが、平然と人に危害が及びかねないことを言っているこのクリミナに、ドッペルも頬が引きつるのを感じる。


「本当に、お前なんで、こいつの肩を持つんだよ」


 クリミナと少し離れたところで、渋い顔をしているシエルに問いかければ、「惚れた弱みとしか……」なんて、情けない返事しか返ってこなかった。


「そもそも、アカーシアンのやつが戻ってきたら、困るのはそっちだろ」


 呆れたような物言いのクリミナに、ドッペルも不思議そうに目を瞬かせるしかなかった。


 確かに、マリアーナの様子では、イザベラとアカーシアンは、仲が良いようだった。

 仲のいい人が近くにいるというのは、聖女を偽っていることがバレる危険も高くなるため、避けたい事態ではある。


 だが、豪胆にも必要だという理由で、国王や教会を平然と巻き込むクリミナが、ここまではっきりとめんどくさそうに眉を潜めているのは意外だった。


「そう言われても、俺はアカーシアンの事なんて知らないし……」

「なんと……」


 シエルは驚いていたが、ふと困ったように眉を下げると、どこか納得した様子で言葉を続けた。


「アカーシアンは、黄金の君の婚約者だよ」


 あぁ、イザベラの婚約者か。

 そりゃ、話題に上がるわけだ。


 話題に…………


「……はぁぁああ!? 婚約者!?」


 聞いたことがない。

 イザベラも、そんな話は一切していなかった。


 ドッペルの大声に、クリミナが腹立たしそうに睨んでくるが、こっちだって、それどころではない。


「い、いやいやいや!? 婚約者って、こ、ここ恋人ってことだろ!? アイツ、そんな話、全くしてなかったぞ!?」


 旅の中で、イザベラの話は色々聞いた。

 この魔女やシエルの話だって。ここまで癖があるとは思っていなかったが。

 妹であるマリアーナのことも。


 でも、婚約者の話はなかった。


「黄金の君と忠義の君の関係は、恋人とは違う気もするが……」

「でも、婚約者って、婚約者、だろ……?」


 混乱し過ぎて、変なことを口走るドッペルに、シエルも困ったような笑みを返すことしかできなかった。


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