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3年間、聖女を偽ることになりました。ドッペルゲンガーです。  作者: 廿楽 亜久
第13話 婚約者?

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前編

 シエルの否定する言葉に、クリミナは、静かに眉をひそめるように目を細め、そっと目を逸らした。


「それでは、黄金の君に顔向けができなくなってしまうよ」

「案外、あいつは悪人だぞ。それに、死者だ。死者は何もできない。気を使う必要などないだろ」

「少なくとも、今は私たちの耳にも入っていないのだから、その時ではないと思うよ」


 少し不満そうなクリミナの目が、シエルに向けられるが、シエルは嬉しそうに微笑むばかり。

 その様子に、クリミナは大きくため息をつくと、ドッペルの方へ目を向けた。


「わかった。村の場所は教えなくていい。もうしばらくは、この偽の聖杯で遊ぶことにする」


 これでいいだろ。とばかりに、投げやりな声色に、ドッペルも目を白黒させるしかない。


 ただ、目が合うと少しだけ困ったような表情で笑うシエルに、この魔女が、またろくでもないことを考えていたことだけは、想像がついた。

 その内容まではわからないが、ひとまず目の前にある偽物の聖杯の実験だけでいいということなのだろう。


 地図を見下ろしながら、瘴気がある場所を確認しているクリミナに、シエルも近づくと、いくつかの場所を指している。

 ドッペルもその実験場所を決める話に参加するように、その地図を覗き込む。


「この辺りは、最近、瘴気に侵された魔物が確認されて、アカーシアンを含めた騎士団が派遣されている」


 アカーシアン。その名前を聞いた覚えがある。

 あぁ、そうだ。マリアーナに、遠征から帰れなくなったと教えてもらった人だ。


 帰れなくなったというのは、そういう理由か。

 瘴気に侵された魔物の討伐。確かに、聖騎士の主な仕事のひとつでもあるし、旅の途中でドッペルもイザベラと共に行ったことがある。


 魔物を倒して、瘴気に侵された土地を浄化する。

 今では、精霊樹が瘴気を浄化しているため、あの時よりはずっと楽だろうが、それでも大変な作業だろう。


「近くに、瘴気溜まりがあるのかもしれないが――」

「あぁ、それは私だから、瘴気溜まりはないぞ」


 かつての作業の事を思い出しては、ため息が漏れそうになるドッペルの耳に、おかしな言葉が届いた気がした。


――今、とんでもないことを言わなかったか?

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